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- 13章 -
- 真実 -
しおりを挟む2人の兄弟が感動の再会をしたその日。
兄は普段通りに滞りなく“撫子の君”を演じ
弟はと言うと…
発言を聞いた生徒から多々に広まった“お兄ちゃん”という発言の真意を知りたがる生徒達の好奇の視線に晒されていた。
なんとか昼休みまで逃げ切ったが、その状況下沢山の生徒が集まる屋上で昼食が摂れる筈もなく、部活棟の中庭で昼食を摂ることとなった。
その提案をしたのは安積だが、植野も、あの鈴橋でさえも文句一つ言わずに了承した。
2人もあの発言を聞いているのだし、それなりに気になっているようだ。
植野、鈴橋、班乃、安積と4人で円になるように向かい合って居るのだが、会話はない。
重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは、流石と言うべきか班乃だった。
「僕は、綾雪も学君も、信用に足りると思いますが」
その言葉にもそもそとサンドイッチを頬張っていた安積は、眉間にシワを寄せて難しそうな顔をする。
「俺は別に隠さなくて良いって思うんだけど、ひ…な、撫子の君がさぁ」
「「なでっー…」」
「あ、今結構食いつきましたね」
「……」
「いや…だって、ねぇ」
「緘口令ひけば良いじゃないですか」
「うーん…でもやっぱ俺1人で決めちゃうのはさぁ…信用なくしたくないし」
こんなに何かに困っている安積は珍しい。
テストでヤマが外れて焦っていた時くらいの困り具合だ。
「…植野」
「なに?」
なにやら話し込んでいる安積と班乃を横目に、鈴橋は静かに植野を呼んだ。
「…あんまり聞かないほうがいいんじゃないか?安積、異様に困ってるし」
「うーん…正直かなり気になるんだけど…そうだよなぁ、信用なくしたくないとか、穏やかな話じゃないよね」
「とりあえず暫くは他の生徒達からの問いただしに耐えなきゃいけないし…ここは俺達もあえてこの話題に触れないようにしてー」
「人の噂も85日っていうし」
「75日な」
「えー…そんなに逃げ切れるかなぁ」
「まぁ、大変だろうけど、なんとかが…んばるーし」
「…」
「……」
「こんにちは」
うおわぁっ!!!!??
いきなり叫び声を上げた植野に、はじかれたようにそちらへ視線を移す。
「なっ、なに?どったの?」
「み、耳が…;;」
「あ…あの」
「ちょっと、がっくんまで喋りぐんちゃって、ど…」
4人だけでお昼を食べていた静かな中庭。
そこに、今までいなかった人物が佇んでいた。
噴水を背にして、噴水の周りにある囲いに両肘を突いてこちらを覗いている。
その人物を見て、班乃以外の3人は目を見開き固まっていた。
班乃は目を半開きにして、あきれたようにその人物を見つめる。
「そんなに見つめられると照れるなぁー」
あはは~と緩く笑う人物。
そこには、今話題になっていた人物。
撫子の君
基、月影聖
その人物がいつの間にか鎮座していた。
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