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- 13章 -
- 再会 (続) -
しおりを挟む「人は誰だって間違うことはあるよ。それに聖にとってはたった一人の母親なんだし…“たったそれだけのこと”で嫌いになって欲しくない」
「たったって……聖はそれでいいのかよっ!たったそれだけの事って言って、母さんを許せるのっ!?」
幼い時分に母親から受けた扱いは相当傷ついたはず。
孤児院に預けられた時は、親元を離されて知らない人たちと暮らすのは大変だったはず。
もう1度暮らそうと両親が迎えに来てくれた時は嬉しかったはず。
でも、戻った先では再び辛い生活が待っていた。
それを“そんなこと”と片付けることは出来るんだろうか…
少し間違えば、本当に死んでいたかもしれないのに。
暫し考えるような素振りを見せた月影だが、緩やかに笑ってその顔を安積へと向けた。
「そんなこと、だよ。…本当、今だから言えることなんだけどね。…だって、それがなければ俺は“孤児院の家族”にも出会えなかったし、“人生を変えるほどの親友”にも出会えなかった。その人たちと出会うためには、俺の今までの人生での出来事はどれも必要で、大事なものだって、今は思うんだ…だから、俺は父さんにも、お前にも裕子さんにも感謝してる。嘘じゃないよ」
「……聖」
「まぁ、色んな事情で預けられた子供達を沢山知ってるから、中には一生親を憎んで許せないで居る子も居ないわけではないんだけど…」
苦笑と共につむいだ言葉は現実を写している。
そう思った。
人に強い弱いと差をつけるのは好きじゃないけど…
『人の罪を“許す事”が出来た聖は強くて…』
「俺の…」
「ん?」
「いやっ!?なんでもないっ!」
『大好きな兄ちゃんだ』
その言葉を思わず呟いてしまいそうになったが、やはり直接本人に素直な気持ちを伝えるのは少しばかりくすぐったい。
頬を染めてそっぽを向く安積を暫く不思議そうに見つめるが、閉ざした口からは言葉は出てきそうになかった。
暫し会話が止まったところで月影は両手を組み、そのまま大きく上へと伸ばした。
「あー…うん。やっぱり苦手だなぁ」
「え?」
突如呟いた言葉に思わず短い声を出すと、月影は少し顔色を良くして苦笑した。
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