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- 13章 -
- 真実 -
しおりを挟む2人無言まま微かに身を寄せあうとソロソロと胡座をかいた足を正座に直し姿勢を正し、小さく頭を下げた。
「失礼な言葉の数々、申し訳ありませんでした」
「でした」
「えっ、なになにっ!?なんで謝るの?」
「や、だってまさか…聖がそんなに偉い人だとは思ってなかったから…」
「いやいや、君達にとっては偉くもなんともなくないでしょっ、部下ってわけでもないんだし!本当の部下だって上司と部下と言うよりチームの仲間ぁーって感じでやってるから、そんなかしこまられると寂しいんだけどっ!」
「そんな事言われましても…」
「礼節は大事だけど長いものに巻かれすぎるのは良くないよっ!?」
「ねぇ、本当に俺達兄弟なの?俺みたいのが本当に弟なの…?」
「ちょっ、切ないこと言わないでよねっ!?」
完全に恐縮してしまってる2人とあたふたしている月影を最早どうでも良さそうに視界にすら入れていない班乃の隣では、鈴橋がマジマジと月影を注視していた。そんな視線を受信した月影が少し困り顔で首をかしげると、同じく鈴橋も首をかしげる。
「…その若さで事務所を持つって言うのは本当に凄い事だとは思うんですけど…なんかちょっと、なんというかー」
言葉を探すように眉を寄せ押し黙ってしまった鈴橋の言葉を汲み取ってか班乃が続き口にするが、その声色には珍しく冷ややかさが含まれている気がした。
「貫禄皆無ですよね。仕事と口にしては居ますが本当にそうなのか疑わしい程にふらふらと頻繁に学校に遊びに来る上、こうもマイペースで無自覚に人のペース崩しまくる緩ーい感じの人ですと」
「かかっ、会長っ!?急になにっ、どうしたのっ!?」
「そうだよっ!!あるじゃん!貫禄っ!…ある、と思う…貫禄」
誰よりも礼儀正しい班乃の予想外な容赦のない言葉に焦る植野の横で一生懸命フォローを口にした安積だったが、口にした瞬間自分が言っている言葉の意味に思わず疑問がよぎり語尾が小さくなる。
『これはこれで逆に失礼じゃっ…!どうしよ、怒らせちゃうかもっ』
内心焦りながらチラリと兄を見ると、そんな思いは杞憂すぎるほどに杞憂に終わったのだと秒で思わせる程の、満面な笑顔が向けられていた。
「そうそう、それで良いの!」
「…えっ、と」
「それで、って…貫禄ないって事でですか?」
口ごもる安積に変わり植野がそうたずねると月影は大きな頷きと共に肯定を示し、考える人よろしく指の甲を口元に当てた。
「俺は…そうだなぁ、同級生の物作り大好きなお兄ちゃん、くらいの感覚で居てくれると嬉しいかなっ!」
「…良いんですか?そんなんで」
偏見かもしれないが、鈴橋にとって“社長”という役職をもつ人間は、自分を立て尊重しない人間を良く思わない、人を見下し見得をはり、偉ぶってふんぞり返っている、というイメージがあり、そのイメージからのあまりの解離に思わず訪ねる。
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