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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟むそして時間は少し遡る。
机も棚も何もかも小さく出来ている教室に、ピアノと元気な子供達の声が響いている。
大~きな栗のぉ~木の下でぇ~
あ~なぁたとぉ~わぁたぁしぃ~♪
そんな教室の真ん中で、植野は子供達に囲まれていた。
歌声なのかがなり声なのか判断の難しい声は耳に盛大なダメージを食らわせるが、そんなのはどうでも良い。
今伴奏を弾いているのは、大好きな大好きな鈴橋なのだから。
『がっくんの新たな特技発見っ!』
一緒に歌いながら楽しそうにピアノを引く鈴橋は本当に幸せそうだ。
な~かぁ~よぉ~くぅ
遊びましょぉ~
お~きな栗のぉ~
木のしたでぇ~♪
どんぐりこぉ~♪
『Σちょっとっ!?誰よ今間違えた子はっw』
「良いな、元気があって。これで皆覚えられたか?」
ピアノ椅子の上から上半身をひねり子供達に問いかける鈴橋に、親の帰りを待つ子供達が更に大きく返事をする。
『いやっ、絶対がっくん、今盛大に間違えた子が居たの絶対気づいてるよね!?』
だが、気がつかないふりをする鈴橋の優しさも
細かいことなど気にせず元気よく返事をする園児も
両方トキメキご馳走様な事でしかない。
「じゃぁ、これで今日の発表会のお歌の練習は終わりな。今度は皆で舞台を綺麗にする飾りを作ろうか?」
「私キリンさん作る!」
「俺は格好良い兜っ!」
「私はお花さん!」
いっせいに立ち上がり、一目散に自分のお道具箱に走っていく園児の動きに若干ついていけなかった植野は、座ったままの状態で何とか子供達の群れを無事にやり過ごした。
「……なにやってんだよ」
「いや、いつも思うけど、子供達のパワーって本当凄いな」
「とりあえず立てば?」
「そうねw」
自然と差し出された鈴橋の手に心拍数が上昇し遅れをとった自分を誉めてやりながら手を伸ばすが、その手は借りることはせずそのままスルリと手首へと滑らせ柔らかく包んだ。
「なんだよ」
「ピアノ引いてたけど…大丈夫だった? 手首、傷めてるでしょ?」
「あぁ…大丈夫。オルガンだから盤は重くないし」
「そう…俺が代わりに引くよ、って格好良く言いたいけど…」
「お前がピアノとか似合わないな」
「俺もそう思うww」
似合う似合わないの前に興味を持った事すらない。こうなるならもう少しだけでも音楽の授業をまともに受けておけば良かったと、運動一筋でやって来てしまった事に少し後悔が生まれた。
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