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慰弦

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- 9章 -

- すれ違い -

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班乃は若干混乱したまま美術準備室を後にした。

月影と安積の関係は自分の理解を越えていた。自分から聞きに行ったくせに気の聞いた言葉1つも出てこず、自身の思慮の浅さや語彙力のなさに項垂れ大きな溜め息をついた。

聞いてしまった以上、今まで通り知らん顔は出来そうもない。けれど月影も答えを見つけられていないのなら、自分が勝手に動くわけにはー


「……あれ?」


不意に目に入ったのは、最終下校時間が迫っているにも関わらず学校規定のローファーが入ったままの下駄箱で、名前を確認するとそこは現状様々な方面で頭を悩まされている人物だった。


「安積…まだ居る?」


少し下がり下駄箱を見渡すと、他にローファーが残っている所はない。それは植野と鈴橋と共に帰らなかったとを物語っていた。

先に帰ると言っていたのに何故こんな時間まで?

不思議に思っていると、職員室から演劇部顧問がひょっこりと顔を出した。


「あっ、先生」

「あれ、どうした?班乃。もしかして班乃も手伝ってくれてたのか?」

「いえ、僕はなにも…手伝うってなにを」


「安積り部活倉庫の整理お願いしたんだよ。この後特に用事ないって言ってたからさぁ~いやぁ、半年くらい掃除してなかったから大変な事になっちゃってて」


悪びれもせず笑う顧問の言葉に、一抹の不安が胸に広がる。


「半年も、掃除してない、倉庫の整理……?」

「我ながら確りしないとって改めて思ったよ」

「自身の怠慢を生徒に押し付けるなんて教師であり顧問でもある人のする事ではないですね」

「厳しいっ!?」

「…まだ靴があります。まだ終わってないのかもしれませんね。…手伝ってきます」

「流石会長!」

「…………」

「……すいません」


顧問に絶対零度の視線を食らわせた班乃は急いで倉庫へと向かった。
嫌な予感がする。今日一日中、安積の事を考えていたせいか、月影から色々な話を聞いたせいか。

倉庫は体育館のステージ下に儲けてある。体育用具は他の所に置き場があるし、同じ場所にあると言えば、年1ある体育祭に使う看板や文化祭で使う垂れ幕等々。

それ等があったのは半年以上前だし、さぞかし倉庫は埃まみれだろう。
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