Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
207 / 1,142
- 13章 -

- 真実 -

しおりを挟む


「あぁ、もしかして前に撫子の君の話した時食いついたのって、単純に面白がってたわけじゃなくて月影さんかもって思ったからだったのか?」

「うん。まぁ、うる覚えだったから確証はなかったけど」

「…うる覚え」

「ってかせーちゃんに兄弟いるなんて初耳なんだけどっ!」

「そりゃ、俺だって最近まで知らなかったし」

「「えっ…?」」

「ぁっ、あー…」


『やば…これは、うっかり…したかも』

ついつい口を滑らせてしまったが、これではあからさまにわけありですと言っているようなものだ。これは自分だけの問題じゃないし、どうしようとあせる気持ちも束の間、軽い口調で月影が口を開いた。


「いやー…ちょっとヤンチャしすぎちゃってさぁー。せいが4歳の時に別々に暮らすことになっちゃったのwまだ小さかったからせい記憶になかったんだよねぇ」

「別々に暮らさなきゃな位のヤンチャって…」

「やだっ、そこは突っ込まないで!!反省はしてるのっ!!」

「そう、ですか。でも全然そうな風には見えないですけど」

「ほんと!?嬉しー!ありがとうっ!!」


明るいトーンで話しているせいか深刻さはまったく感じられない。その上、深入りまでさせないようにしているのにも関わらず嫌な気分にもさせないような言い方だ。

『言い方うま……助けられたなぁ』

だが、事情を知っているだけになんとも言えない気分になる。しかし上手く誤魔化してくれたのだ。自分が台無しにするわけにはいかないとなんとか平静を保つ事に専念する。


「だからね、昨日は13年ぶりの再会だったの。せい、授業サボらしちゃってごめんね?」

「いや、別に…俺も、すっごく話ししたかったし」


授業なんかより兄と話すそうが大事に決まっている。兄と話す事はなによりも優先すべき事だった。しかし、満面の笑みで肩を抱き側頭部をすりすりとするのはやめて欲しい。

『嫌じゃないけど…ちょっと、恥ずかしい…』

もしかしたら兄は鈴橋に負けないくらいシスコン…ブラコンなんじゃないか…

そう思う安積同様、班乃と植野も同じ事を密かに思い浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...