Pop Step

- 11章 -

- おたまじゃくしにしか見えない -

「俺さ、保育園の手伝いをするのも、がっくんの家族と一緒に過ごすのも、がっくんと一緒に居るのも大好き。手放したくないんだよね」

「…園児も俺の家族もお前のことは気に入ってるし…それがどうして手放すとかって話になるのかは分からないけど…お前自身が嫌にならない限りはそんな事はないんじゃないか？」

「がっくんは？」

「ん？」

「がっくんは俺と居るのは嫌じゃない？」

「…俺は嫌いな奴とは一緒には居ない」

「ははっ、そうだよね。結構人見知りするしｗ」

「分かってるなら聞くなよ」


若干ふてくされて横を向く鈴橋。ぱっと見た印象はけして人当たりが良く見えないし、口下手だから誤解も受けるけど、だからといって人を嫌っているわけではないのだ。

そんなの、鈴橋を見てれば分かる。一緒に過ごして話をしてみれば、鈴橋の良い所はいっぱいある。

『そこに、惹かれちゃったんだし…』


「同じ気持ちを返して欲しいなんていわない」

「…ん？」


どこか清々しさすら感じる植野の表情からはもう先程の落ち込みは見えず密かに安堵するが、主語もなく突然言われたその言葉が何を意味するのかが分からず小さく聞き返した。


「だからね、もし駄目でも今まで通りにして欲しいんだよね」

「…なんの事だよ？」


遠回しな言い方になってしまっているのは植野自身分かってはいるが、なんの予防線も張らずに話せる事ではなかった。

案の鈴橋は眉をひそめ訝しげに植野を見詰めている。

今まで見せてくれた様々な表情、懸命に築き上げてきた良好な関係、なにも知らない今の鈴橋と、もの凄く別れづらい。

これから言う事で、それらがどう変わってしまうのか不安でしょうがない。

けれど、ここまで言ったのだ。

それに、植野自身もう止められそうもなかった。

この気持ちを伝えたいという思いを。


「俺さ、園の子達も、がっくんの家族も大好き」

「あぁ」

「でね、がっくんの事も大好き」

「…そう」

「でもね、がっくんの好きは、他の人に対する好きじゃないんだよね」

「………」


わけが分からないと前面にかもし出す表情に、少し笑いがこみ上げる。ここまで言ったのなら感じ取れそうな気もしなくはないが、流石の鈴橋でも男から告白されるなんて思ってもないだろうし、それは致し方ないのかもしれない。

ここでうまく伝わらず誤解されては元も子もないと、今度こそちゃんと伝わるように言葉を選んだ。


「…手を握りたい、抱き締めたい、２人だけで思い出つくりたい。キスして好きだよって言いたい。…そういう好き」

「………は？」

「だからね、恋愛対象として、俺はがっくんが好きなのよ」