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慰弦

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- 10章 -

- 現実と夢の指輪 -

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気持ちは分からなくもないけれど、誰がなんと言おうと、それが班乃自身の言葉だとしても、それでも班乃が自分を責めるは間違いだと思う。

どんなふうに言葉にすれば伝わるのかも分からず、うまく言葉に出来る気もしないけれど、それでも少しでも伝われば良いと口を開いた。

自分を責め付けはのは辛いことだからー


「…それって、未練とは違うんじゃないかな」

「え?」


班乃と同じように、もう半分以上も燃えてしまっているお線香を眺め、ここに眠る彼女の事を考える。

彼女の事はなに1つ知らないけれど、彼女が本当に班乃の事を好きでいたならば、きっと今の状況を嬉しくは思わないはずだ。


「忘れられない事は未練じゃないと思う。すごく大切に思ってたから、思い出にする時間が長くなっちゃうだけだよ」

「思い出…」

「なんていうのかな、例えば俺が死んでしまったとして、俺を大切に思ってくれてた人が、直ぐに俺を忘れちゃったら悲しいと思う。…けど、いつまでも落ち込んでて欲しいわけじゃないんだよね」

「………」

「いつかは一緒に過ごした時間を振り返って、幸せだったなって思える思い出にして欲しいって思う」

「…それはまた、難しいことを」

「大丈夫、明は明のペースでゆっくり行けば良いよ。きっと彼女だってそうだと思ってくれてると思う」

「…どうでしょうね。呆れているかもしれません」

「そう?俺はそうは思わないけど」


『会ったこともないのに…なにを堂々と』

そう思えども言っていることが理解できないわけではないし、安積が懸命に励まそうとしてくれてるのも分かる。

安積の考えに根拠など感じられないが、否定するなんて非道な事も出来ないと口をつぐんだ。


「…そうだとしても、彼女が早く安らかに眠れるように、僕がしっかりしないと…じゃないと、彼女に迷惑をかけっぱなしでー」

「あっ!……すっげぇデジャヴ」

「はい?」

「心配する事は迷惑かって話!この間、体育館で話したじゃんっ!」

「……あぁ」

「あっきーも大切な人を心配するのは迷惑じゃないって言ってくれたでしょ」

「まぁ…」

「それ、楓さんも同じだと思う。迷惑とか、そんなんじゃなくって、ただ大好きな人に元気になって欲しい。それだけだと思う!だって、俺にそう言ってくれたあっきーが好きになった人だもんっ!」

「…………」

「って、あれ?そうなるとあっきーも俺の事大好きって事?あ、待って、なんか恥ずかしくなってきたww」

「………」

「えっと…まぁ、あれだよ!」


なにも喋らなくなった班乃に居たたまれなさを感じながらその手をとると、恥ずかしさで熱を持った顔を隠すようにその肩に頭を乗せた。

薄いシャツを通して感じるお互いの体温が心地良さを感じさせる。

生きる者としての証。


「辛いし、悲しいよね。だってまだ1年もたってないもん。立ち直るには短すぎるよ。-だからさ、時間かけてゆっくり思い出にしていこうよ。彼女も…俺だって、あっきーには元気になって欲しいって思うから」

「安積…」

「だからさ、もしまた1人で来るのがしんどいって思ったならいつでも言ってよ。あっきーが俺にしてくれてるみたいに、俺も明の力になりたいから」


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