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慰弦

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- 12章 -

- 本番まであと少し -

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班乃に打って変わり、今度は安積が腑に落ちない顔をし憤りを見せる番であった。

そんな安積を宥める班乃だが、内心班乃自身も鈴橋の様子がここ最近おかしい事は気がついていた。

そして、その原因が恐らく植野にあるだろう事も。


「なにか悩んでるなら力になりたいのになぁ…」


この快晴に相反し、安積が悲しげな表情を浮かべる。

力になる。

そう思うのは安積の人柄ゆえだろうが…

だが、この問題は安積には難しいのではないだろうか。

恋愛、そして同性愛。

この素直で純粋そうな少年には難しい、というよりは、正直知らないでいて欲しい世界と思ってしまう。

決して同姓愛が悪いというわけではないが…

難しいところだ。


「まぁまぁ、大丈夫ですって。もう暫く様子を見てみましょう。きっと学君なら大丈夫ですから」

「うーん…がっくんってさ、悩みとかあっても人に言えなそうじゃん?全部自分の中だけで溜め込んじゃうようなさぁ。心配になるんだよね…でも、まぁ、あっきーがそういうなら」


もうちょっと様子見てみる。

ストローを前歯でがりがりしながら言う安積だが、後半の言葉のフェードアウト加減を聞く分にはあまり納得していないようだ。


「安積って…」

「ん?」


“ 素直 ” や “ 純粋 ” の言葉が良く似合う。

続きを言わない班乃を訝しげに見上げる安積を、頭を撫でる事で誤魔化してみる。


「えっ、なに?」

「いえ、安積は本当に優しいなぁと思いまして」

「そう、かな?そんなことないと思うけど…でもありがとうっ!」


子ども扱いするな等苦言を言わない所がまたなんとも…

一応、高校男児ともあろうものが。

安積に触れた手に、気持ち良さそうに目を閉じなされるがまま微笑む姿に、じんわりと心に熱が帯びる。

微かに芽生えた感情に首を振り、立ち上がると大きく背伸びをする事で目を反らした。


「教室もどりましょうか?」

「うん」


素直に頷いて昼食のゴミを片すと、出口へと向かう班乃を追いかけるようにして安積も屋上を後にした。


――その15分ほど前。
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