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慰弦

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- 14章 -

- 日常のひとこま達 - 演劇部&秋山&長谷川

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「なんかもう浦島太郎気分ですね」

「全くだよ…昔は小さ可愛いくて、よしよしして可愛がってたのにさぁ。かなりショックだったな」

「可愛がってもらって嬉しいとは限らないでしょっ!?」

「な? 今は心身ともにかわいくないんだよ」

「ぁははっ」

「もうっ、良いでしょ! 昔話はっ!」


むすっとして今度こそ長谷川を帰そうと背中を強く押し込めたその時、その手を力強く握るもう1本の手が現れた。

驚いてその手の主を見ると、その主は真剣極まりないまなざしで秋山を見つめていた。


「すっごい分かりますっ。可愛いが褒め言葉にならない時ってありますよねっ!!」

「えっ、うんっ!」

「それとっ!今の話本当ですか?」

「えっ…今の?」

「だから、昔は150もなかったって話です」

「…盛り過ぎだよ。本当はもうちょっと大きかった」

「俺よりですかっ?」

「…それは」


もうちょっと大きかったとは言ったが、正直自信はない。しかし今自分を真剣に見ているこの子よりは、小さかった…とは思う。


「じゃぁ…俺も」

「うん?」

「俺も秋山さんくらい大きくなれる可能性はあるって事ですよねっ!?」

「えっ!?」


希望に満ちた目。心なしか、周りにはキラキラとしたなにかが飛んでいる様にも見える。

まだ高校生だしこれからもっと成長する可能性はあるが、自分くらいと言われたらそれは…

秋山が答えようとした丁度その時…


「無理だろ」
「イヤです」


と、綺麗にハモった声が自分の脳内思考に続くがごとくのタイミングで発せられた。


「…えっ!ちょっとっ!?どういう事?無理って酷っ…と言うか、イヤってなにっ!?」

「え…なんでしょうね。なんか今の安積の身長とか大きさが丁度いいというか」

「班乃君って小動物好きでしょ?」

「うーん…どうでしょう。小動物が好きっていう自覚はなかったのですが…そういうことなのかもしれません」

「ねぇちょっとっ、なんの話してるのっ? 小動物って誰の事?」

「“誰の事”って言ってる時点で自覚あるだろ」

「うっ……」


長谷川の容赦ない言葉に図星を突かれしょんぼりするその姿は、良心に響くものがある。

自分も昔は身長の事で結構悩んでいた事を思い返して、そのときのリプレイを見ているかのような今の状況に思わず苦笑いがこぼれた。

両手を腹の前で合わせて俯いている安積の頭に手を乗せ、左右にゆらゆらと揺らした。


「大丈夫だって。まだまだ伸びるよ絶対。ただ僕くらいになれるかって言われたら難しいんじゃないかな。…というかお勧めしない」

「…どういう事ですか?」

「うん。高校卒業してから1年半くらいで一気に伸びたんだけど、夜中に骨のきしむ音で起きたりするし、痛過ぎて寝れないなんて事もしょっちゅうだったし、夜だけじゃなくて朝昼関係なく痛いから、学校休んだりとかね。 結構言いづらいよ? 成長痛で休みますとかさ」


冗談みたいな話でしょ?

と、茶目っ気たっぷりに言い放つ秋山を見上げる安積の顔は、ホラー映画を見たときのようにゆがんでいた。


「骨が…ゆがむ」

「本当痛いんだから…」

「ま、焦らずほど程に大きくなり過ぎる事無く成長する事が一番だな」

「小さいのが悪いわけでもないですし、焦らなくても嫌顔でも身長なんて伸びますって」

「そうだね…うん。自然に任せることにする」
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