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- 9章 -
- すれ違い -
しおりを挟むいくら班乃の存在に気がついていなかったとしてもキョドりすぎじゃないだろうか?3人の不審気な視線に気がついた安積だったが、ここはスルーを決め込み話題を変えようと班乃へと頭を下げた。
「あっきー今朝はごめんね。朝練でれなくて」
「いえ、それは良いですけど…大丈夫ですか?体調不良って顧問から聞きましたが」
「体調不良?大丈夫か?」
「うんっ、もう全然平気!午後練はちゃんと出るよ!」
「そうですか。大丈夫なら良いのですけど」
「ほらっ、皆そろそろ教室入ろ!HP始まるよ!」
「あ、もうそんな時間?じゃ、また後でねー」
「はい、また後で」
そんな当たり障りない会話の後、それぞれが教室に消えていく。
席に着いた安積は、いつも通り皆と挨拶を交わしながら席へと向かう班乃の様子を横目で眺める。
その光景は本当にいつも通りで、なにも気になる所はない。席に着き隣の生徒と楽しげに会話をする班乃から目をそらすと窓の外へと視線を移し静かに溜め息をつく。
昨日から胸に巣くう不信感や不安がこのまま杞憂に終わってくれればいい。密かにそう願った。
そして、またいつも通りのHPが始まる。
『……やば。眠くなってきた』
眠れない程不安が渦巻いていた自分の心情とは裏腹に、目の前で流れていくのはいつも通りの日常で…
安心したのか。
緊張が解けたのか。
担任の声が遠ざかっていくのを感じながらも抗うことは出来ず、安積は静かに眠りの中へと入っていった。
そして今である。
「いやー…朝一で居眠りとは。流石ですね」
「あっはは…頭痛w」
健康観察で名前を呼ばれた時には既眠りに落ちていた安積は、3度呼ばれても気づくことが出来ず担任の愛が詰まったチョークを頭部に食らったのだった。
「笑って良い所なのか、悪い所なのか…」
「笑えばいいと思うよ」
「その名台詞、使い所今じゃないと思いますけど」
「ぅははw じゃ、俺は今日も見学だから!また後でー!」
「えぇ、また後で」
一時限目は体育なのだが、“ 今日も ” の言葉通り、安積は常に体育の時間を保健室に入り浸り過ごしている。
本人曰く、体育が “ 死ぬ程 ” 嫌いだから。
先生曰く、運動が嫌いすぎて “ 死んで ” しまうから。
と、ふざけた事を大真面目に言っているのだが、本当に嫌いだからという理由で毎度毎度見学を許すだろうか?それに安積がそこまでして徹底して体育を見学する理由がそれだけだとは到底思えない。
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