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- 13章 -
- 事実は小説よりも奇なり -
しおりを挟む決して嫌いというわけではないが、爽やかな毒舌の班乃と言葉を選ばない明け透けな毒舌の鈴橋に囲まれると植野の存在がとても安らぎに感じる。
安らぎを求め震える両手を植野へと差し出すと、慰めるかのように両手をにぎにぎと握り返され安息が訪れた。
「まぁ、なにはともあれ、ひーに会えて良かったじゃないか」
「あっ、はいっ!正直まだ問題は残ってますけど…伝えたいことも言えたし、もうかくれんぼはしなくても良いんだって」
「かくれんぼ?」
「あっ、えと…隠れる、というかなんというか」
「撫子の君の事?」
「まぁ、そんなとこっ!ずっと隠れられてたら悲しいしさっ!」
長谷川によく知っていると言われたからか兄と別れた時の話を普通に口にしてしまったが、植野と鈴橋はその事含め今までの経緯は殆んど知らないのだ。
別に隠すわけではないけれど敢えてここで話すこともないだろうと、問う様な視線を送ってきた植野等の都合よく解釈してくれた言葉に乗っかった。
「さて、そろそろ帰るぞ。もう夜も遅いし」
それから当たり障りない会話を楽しみ、宴もたけなわとなった所で時計をみた長谷川が先導するように立ち上がり、学生達も口々にお礼を言うと続いて立ち上がった。
が…
「なぁ、はな?」
「んっ?なぁに、てっちゃんっ!」
壁に掛けてある月影等の上着を手にし渡そうとした振り返った長谷川だったが、目にした光景に足を止め恐る恐るといったように話しかける。
いまだ席に座っている人親友達。
その目の前にはカラになったワイングラスと、同じく空になった空き瓶。
5本。
「お前…いつの間そんな…」
「ぅん? 至って普通に飲んでただけだけど?ねぇ、ひーくんっ!」
「ねっ、のんちゃんっ!それにほらっ、飲まれるまで飲んでないし、なんの問題もないよねっ!」
「ちゃんと代行呼ぶしさっ!」
「当たり前だっ!」
「あっ、みんなの事は送るから安心してねぇ!」
アルコールでほんのりと頬を染めあげ口元に綺麗な項を描いた2人組みが、余裕すら垣間見得る笑顔を浮かべ学生達へと軽く手を上げた。
「…すご。いつの間にあんなに…しかも全然普通に会話してるし。母さんと良い勝負出来そう」
「この店来てからまだ2時間くらいしかたってないよな。ペース速くないか?ザル?」
「見かけによらずお酒に強いんですねぇ」
「なんか、大人って感じだね」
綺麗に並べられたワインの空き瓶に、植野と鈴橋が驚いたように、班乃と安積が感心したように呟く。
そしてそんな学生たちとは違い、青い顔して頬を引きつらせているのは…
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