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- 12章 -
- 本番と本心 -
しおりを挟むそんな担任の話なんて上の空に、安積は机の上に置いて拳を作った自身の手をじっと見つめていた。
そんな安積に小さく声をかけるも、まるで聞こえて居ないようだ。
長々と続く担任の話を遮るように4限終わりのチャイムが鳴り響く。
と同時に、安積勢いよく立ち上がった。
その行動にクラスメートが肩をビクつかせ一斉に安積に視線を向けるが、本人は意に介いさず班乃の元へ向かいその机に両手をついた。
「な、なんですか?」
「俺先がっくん所行ってるからあっきーも早く来てねっ!」
「え、えぇ」
其だけ言うと、安積脱兎の如く教室を飛び出していった。
「委員長」
「はい」
「後で安積に言っといてくれないか?」
「号令までが授業です…ですか」
「完璧。任せた」
「わかりました」
そして安積抜きの号令を済ませた後、班乃も安積を追って鈴橋のクラスへと向かった。
「なにしてるんですか?」
号令も聞かず教室を飛び出した安積を追いかけて来たは良いものの、その安積は鈴橋のクラスの前で立ちすくんでいた。
「いない…」
「え?」
「がっくん達がいないっ!!」
今にも泣きそうな顔をしながらしがみつく安積に少し困った顔をしていると、鈴橋のクラスメイトが話しかけてきた。
「なになに?植野たち探してんの?」
「え?えぇ、授業終わって直ぐ来たんですけど…居ないんですか?」
『綾雪?安積が探してたのは学君なのに…どうして綾雪の名前が?』
そんな疑問を心中に浮かべたが、次の言葉で謎が解ける。
「なんか授業が終わると同時に、鈴橋が植野引っ張ってどっかいっちゃったんだよなぁー」
「え?まじで?何処行ったか…は分からないよな」
「検討もつかねぇな。なにがあったんだか」
教室には居ない事が分かりクラスメイトにお礼を言うと、とりあえず2人は屋上へと向かう。昼食はいつも屋上なのでもしかしたら先に居るのかと期待したのだが、その期待は裏切られる形で終わってしまった。
「屋上にも居ないって…どこ行っちゃったんだろう?探してこようかなぁ」
余程お礼が言いたかったのだろう。あからさまに落胆した安積は屋上からグラウンドを見渡した。
もちろん、誰も居ない。
「…直ぐにきますよ、きっと。先にお昼頂いちゃいましょう」
「でも……そっか、そうだよね。すれ違ったら元も子もないし」
渋々腰を下ろしお弁当を広げる安積に続いて座り、班乃も昼食を取り出した。
その心中はもちろん植野たちの事だ。
思い当たるとすれば、2人に何らかの進展があったいう事だろう。実は鈴橋の様子が変だと安積が口にしたその後、告白をした事、それを拒否をされた事、それにより今気まずい状態になっているという事は植野本人から聞いていた。
その状態で、“ 植野が連れて行った ” ではなく “ 鈴橋が連れて行った ” という所が気になった。
「学君が行動起こすなんてなにがあったんでしょう」
「え? なにが?」
「あぁ、いえ、なんでもありません」
「…そう?」
思わず声を出して呟いてしまい、不思議そうな顔をする安積に笑顔で誤魔化す。
『喧嘩になる、って事はないでしょうけど…』
植野からの報告に1人不安が募るのであった。
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