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慰弦

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- 8章 -

- 休日 -

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自分達はやっぱりこの人達の子供なのだ。

それも飛びっきり大切にされている。


「じゃぁ…」


鈴橋の母が携帯を受け取ろうと手を出した瞬間、ハンズフリーにした携帯から元気の良い若子の声が響いた。

というか、轟いた。


「こんばんは、綾雪の母です!いつも家の子がお世話になってます!」

「!?」

「うちの元気坊主、迷惑かけてませんか?」

…………。
……………。

「あれ?綾ちゃんまだハンズフリーにしてないの?」

「いや、してるよ。してるけど…ってか元気坊主って…」

「すいません、家の両親ハンズフリーがなにか知らなくて、ちょっとビックリしてるみたいです」

「ありゃ;悪いことしちゃったかな?」

「いえ、大丈夫です」


今の会話のやり取りを聞き、なにがなんだか分からない顔をしている両親に向けて、鈴橋は携帯を指差しハンズフリーの説明をした。


「すいません、最近の携帯の機能が分からなくて」

『いえいえ、気にしないで下さい。私も最近知ったばっかりですし』

(嘘つけ…)

大人は意味のない嘘をつく。
相手を思いやっての嘘。

そんな嘘は嫌いじゃないが。

社交辞令から始まり、何故か会話が盛り上がる若子と鈴橋の両親を前にして、鈴橋と植野は借りてきた猫状態で佇んでいた。


「なんかさぁー」

「んー?」

「こっぱずかしいよね」

「まぁ…うん」

「でもさぁ」

「うん」

「大事にされてるんだなぁって思うよね」

「…そうだな」


少し間を上げて肯定した鈴橋が微かに浮かべた笑顔に植野が目を奪われた丁度その時、電話が終わったらしい。

油断している時にふと良い笑顔を浮かべる物だから、物凄く心臓に悪い。普段が仏頂面だから尚更である。


「綾雪君携帯ありがとう。直ぐに準備するから待っててね」

「いえ、こちらこそ母に付き合って頂いて、ありが……」


ん?

今準備って言った?


⚠️ハンズフリー⇒今でいうスピーカーです(笑)⚠️
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