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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む暖かい陽射しを受けて、班乃は目を覚ました。
とても見慣れた光景が目の前に広がっている。
そう。
例えるなら授業中の様な…
「…あれ」
「…の経緯で、姜維は蜀に降り~」
「………」
教壇前で世界史担当の教師が熱弁している。どうやら授業中に居眠りをしていたらしい。
丁度その時、狙ったようなタイミングで丁寧に折られた紙飛行機が自分の手元へと滑り込んでくる。いったい誰がとその先を見ると安積がニッコリと笑っていた。
どうやらこの飛行機の飛ばし主は安積だったようだ。自分に向けられたジェスチャーを読み取り、それに従い紙飛行機を開くと短い文章が書かれている。
〖おはよう!いい夢みれた?〗
『……起こせよ』
そんな思いが頭を掠めたが、居眠りしてしまったのは自分の責任だしと曖昧に笑って誤魔化した。
『…いい夢、か』
班乃は今見ていた夢を思い出す。それは2年程前の記憶。幼馴染みとの会話だった。
無意識に触れた左手には、飾りもなにもない指輪が鈍く光っている。その仕草はもはや癖と呼べるもので、その手を微かに自分へと向けるとぼんやりと眺めた。
彼女とお揃いの指輪。
彼女のものは、今も自分の首にかかっている。
いつでも側に感じられる様に…
物思いに耽っていると、またもや紙飛行機が飛んできた。
『幸せそうな顔をしちゃってw羨ましいなチクショウっ』
飛んできた先には、勿論安積がふて腐れた顔でそっぽ向いていた。
同い年なはずなのに、そんな安積を見て微笑ましいと思ってしまうのが不思議である。
班乃はノートの端を切り取りさらさらとペンを走らせると、数年振りかと思われる紙飛行機をつくり安積の机へと飛ばした。
返事がくるとは思わなかったのだろう。驚いた顔をする安積へ笑顔を向けると、先程受けたジェスチャーのお返しをする。
班乃と紙飛行機を交互にみて戸惑いを見せた後、ゆっくりと紙飛行機を開いた安積はその内容をみて紙飛行機をー
握りつぶした。
その紙飛行機には
〖幼馴染みが恋人に変わりそうな時の夢を見てました。幸せすぎてお腹いっぱいです。困ったものです〗
と書かれていた。
楽しそうな顔をしてこれを書き記し、幸せそうな顔をしてこんなものを送られたら文句の1つも言いたくなるだろう。
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