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- 13章 -
- 真実 -
しおりを挟む「一応はじめまして!君達からは撫子の君って呼ばれてたけど、本当の名前は月影聖です!よろしくね!」
「…よ、よろしくお願いします」
「ひじり…って、こいつと同じ字ですか?」
何処となく気まずそうにジュースのストローを前歯で噛み遊んでいた安積を鈴橋が指差すと、知っていた筈の安積も何故か今気がついたと言った表情を浮かべた。
「そう言えば…確かに字、一緒だね。偶然?」
「今さらですか…安積」
「良く気付いたね、さすが鈴橋君っ!大正解っ!」
「…そんな大したことじゃ。というか、どうして俺の名前を?」
「あぁ、ほら、栽培部ってよくこの裏庭くるでしょ?同じ部活の人かな?鈴橋ーって呼んでるの聞いたことあるから」
「なるほど」
「なんなら皆の名前知ってるよ?伊達に学校入り浸ってないからねっ!」
「「「「たしかに」」」」
「やだっ、息ぴったりww」
ドヤ顔で胸を張る月影の発言の説得力には一同納得するものがあった。今までよくぞ隠し通せていたものだという程、知らない生徒はいないくらいの高出現率なのだから。
「それにしても撫子の君と同じ字なんて偶然、なんか運命感じちゃうね、せーちゃんw」
「運命かぁ…」
「以前名前うかがった時教えてくれなかったのはそのせいだったんですね」
「教えてって…え?もしかして会長、知ってたんですか?撫…月影さんのこと」
「え? あー…えぇ、まぁ」
「なにそれっ、1人だけズルくないですかっ!?今までそんな素振り見せなかったのに!どうやってお知り合いにっ!?」
「ズルいって…綾雪も話しかけてみれば良かったじゃないですか。僕はただ、不審者が気になったので話しかけてみただけですよ」
「不審者ってっ…班乃君酷いっ!」
「それ以外の何者でもないでしょう?ただその時も、絶対に秘密ですって言われたので」
「なっ、なるほどね。それは、しょうがないか…」
少しおもしろくなさそうな表情を浮かべている植野だが、渋々納得してくれたようだ。
『…良かった』
知り合った経緯は出来れば触れられたくない話題だ。上手く回避出来たことに1人安堵しながら、班乃は続きを促すように月影を見やった。
その視線に何かを受信したように頷いた月影は隣に座る安積の肩を引き寄せ、顔を寄並べるように身を屈めた。少し恥ずかしそうにしながらも、安積は借りてきた猫のように大人しくなされるがままだ。
「じゃぁ、自己紹介も済んだことだし、話の続きね!簡潔に言うと、俺と聖は…」
「せーちゃんは?」
「腹違いの兄弟です!」
「…………」
「………え?」
話し声が途切れ、静かな中庭にのどかな鳥の鳴き声が響く。仲良く並んだ兄弟の顔を驚きで声も出せず交互に見ていた植野と鈴橋にたまらず安積が顔を背けた所で、植野の驚きの叫びが響いた。
「植野君っ、しぃー!」
「あっ、ごめんなさっ…って、えっ!?きょうっ、だい?やっ、異母兄弟っても似てなさ過ぎじゃないっ!?顔も身長もなにもかもっ!」
「ちょっと待ってよっ!身長はまだ分かんないじゃん!絶賛成長期だもんっ!すぐ追い付くってっ!」
「んー…丁度顎辺りが頭だったから…あと20cmくらい?頑張って!」
「いや、無理だろ…」
「酷いっ!?」
「ぎゅーしやすくて俺は好きだよ?」
「あんま嬉しくないなっ!」
兄に頭を撫でぐりされながら不貞腐れた表情をしていても、それでも払い除けないのは優しさなのか、なんだかんだ良いながらも喜んで居るのか…今一計りきれない所だ。
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