54 / 1,150
- 8章 -
- 休日 -
しおりを挟む―――朝7時 鈴橋家―――
「おっはよーお兄ちゃんっ!!」
どすっ!!
元気の良い声と一緒に、鈴橋を夢の世界から目覚めさせたのは、布団越しに自分へとのし掛かった衝撃だった。
なんと言うバイオレンス…
いや、幼稚園児が居る家庭では日常茶飯事なのかもしれない。
「っー…おはようっ、紗千」
色々と飛び出しそうになるのをなんとかこらえ、布団の上の体重に挨拶をした。
「お兄ちゃん今日はお寝坊さん!」
「え?」
なんとか幼児を乗せたまま上半身をお越し、携帯で時刻を確認する。
「寝坊って…」
休みの日、予定がない限りは前日の夜に夜更かしをする癖がある。ただし鈴橋の場合、夜更かしの理由が少しズレている。
大抵学生の夜更かしの理由は、友達とオールやゲームをしたり漫画や深夜枠TVに見いったりが一般的だろう。
だが鈴橋は、勉強で夜更かしをしてしまうのである。
予習中、分からない事があるととことん調べる。分かるまで調べる。わかると楽しくなって、次から次へと進んでいき、気がつけばもう朝陽が出そうな時間だったりもする。
勉強が楽しすぎて、勉強=娯楽の公式が出来上がって居るのである。
そして昨日も例外ではなかった。
今日は予定はあるが、午後からだし…と朝の3時辺りまで勉強していたのだった。
「4時間睡眠…」
「よっちゃんすいみ…ん?」
「…おはよう、紗千」
「うんっ!おはよう!」
とりあえず自分の上に乗っかったままの紗千を床に下ろすと、布団から出て大きく伸びをした。
「今ね今ね、ママがお弁当つくってるのよ!」
「お弁当?」
「うん!」
嬉しそうに返事をする妹に手を引かれるまま台所へと急ぐと、確かに母が鼻唄混じりでお弁当を作っていた。
それもいつもピクニックへ行くときの大きめのお弁当箱にだ。
「おはよう母さん」
「あらぁ、おはよう学!今日は早いのねぇ~?もしかして紗千ちゃんに起こされた?」
「うん、まぁ…それよりどっか出かけるの?」
「そうなのよぉ、今日は珍しくママもパパもお仕事が片付いたから、紗千ちゃん連れて公園に行こうと思って」
「うん!パパもママも一緒にお出かけするの久しぶりだから紗千早起きしちゃった!」
「きっと楽しみすぎてテンション上がっちゃったのかもねぇ~」
「確かに、母さんも父さんも暇な日ってめったにないからな…良かったじゃないか、紗千」
「うん!お兄ちゃんも行くんだよねっ!」
「えっ…いや、俺は今日は出かける用事が」
「えっ? 嫌だ嫌だっ、お兄ちゃんも一緒っ!」
鈴橋が出かけるのを知らなかった紗千は、おもいっきり鈴橋のズボンの裾を引っ張った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説


【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる