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慰弦

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- 11章 -

- おたまじゃくしにしか見えない -

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「……あっ、あぁ…指…」

「ふふっ、吃驚しました?」

「……しました。びっくり」

「悪戯成功ですねw」

「悪戯って…もうちょっと、こう…違う方法で教えてくださいよっ!」

「すいません、呼び掛けても気づいて頂けなかったもので。安心して下さい、貴方のお望みは学君に取っておきますから。なんなら今から学君にお願いしてきましょうか?」

「えっ!?良いのっ!?ーじゃなくてっ、 良いです結構ですっ!」

「そうですか? 残念」

「残念……って」


もう半分近く溶けているアイスを植野の手から奪い取ると顔をしかめる。へばり付いた包み紙は剥がすのも大変そうで食べるのも一苦労だ。

それ以上に手に伝わるベタつきが不快で堪らない。

今度はもっと早く対処しようと学びを刻みながら未だ動揺を隠せていない植野に声をかけると、2人揃って安積達の元へと向かった。


「よし!休憩もした所だし、続きや…」

「帰る」

「えぇっ!?」

「…また怒らせたんですか、安積」

「ぃやっ、そんな…はずは……」


植野を引き連れ2人の元へとたどり着くと、今度は鞄を肩にかけ冷たく言い放った鈴橋が安積の戸惑いの声に問答無用で立ち上がった所だった。

一難去ってまた一難…少し目を離した内に一体なにがと安積に目をやるが、安積にも良く分かっていないらしく自信なさげな表情で目を泳がせた。


「違う違う。心配しなくてもへーきだよ。今日は作り置きしてないって事」

「え…作り、置き?」

「お夕飯のですか?」

「そう。でしょ? がっくん」

「…まぁ、そんなとこ」


そんな中いち早く原因を言い当てたのは、先程の様子が嘘のように平静さを含ませた声を発した植野だった。ここまで躊躇なく言い当てられたのは、好いているからか、それともー


「……なんですか?」

「いえ、とてもお詳しいんだなぁと」

「まぁ…家族ぐるみで仲良しなので」

「それはそれは。なかなかに前途多難ですねぇ」

「…そーなんですよねぇ」


鈴橋達に聞こえないよう小さな声で囁いた班乃に、同じように小さく返す。恋人をすっ飛ばして家族の様になってしまっている今の状態で恋愛対象として見てもらうのは、性別の壁と同じくらい難しい問題なのは自覚している。

しかし、そう言うふうに見てもらえる様振る舞う事にも二の足を踏んでいるのが現状で、多方面に前途多難でしかない…

小さく交わされるお悩み相談会は、そんな事などまったく気がついていない安積の元気な声で短い終わりを向かえた。


「そっかそっか!前に両親が忙しい時は夕飯作ってるって言ってたもんねぇ!またなにかして怒らせちゃったかと思って吃驚したよぉ~」

「…別に怒ってない」

「もうっ!もうちょっと表情筋仕事させてよっ!お前の手伝いなんか金輪際しねぇ!って言われるのかと思ったじゃんw」

「そう言う気持ちがないわけではないけどな。普通に痛かったし」

「そっ、…それは、そっか。傷物にしちゃったもんね」

「えっ、怪我したのっ!?」

「いや、少し跡ついただけ」

「ちょっと見せて!」

「だから大丈夫だって」


少し強引に鈴橋の手を取り具合を見るその意図は、事情を知っているからか心配半分下心半分…いや、下心が7割に見える。
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