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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む「リア充め…」
「はい?リア充?」
「何でもないよーだっ!」
授業が終わった後、若干機嫌だった安積の機嫌は、次の授業が始まる前、要するに休み時間内には通常運転へと戻っていた。
「あ、そういえば今日台本配るって!」
「え?もう出来たんですか?」
「うん、2限目後の休み時間にたまたま先輩に会ってさぁ。午後練で配るみたいよ!」
「そうですか。楽しみですね」
「3年生最後だもんなぁ。気合入ってるんだろうね!」
安積が転校してきてから、早いもので5ヶ月が過ぎようとしていた。10月現在、今部活で取り掛かっている演劇が3年生にとって最後の発表の場になるため、全員が全力で取り掛かっているのだ。
一度出来た台本を、半分以上作り変えるという荒業をしてまで。
「そうですね、短い間でしたけどお世話になりましたし。満足していただけるような舞台に出来るように頑張りましょう」
「おう!!」
班乃へと振り返り元気良く腕を上げ返事をした安積だったが、自分の足に毛躓く、とういう本人もびっくりな事が起こり、意思とは関係なく体の重心が後ろに持っていかれる。
「安っ…」
「わっ!?」
班乃は反射的に安積の腕へと手を伸ばすが、その手は別のものに気を取られ、掴む前に止まってしまった。
スローモーションのように流れていく視界が天井を写したあたりで、安積は次に自分を襲うであろう衝撃にギュッと目をつぶり備える。
ドスンと激しい音を立てて倒れこむが、予想していたより衝撃は軽いものだった。
「あ…あれ?あ、はは!びっくりしたぁ!まさか自分の足でずっこけるなんてww うはは、ちょー恥ずかしいっw」
「…えぇ、吃驚です」
「ってか、あっきー見てないで助けてよね!手ぇ引っ込めたっしょ!親友の一大事を眺めてるだけとかちょっとひどいよ!」
「…お前の一大事に巻き込まれた俺に気づかないほうが酷くないか?」
「ぅわっ!?」
その声は、急に自分の下から聞こえてきた。そう言えば、なんか床が柔らかくて暖かいような…
恐る恐るその声の発生元へと首を曲げるとー
見事に安積の下敷きにされた鈴橋が、血管が浮きそうなくらい眉間にしわを寄せて睨んでいた。
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