148 / 1,142
- 11章 -
- おたまじゃくしにしか見えない -
しおりを挟むそしてそれからは予期していた通り、さまざまな香りと黄色い声に囲まれ、ジュースをちびちび…
このテンション…辛い…
こういう時、鈴橋のあのローテンションが愛おしい…
もう、スチール缶投げつけられてもいいから今すぐ会いに行きたい…
そんな事を脳内で考えながら、開放されたのは1時間後。
女性達の指名客が来てくれたおかげで、今日はわりと早く開放された。
「あ、あの。俺帰ります。ありがとうございました」
「いえいえ、若ちゃんのお世話大変だろうけど、頑張ってね?」
「ありがとうございます。……あの、あんな母ですけど、これからもよろしくお願いします」
そういって軽く頭を下げる植野の頭を、店長は優しくなでた。
「もちろんよ。家の稼ぎ頭だからね。それに、尊敬もしているのよ? このご時勢、女手一つ、こぉーんな良い子を育て上げるなんてね」
「…ありがとうございます。でも、俺を育ててくれた母は、母1人じゃないと思ってるので」
「……そう。ありがとう」
もちろん血の繋がった母は1人だが、そうじゃない母も居る。この店の “ ママ ” は、その中の1人だった。
気恥ずかし気に言葉にした植野を見つめる “ ママ ” の目は、その言葉を証明するかのような優しげな眼差しをしていた。
「それじゃ、もう遅いし気をつけて帰りなさい」
「はい。飲み物、ご馳走さまでした」
「お粗末様でした。そうそう、店の子達も綾雪君が来ると元気になるし、またいつでも来て頂戴。用がなくてもいいし、客じゃなくて、息子としてででも」
「あー……それは、ちょっと、考えておきます」
気持ちはもちろん嬉しいが、出来れば避けて通りたい。あいまいに笑うとまぶしい笑顔のママからそのまま数歩後ずさり、植野は急いでお店を後にした。
そして…
「疲れた…」
肉体的な疲れは肉体だけで済むのに、なぜ精神的な疲れはこんなにも体力まで奪うのだろうか…
重い体を引きずってなんとか原チャにまたがると、我が家と言う第2の安らぎへと急ぐ。
…本当は安らぎNO1の鈴橋に会いに行きたいところだが、今から行っても確実に無視されるに違いない。というか、迷惑でしかない。
そして勝って知ったるなんとやら。自宅への近道にもなっている少し寂しい感じの裏道に入ったとき。
見慣れた姿がホテルの前で女性と口論している姿を見つけてしまった。口論というか、女性が一方的に声を荒げているようにも見える。
丁度信号待ち。
なにを話しているかは分からないが、あまり良い雰囲気ではなさそうだ。
信号が青に変わるまで、その2人に目が釘付けになる。言い争いは終わったのか、女性がその人物にぶつかるようにして賑やかな町へと姿を消していった。
信号が青に変わる。
進まなきゃ…でも。
でも、どうして…
『…どうして会長がこんな所に居るんだ?』
植野は無意識のうちに原付を近づかせ、大きく息をすうと班乃に声をかけた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる