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慰弦

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- 12章 -

- 本番まであと少し

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「ここの花壇、朝水やり出来なくて。天気も良いですし、水あげようかと。もしかして、先輩も?」

「あぁ、俺もおんなじ。授業塔の中庭で飯食ってたんだけど、天気が良かったから。…でも、そうか…そうか!!」

「冴霧先輩?」

「いやいや、ほら、栽培部って規定人数ぎりぎりなのに殆ど幽霊部員でしょ?ちゃんと植物が好きでちゃんと世話してくれるのって学くらいだから、本当嬉しいよっ!」

「先輩…」

「好きなもの共有出来るのって最高だな!しかも同じこと考えてたとか凄いじゃん!ありがとうっ!」


冴霧と呼ばれた3年生が、鈴橋の肩へ豪快に腕を回し嬉しそうな笑い声をあげた。それに答えるようにして、鈴橋の顔にも笑顔が浮かんでいる。

端から見れば、普通に仲の良い先輩後輩に見えるだろう。だが今の植野には “ 普通 ” と見る事は出来なかった。

自分はこんなにも鈴橋の事で頭を悩ませているのに、当の鈴橋は先輩に肩を組まれて、少しばかり照れながらも嬉しそうに笑っている。

『あんな笑顔、俺は見たことない…』

自分はこんなにも鈴橋の事で悩んでいるのに。
鈴橋は何もなかったかの様に呑気に笑っている。


「あっ、先輩あれっ!」

「ん?あっ!?この蕾って!?」

「はいっ、この間枯れかけてたやつです」

「すっげー…頑張ったんだなぁ…学も頑張ってたしっ!流石だよ!良かった良かったっ!!」

「そんな、先輩の助言のおかげです。俺もうまくいって嬉しいです」


馴れ馴れしく名前よんでんじゃねぇよ。

こんな花なんかでなに盛り上がってんだよ。

学にはもっと、他に考える事があるだろ?

そんな先輩の事なんかじゃなくて。

そんな花なんかじゃなくて。


なんで、俺ばっかり。

俺、ばっかり…?

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