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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む以前、いつかの昼休みに彼女が居ると話をしていたのを思い出す。しかし今思えば彼女が居るというのに、放課後の殆どの時間を自分と過ごしていたし、連絡を取り合っている様子もなかった。
あの時言っていたのがもしここに眠る楓だとしたならば…
『俺、ちょー無神経じゃん』
知らなかったとは言え、数々の無神経な発言に背筋が凍る。そんな安積を知ってか知らずか、特に気にした様子もなく班乃の話は続いた。
「…それからお互い意識しちゃって、今まで一緒に出かけるのとは意味が違ってきてしまうし。でも、幸せってこう言うのなんだなって素直に思えました」
「…そっか」
「…それで、告白されてからの初めてのクリスマスイブにね。偶然運良く雪が降ったんです」
「雪……へぇ!ホワイトクリスマス!?最高じゃんっ!」
“ 雪 ” という単語を口にする安積の表情は少し曇っている。しかし墓石を見つめたままの班乃は気がつくことなく、気がつける余裕もない。
ホワイトクリスマスは一般的にロマンあるシチュエーションだと思うだろう。
けれど班乃にとってはそうとは言えず、沸き上がる黒い感情に安積の最高だという言葉へ返すことは出来なかった。
「……その日はもちろん一緒に出かける予定を入れてました。待ち合わせ場所には10分もあれば着くのに待ちきれなくて、前々から用意していたプレゼントを持って、30分前には家を出てました」
「そかそか、あっきーにもそんな時代があったんだね」
「今の僕じゃ想像できないですよねぇ」
「それなっw」
「……素直ですね安積は」
「ごめっ…」
「まぁ、安積のいい所でもありますけど」
申し訳なさそうにしている安積だが、良い所と言ったのは嘘ではなかった。会話の間に時折入る安積の明るさのおかげで落ち込み続けることなく話をすることが出来るのだから、不快に思うどころか感謝すら感じている。
只でさえこんな所まで付き合わせてしまった上にこんな重たい話を聞かせてしまっているのだ。
感謝以外になにがあるというのだろう。
本来誰かに話すべきではないかもしれないが、それでもここまで聞いてもらったのだから最後まで話さないのも失礼だと再び重たい口を開いた。
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