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- 11章 -
- おたまじゃくしにしか見えない -
しおりを挟む「………」
「…………」
しばし無言の時が流れる。
自分にかけられた言葉の意味が理解できないようで、鈴橋はまるで知らない言語で話しかけられたような顔をしている。
「……ずっと、好きだったんだ。今思い返せば、多分…部活抜け出してがっくんと教室で話したあの時から…その時にはもう、意識し初めてたと思う」
「………」
「吃驚させてごめん。言うかどうか、迷ってたんだけど…でも、後悔はしてない」
してない、と言うのは嘘だ。ただの強がりだ。
してないじゃない、したくない、が本音だ。
自分で決めて、言葉にした。
その筈なのに、実際に言葉にした今、震えそうな程の恐怖が頭を締め付ける。後の事なんてどうにでも出来るなんて、どうして思えたのだうか。
もし望まない未来が訪れたとしたら、
思いを伝えた事を後悔してしまう。
そんな後悔はしたくない。
1歩鈴橋へと足を進め距離をつめるが、思考停止したように固まり身動きすらせず植野をじっと見詰めている。
「気持ち悪いと思う。急にこんな、しかも男に言われたらさ…だからさっきも言った通り、同じ好きを返さなくても良いよ。…って言っても、ホントは少しだけ、そういう気持ち、向けてくれたらなって思うけど…でも、それは無理でも良い」
だからせめて
どうか、お願いだからー…
「だって、1番怖いのは-」
『嫌いにならないで…』
そしてもう1歩前に進む。
2人の距離は、恐らく30cmほど。
もう1歩踏み出そうとしたその瞬間、目に映った街灯が大きく揺れると同時に鈴橋が大きく飛び下がった。不安の現れか、その手は鞄の紐を固く握りしめ、唇は固く引き結ばれている。
「……ぅん」
「ちっ……違うっ…今、のはー…」
無意識の行動だったのだろう。自分の思いがけない行動に、鈴橋自身も戸惑っているように見えた。
「…1番怖いのは、友達としてでも一緒に居られなくなることだから」
気まずく開いた距離は縮まることはなく
2人ともその場から1歩も動かない。
しばし悲しそうに見つめていた植野だったが、グッと拳を握ると不器用な笑顔を作った。
「じゃぁ、俺、今度こそ帰るね。また、明日」
踵を返し消えていく。
そんな植野にかけられる声も、
引き止める手も、
どこにも存在しなかった。
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