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- 13章 -
- 再会 -
しおりを挟むHRは班乃が少し遅れて入ってきた事以外いつも通りに滞りなく終わった。朝練の時にすでに話を聞いていた班乃は、今だ暗い顔をしている安積に声をかける。
「まだ気分なおりません?」
「ん?んー…直そうとは思ってるんだけど。ごめんね、心配かけて…」
「そんなこと気にしなくて良いんですよ。でも貴方がそこまで落ち込むなんて…一体何の夢みたんですか?」
次の授業は移動の為、教科書もろもろを用意してから安積の前の席に座る。勿論班乃の席ではないが、誰も気にしないだろう。
「ん―…なんていうかなぁ。小さい頃に怪我させちゃった人が居てさ。その時の夢」
「怪我ですか?小さい頃なんて、よくある話だと思いますけど…」
「うん。まぁ、そうなんだけどねぇー」
暫く、口の中でうにゃらうにゃら唸っていたが、“夢だしな”と、暗い気持ちを吹っ飛ばすように頭をふって勢い良く立ち上がった。
「あっきー朝から暗くてごめんねー」
「いえ、構いませんよ。誰だってそういう時はあります。力になれるか分かりませんが、なにかあったなら言ってくださいね?」
「うんっ、ありがと!頼りにしてるっ!じゃ、ちょっと早いけど行こっか?」
急いで教科書の準備をした安積は班乃と並んで教室を出る。教室は1つ下の階にあるのだが、下へ降りる階段の前に5~6人ほどの人だかりが出来ていた。
「あれ、なんだろう」
「…あの場所で人だかりが出来る事とすれば、多分」
「あっ…!!」
班乃の言葉を待たずして安積はその人だかりに向かって駆け出していく。その人だかりの中には植野が、そして少し離れた所で鈴橋が壁にもたれ掛かり退屈そうに眺めていた。
「がっくん!!」
「あぁ、安積か。なんだ、元気になっt」
まだ喋っている鈴橋の肩に勢い良く両手で掴みかかると、言葉を飲み込み驚いたように安積を見つめる。
「ねぇっ!!この人だかりって撫子の君っ!?」
「えっ?あぁ、そうだけど…そうか、お前はまだ見た事ないんだっk」
そしてまたもや鈴橋の言葉後半を聞かずして、美術準備室を覗きこんでいる植野へと駆け寄っていった。
「…なに、あいつ」
「余程会いたいんでしょう」
「いっ!? …たんですかっ、会長っ。すいません、気がつかなくて…」
「いえ、僕こそ驚かせてしまってすいません。どうも、さっきぶりです」
にこやかな笑顔を浮かべ人だかりに目をやった班乃につられるようにして、鈴橋も再びそちらを見やる。
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