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- 11章 -
- おたまじゃくしにしか見えない -
しおりを挟む「明!!」
里緒と話を終えホテルから出た班乃を待っていたかのは、まるで待ち伏せしていたかの様なタイミングで声をかけてきた女性だった。
「……」
その女性に目を向ける班乃だったが、正直記憶にない。自分を見たまま一向に声を発しない班乃を不振に思ってか女性はズイっと近づき、班乃の首に両手を回した。
「ひどぉーい!忘れちゃったのぉ?この間ホテル行ったじゃなぁーい」
「はぁ…そうなんですか」
行ったじゃないと言われても、全くもって覚えがない。この特徴的で腹立たしい間延びした喋り方なら覚えていても良さそうだけれど、残念ながらだ。
けれどこの女性と何もなかったとは言い切れないのも事実でもあり、自業自得だが行いの後始末の大変さに溜め息をついた。
苛立ちを隠すことなく女性の手を掴み引き離すと、冷たく言い放つ。
「ここはそう言うところでしょう?貴女の事は覚えてもないですし、貴女が望むようなこともするつもりはありませんので」
「もぉー、そんなの口だけのこと言ってないで、早くホテル行きましょぉーよぉ? ね?あたし今日暇なの。前みたいに相手してよぉ?明だって良かったって言ってくれたじゃない?今日もいーぱい頑張るからぁ」
引き剥がされた事など意にも返さず、班乃の体にそって指を滑らせながら尚も言い寄る女性に苛立ちが更に募っていく。所詮自分の事しか頭にないのだ。
『まったく、こんな所で良かったなんて言葉真に受けるなんて、おつむの程度が知れますね』
自身に触れる女性の手を掴み取りおでこを寄せると、なにかを期待してか女性の目が一瞬にしてとろけた。
『……あぁ、気持ち悪い』
自分を棚にあげてと言われるかもしれないが、どんな所でどんな事をしていようとも、人は人だ。好みというものはもちろんある。それに加え、今は誰でも良いなんて盲目にもなれない。
息も触れあう距離で黙り込んだ班乃になにを思ってか女性が目を閉じその距離を更に縮めが、それは不発に終わった。
「僕は貴女のような人間が大嫌いです。反吐が出ますね」
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