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- 13章 -
- 事実は小説よりも奇なり -
しおりを挟む「やべー…緊張してきた」
「誰なんだろうな、合わせたい人って」
「2人ともの共通の知り合いなんだろ?」
「誰か心あたり居ないんですか?」
「共通の知り合いってもいっぱい居るからなぁ」
「月影さんと知り合いとなると全然想像が…」
月影から連絡の来た一同は、最寄の駅で迎えを待っていた。昼休み去り際、含みのある台詞を残していったものだからあれから鈴橋と植野はずっと考えていた。
『俺と植野の共通の知り合いで、月影さんとも知り合い…いや、まさかな』
「まだかなぁー」
「あ、来ましたよ」
そんな悩む植野等とは違い、直接関係のない安積と班乃は割と緊張感なくのほほんと迎えを待っていた。
単純にただ飯は嬉しい。安積にいたっては一人暮らしのため、夕飯が上げ膳据え膳なのはかなりありがたいものだ。
「良く分かりますね、会長」
「だって、あの人結構この辺車で走ってますよ?」
「マジでっ!?」
タクシー乗り場の近くに止まった車に歩きだした班乃に続き一同月影の元へと向かうと、運転席から月影が軽く片手を上げ賑やかに笑っていた。
各々軽く頭を下げ応えると、車へと到着するか否やで自動でドアが開く。その細やかな気づかいに感動しながら、助手席に安積、後部座席後列に班乃、前列に鈴橋、植野の順番で乗り込んだ。
「ごめんね、遅くなってー」
「いや、そんなに待ってないから大丈夫。それより何処に行くの?」
「知り合いがやってるイタリアンレストランだよ」
これから行く店の話をしつつハンドルに手のひらを滑らせカーブを曲がる月影を、異母兄弟の話しに耳を傾けながら植野はぼんやりと眺める。
運転はその人の性格が出るものだとよく聞くけれど、それは本当なんだと染々1人頷いた。
月影の運転は穏やかな性格そのもので、カーブでも付加が殆んどかからないような安全運転である。
それに比べて、母親の運転は結構荒い…
少しは見習ってほしい所だと考えていていると、ミラー越しに月影と目が合い、なんとなく気まずく咄嗟に目をそらした。
別にやましい事はないのだが、条件反射と言うものだ。気分を害してなければいいのだが。そんな心配を他所にドライブは滞りなく終わりを告げた。
「ついたよー」
目的地に着くと足取り軽く下車した月影に続き到着した店内を、一同どこか緊張した面持ちで見上げた。
「ここ、ですか?」
「うん、なかなかお洒落なお店でしょう?」
「…あの、本当に良いんでしょうか?結構物価高そうなんですが…」
「物価ってw そんな事気にしないでいいよぉ。知り合いだから融通利くし」
「人脈は使ってなんぼですしね」
「班乃君は大きくなったら出世しそうね」
お店の入り口は一流…とまでは行かなくても、かなりお洒落でモダンな雰囲気だ。高校生の自分たちにとっては縁遠く、それだけで緊張してしまう。
「そんな緊張しなくて大丈夫だから。着いておいで」
側にいた弟の頭を撫でながら安心させるかのように学生達へ笑顔を向けた月影は、躊躇することなく奥へと進んでいく。気後れはするがいつまでもここに突っ立てるわけにも行かないと、1人また1人とその後を追った。
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