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- 13章 -
- 事実は小説よりも奇なり -
しおりを挟む「ねぇ、てっちゃん?」
「行かないっ!!」
「えぇー、まだ何も言ってないんだけどぉ…」
「行かないっ、絶対っ!」
駐車場へと向かいながら代行に電話を終えた月影が長谷川へと声をかけると、秒で飛び出したのはなにかに対する断りだった。しかし本人間ではしっかりと伝わったいるようで、月影が不満の声をもらす。が、即座に秋山が割って入る。
「てっちゃん酷いっ!ちゃんとひーくんの話聞いてあげてっ!落ち込んでるじゃん!」
「どこがだよっ!?ちゃんと見ろちゃんとっ!めっちゃにやけてっからっ!」
「それにひーくんの言葉は俺の言葉でもあるんだからねっ!」
「知ってるからっ!お前らの以心伝心率ヤバイの知ってるからこそ断ってんだよっ!!」
「それが分かるって事はてっちゃんも俺達と以心伝心って事じゃん凄いじゃんっ!」
「やだ、嬉しぃー!!てっちゃん好きー!」
「好きー!!」
「喧しいっ!!ちょっと黙ってろっ!」
「「…………」」
「返事はっ!?」
「「だって黙ってろって」」
「言ったなぁ!言ったよ確かにっ!悪かったよそのまま黙ってろっ!」
言われるがまま口をつぐんだその代わりに片手を上げて了承の意を表した月影と秋山は、立ったまま車を背にし体重を預けると気持ち良さそうな笑みでため息を吐く。
額に指を当て2人とは違う意味で深いため息をついた長谷川を、少し離れた場所から鈴橋が悲痛な顔で見つめていた。
「がっくん、どーかした?」
「…なんか、長谷川さんが他人事に思えなくて辛い」
「俺は聖が楽しそうにしてるの、凄く嬉しいけど…ごめんねがっくん。騒がしいの苦手なのに」
「普段騒がしくしてるのはお前だろ…」
「うっ…」
「しかし、長谷川さんの言う通りだな。黙って2人並んでると絵になる」
「あぁ、ね。身長もあるし…羨ましいよね」
「よねってなんだよ。一緒にすんな」
「え、ごめん。がっくん俺と身長同じくらいだからつい」
「…同じくらいじゃない。俺のが高い」
「えっ、大して変わんなくないっ!?がっくん身長いくつよっ!?」
「お前に言う必要はないだろ」
「冷たっ!?」
『どんぐりの背比べだよなぁw 2人ともちっちゃ可愛いんだし、気にすることないのにw』
隣で交わされる会話に癒されそんな感想を抱く植野だったが、気になるのは先程の長谷川の反応だ。月影等がなにを言おうとしたのかは分からないが、話を聞く事もせずあんな断り方をするなるて珍しい。
「鉄兄、さっき月影さん達なんて言おうとしてたの?」
「…あぁ、2軒目のお誘いだよ」
「なるほど。きっと僕らが居たから気を使わせてしまってたんですね」
「行ってくれば良いじゃん!鉄兄もお酒好きでしょ?なんか駄目なの?」
「…あいつら酒癖悪いんだよ」
「えっ? でもだって今、全然普通じゃない?」
チラリと月影達を見ると、その視線に気がついた2人が長谷川の言いつけを守り黙ったまま小さく手を振り応える。
それに会釈で応えた植野は、疑いの目を長谷川へと向けた。
「嘘じゃねぇからな?周りに迷惑かけるような事はしないし、酔いつぶれる事はないんだけど…」
「他にもなにか?」
「…からみ酒。俺限定の」
「それは、あれですか?説教したり、突然泣き出して愚直が止まらなくなったり」
「いや、そーいうのでもなくて…」
「スキンシップだよっ!!スキンシップ!!」
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