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- 8章 -
- 休日 -
しおりを挟む「おはよー…」
「おはようございます…」
(ちくしょう…寝起きの半微笑顔も格好いいとは何事だ…)
そんなテンションの若干低い挨拶から二人の朝は始まった。
昨日下校途中に公園で練習した後、その流れのまま安積宅になだれ込んだ班乃は、結局そのままお泊まりしたのだった。
「今何時?」
「今9時ですよ」
「まじ?まだまだ寝れんじゃん」
「いつまで寝る気ですか(-_-;)」
昨日の練習では班乃の人気を糧にし自分でもびっくりするほど身が入った、と言いますか…集中力が増し、台詞やフリは練習レベルでは覚える事が出来た。後は役に為りきるため、更に台本の読み込みや感情の読み取りを進めていく事だけとなった。
まぁ、この作業も暗記とはまた違う難しさがあるのだけれど。
「ってかさぁ~」
「なんです?」
未だベッドの上で布団にくるまり寝転びながら、既に布団を畳んで着替え始めている班乃へと視線を向ける。
「こうも快適な気候だと布団から抜け出すのも一苦労じゃない?」
「んー…僕はそうでもないですけどね。今日はむしろ寝すぎてしまったくらいですよ」
「なにそれ?どんだけ規則正しい生活してんの?」
「別に普通です…よ………えっと、なにか?」
なんでもない会話を交わしながらもヒシヒシと感じる視線に振り向いた班乃が見たものは、自分をガン見している安積の姿だった。
マッチョまではいかないが、程よく割れた腹筋。安積の視線はそこに釘付けとなった。
「あの…そこまで見られると、流石に少し恥ずかしいのですが…」
「……ずるい」
「はい?」
「腹筋割れてんのずるい」
「あぁ、貴方うっすらとも割れてなかったですしね」
衣装制作のためにサイズを計った時の事を思いだすと、傷も割れ目もなに1つない綺麗な腹部が脳裏に浮かぶ。
「好きですねぇ…腹筋。前も言いましたけど、そんな気にしなくても良いじゃないですか。太ってる訳でもガリガリな訳でもないですし」
「分かってないなぁあっきーは!腹筋の割れ目!男のロマン!」
「ロマン…はちょっと分かりませんが…」
それだけ言うと班乃は少し考える様なしぐさを見せた後、安積へと視線を向けた。
不思議そうな顔をする安積へと手を伸ばして、当人が気にしているお腹をポンポンと二回軽く叩く。
「…なによ?」
「僕は安積みたいに小さくて華奢で可愛い子がバッチリ腹筋割れてたりしたらちょっと嫌ですね」
「あっきー…」
「だから、今のままが一番安積らしくて良いですよ?自分らしいのが一番です」
にっこりと笑う班乃。それをキラキラとした目で見つめる安積。
しばしば見つめあった二人だったが…
「ねぇあっきー?」
「なんです?」
「それは優しさ?それとも部活の女役に対する要望?」
「85%後者ですね」
「………部活熱心だこと」
「誉め言葉として受け取っておきます」
そんなやり取りの後、班乃は朝食準備を、安積はまったりと着替えなどを済まし、午後は何をしようかと朝食についた。
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