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慰弦

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- 9章 -

- すれ違い -

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「ねっ?お願い!!」


あからさまに嫌そうな顔をしている鈴橋へむかい勢い良く頭を下げた植野は、盛大な音を立て両手を合わせると全力のお願いの姿勢を見せた。

両手を合わせる、というより、すりすりと擦り合わせているその様は、お願いではなくお祈りに近い気がする…


「俺は神でも仏でもないんだけど…」

「学様っ!」

「…お前馬鹿だな」

「……駄目、かな?」

「………」


毎度毎度面倒臭そうな事に軽率に首を突っ込む植野にげんなりするのだが、駄目なのだ。植野のお願い攻撃には今まで勝てたことがない。
なんだかんだ理由をつけて、いつも連れて行かれてしまう。

自分自身、というか、家族諸々いつも世話になってるし、という思いもあるのでどうしても全力で拒否出来てないのは否めない。

『騒がしいの、嫌いなんだけど…』

でもしょうがない。
せめて、と1つ交換条件をだした。


「分かった…ただしお前の奢りなら」

「マジでっ!?やったっ!!もちろん御代は持たせていただきますとも!!行こっ!早く早くっ!!」


満面の、鈴橋の弱い満面の笑みを浮かべた植野はそそくさと後ろに回りこみ、背中を両手で押す。


「そんな急がなくてもカフェは逃げねぇよ」

「早起きは三文の徳!急がば周れっていうじゃん」

「両方意味違うし、後者は完全に駄目だろ…」

「細かい事は気にしない!!ほらほら、早く行って並ばないと売り切れちゃうってば」

「はいはい」


『ガキかこいつは…』

うんざりするが、何故だかそこまで嫌ではない。背中を押されるがままに、2人は人気の店長の運営するカフェへと急ぐのであった。
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