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- 8章 -
- 休日 -
しおりを挟む未だに通常の3/1ほどに小さくなっている(気がする)学父が凄く不憫にも思えたが、ここは大人しく共に飲み交わせる時を待つことにした。
「じゃぁ、綾雪君はこれね?」
「え?」
目の前に出されたのはジョッキに入ったビール、に見えるもので…しかしあれだけ酒は駄目だと言っていたのだ。となればこれはー
「ノンアルですか?」
「えぇ。学はこれでも酔っちゃうのよね…」
「プラセボですねww 」
『なにそれ可愛いっ!!』
「綾雪君はビール飲めるって言ってたし、味はきっと大丈夫だと思うから、もし良かったらこれで付き合ってあげてくれるかしら?」
「以外ですねw 俺で良かったら是非ご一緒させてください!」
「綾雪君…っ!今日はとことん飲み明かそうっ!」
「とことん、じゃなくて、程々にお願いしますね」
「あっ…はい」
「あははっ」
もの凄いカカア天下…この学父の姿からは、園で保護者の方々に頼りにされ信頼を寄せられてる人と同一人物とは思えない。
どうやら鈴橋家は、仕事は父に、家は母に実権があるらしい。お互い役割をこなし、オンオフの切り替えもしっかりなされている。それで居て物凄く仲の良い関係を築けているのは尊敬の意を感じる。
そしてあの子供達である。
「家族」として、理想的な姿だなと、植野は密かに思っていた。
一方その頃。
「きゅうじゅいち、きゅうじゅに~きゅうじゅ……」
「さん、九十四」
植野たちが気分だけの酒盛りで盛り上がる一方、湯船の中では妹が兄の膝の上で抱き抱えられるように座り、兄が丁度良い位置にある妹の頭に軽く顎を乗せる様な体制で、1から100までの数字が書かれているお風呂マッドを見ながら数を数えていた。
「きゅうじゅろく、きゅうじゅしち」
「あと少しだ頑張れー」
「きゅうじゅきゅ、ひゃぁーくぅっ!!」
無事数え終えた紗千は最後の掛け声と共に元気良く立ち上がり、湯船から飛び出すと勢い良く脱衣場まで走りだした。
大好きな植野の来訪でテンションが上がっているのだろう。しかし風呂場で走るのは危険すぎる。
「こらっ!そんなに走るところぶっ…」
既に手の届かない所まで行っている妹に、慌てて湯船から立ち上がり注意を促したその瞬間、目の前にある妹の頭が大きくぐらついた。
“ 転ぶっ!! ”
妹の頭が向かうその先は、運悪く風呂場と脱衣場の境目である段差が待ち構えている。
咄嗟に伸ばした手は見事段差と妹の頭の間に入り込み、なんとか怪我をさせてしまう事だけは免れた。
短く安堵の息を吐き出すと、寝転がる妹を抱き抱えひとまずその場に座らせる。
「……大丈夫か?紗千」
「……」
大人しく座わらされた妹は今一状況が理解出来ていないかのようで、心配そうな表情で自身を見つめる兄をポカンと見上げた。
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