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- 12章 -
- 本番と本心 -
しおりを挟む“言わないでっ!”とでも言っている様な目をした安積等のご期待に応え適当に誤魔化した班乃だったが、鈴橋の機嫌の良さが気になっているのは自分も同じだ。
『ここまで上機嫌なら、悪いことがあったわけではないでしょうし』
別に聞いてはいけない事でもないだろうと、それとなく聞いてみる事にした。
「それより学君」
「はい?」
「なにか良い事でもありました?」
「え?なんでですか?」
「いえ、少しばかり上機嫌なようでしたので」
「あぁ…」
鈴橋に内緒話をしていたのが後ろめたいのだろうか。両手を握り合っている安積と植野だったが、2人から向けられる視線はまったく違う色が込められている。
そんな2人を不思議そうに一瞥した鈴橋は無視を決め込む事に決めたのか、微かに笑みを湛え班乃へと視線を戻した。
「仲直りしたんです」
「仲直り、ですか?」
「はい。色々と分からないことだらけでスッキリしない日が続いてたんですけど…。それが今日、解決したんです。まぁ、全部ではないんですけど」
「そう、ですか。それは良かったですね」
「ありがとうございます。じゃぁ、俺部活行きますね」
「えぇ。ではまた」
清々しい笑顔と共に颯爽と教室を後にする鈴橋を見送ってから、いまだ手を繋いでいる安積等へと顔を向けた。
「もしかして…綾」
「Σえ!?なっ、なにっ?」
「がっくんと喧嘩してたの?」
「いやっ…してない…よ」
「そう?じゃぁ別の人か。…でもまっ、最近がっくん様子変で心配だったし、解決したなら良かった良かったっ!」
「…そうね」
「仲直り、ねぇ?」
「Σ (;´д`)!?」
「よしっ、じゃぁ俺も部活行こうっ!」
「あ、僕少し用事があるんで先に言っててください」
「かっ、かいちょー…?」
「分かった!じゃぁまた後でっ!」
「はい、また後で」
そうして今度は心労から解放された安積が颯爽と教室を後にする姿を見送った後、背中を丸めて出来る限り存在を消そうとしている植野へと容赦なく振り向いく。
「それで?実を結んだような、ないような、とは?」
「…えっと」
「お付き合いには、至らなかったと?」
教室を見渡すと既に他の生徒は部活へと向かっており、いつの間にか班乃と植野だけになっている。誰も聞いていない事を確認してから、植野は観念したように口を開いた。
「そうだよな。会長には色々相談乗ってもらったし…」
班乃に鈴橋への気持ちを共有した後、すべてを打ち明けて何度か相談に乗ってもらっていた事があった。もちろん、今回の事だってそうだ。
『ずっと手を煩わせてきたわけだし…協力してくれた人に隠すのも、人として違うよな』
誰も居ない教室と言えど大っぴらに話すのは気が引けて窓辺へと移動すると、それに続くように班乃も移動しそれぞれ適当な席へと腰を下ろした。
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