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- 9章 -
- すれ違い -
しおりを挟むそれから少し時間は遡る。
いつも通りの帰路をいつも通りに歩く。隣を歩く人物も腹立たしい程にいつも通りだ。けれど辺りを漂う気まずい空気はその限りではなかった。
そんな空気を感じているのは自分だけだろうが…
『会長は生徒会の仕事とかなんとかで一緒じゃないし、安積は安積で倉庫掃除頼まれたとかなんとかで一緒じゃないし…』
「…理由作って一人で帰れば良かった」
「ぅん? なんか言った?」
「植野には関係ない」
「そ、そう?」
『俺が起きてたのを知らないから、コイツはいつも通りでいられるんだろうけど…』
自分には無理だ。
昨日は咄嗟に考えることを放棄してしまったが、このまま放棄し気にしないで居られる程些細な問題ではない。
隙あらば頭を占領してくる昨晩の出来事に何もなかったかのよう振る舞うことは、花を1000本育てるより難しい事だった。自然に減る口数だが、普段からそこまで口数が多いわけではないので怪しまれる事はないだろう。
「…ねぇ、がっくん、なんか機嫌悪い?」
「……」
『…これ、普通に怪しまれてるな』
「なんでだよ。別にいつも通りだろ」
「そう?」
「そう」
しかしポーカーフェイスには自信がある。無表情を張り付けいつも通りだと言いきると、少しばかり訝しげに見つめてくるが納得はしてくれたらしく、「そっか」と呟き軽く笑った。
『…良かった。誤魔化せ』
「良かったぁ。なんかしたかと思ったよー」
「……」
『誤魔化せ…た?』
誰のせいだと文句を言って何故あんなことをしたのかと問いただしてやりたいが、そこはグッと堪える。もし今問いただし答えを貰ったとしても、これに対する答えは出せないだろう。
それに、聞くのも少し怖い。
『…もう良い。今からでも適当に予定作って一人で帰ろう』
今逃げても明日、明後日と会うことになるのだから意味はないかもしれないが、それでもこのまま一緒にいるのは少し辛い。
「…悪い植野。俺、これからー」
「あっ、ちょっと待った!」
「はっ?」
「良いからっ!動いちゃ駄目だから!じっとしてて」
「なっ、なんだよ」
急に真剣な顔をし息を潜める植野に、反射的に鈴橋も息を止めた。
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