133 / 1,142
- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む気持ちは分からなくもないけれど、誰がなんと言おうと、それが班乃自身の言葉だとしても、それでも班乃が自分を責めるは間違いだと思う。
どんなふうに言葉にすれば伝わるのかも分からず、うまく言葉に出来る気もしないけれど、それでも少しでも伝われば良いと口を開いた。
自分を責め付けはのは辛いことだからー
「…それって、未練とは違うんじゃないかな」
「え?」
班乃と同じように、もう半分以上も燃えてしまっているお線香を眺め、ここに眠る彼女の事を考える。
彼女の事はなに1つ知らないけれど、彼女が本当に班乃の事を好きでいたならば、きっと今の状況を嬉しくは思わないはずだ。
「忘れられない事は未練じゃないと思う。すごく大切に思ってたから、思い出にする時間が長くなっちゃうだけだよ」
「思い出…」
「なんていうのかな、例えば俺が死んでしまったとして、俺を大切に思ってくれてた人が、直ぐに俺を忘れちゃったら悲しいと思う。…けど、いつまでも落ち込んでて欲しいわけじゃないんだよね」
「………」
「いつかは一緒に過ごした時間を振り返って、幸せだったなって思える思い出にして欲しいって思う」
「…それはまた、難しいことを」
「大丈夫、明は明のペースでゆっくり行けば良いよ。きっと彼女だってそうだと思ってくれてると思う」
「…どうでしょうね。呆れているかもしれません」
「そう?俺はそうは思わないけど」
『会ったこともないのに…なにを堂々と』
そう思えども言っていることが理解できないわけではないし、安積が懸命に励まそうとしてくれてるのも分かる。
安積の考えに根拠など感じられないが、否定するなんて非道な事も出来ないと口をつぐんだ。
「…そうだとしても、彼女が早く安らかに眠れるように、僕がしっかりしないと…じゃないと、彼女に迷惑をかけっぱなしでー」
「あっ!……すっげぇデジャヴ」
「はい?」
「心配する事は迷惑かって話!この間、体育館で話したじゃんっ!」
「……あぁ」
「あっきーも大切な人を心配するのは迷惑じゃないって言ってくれたでしょ」
「まぁ…」
「それ、楓さんも同じだと思う。迷惑とか、そんなんじゃなくって、ただ大好きな人に元気になって欲しい。それだけだと思う!だって、俺にそう言ってくれたあっきーが好きになった人だもんっ!」
「…………」
「って、あれ?そうなるとあっきーも俺の事大好きって事?あ、待って、なんか恥ずかしくなってきたww」
「………」
「えっと…まぁ、あれだよ!」
なにも喋らなくなった班乃に居たたまれなさを感じながらその手をとると、恥ずかしさで熱を持った顔を隠すようにその肩に頭を乗せた。
薄いシャツを通して感じるお互いの体温が心地良さを感じさせる。
生きる者としての証。
「辛いし、悲しいよね。だってまだ1年もたってないもん。立ち直るには短すぎるよ。-だからさ、時間かけてゆっくり思い出にしていこうよ。彼女も…俺だって、あっきーには元気になって欲しいって思うから」
「安積…」
「だからさ、もしまた1人で来るのがしんどいって思ったならいつでも言ってよ。あっきーが俺にしてくれてるみたいに、俺も明の力になりたいから」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる