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- 7章 -
- 子供達の救世主 -
しおりを挟む「植野っ!!」
部活が終わり昇降口へと戻ってきた植野を迎えたのは、怒気を含んだ鈴橋の一声だった。
「おぉっ、がっくんっ!!聞いて聞いてっ!今日自己新記録二回だせたのっ!がっくんのおかげーっ!」
喜びのハグをと両手を広げ勢い良く走りよった植野だったが、寸での所で鈴橋の鉄拳が炸裂しその手は目的を果たす事なく自身を抱き締める事となった。
「-――~~~っっ!!」
見事クリーンヒットし声にならない声を上げしゃがみこんだが、そんな事は怒り心頭の鈴橋には関係ないらしい。
「おまっ、お前なっ!あーゆーのやめろよっ!恥ずかしいだろっ!?」
「あーゆーのってなによぉ…?」
「だからっ、あんな所で堂々と手なんてっ―」
感情のままに文句の1つや2つや3つでもと声を張り上げるが、自分を見上げる涙を浮かべた植野の視線により忘れていた理性を取り戻す。
そう、ここは昇降口。
部活を終えた生徒が溢れている昇降口なのだ。慌ててあたりを見渡すと、2人のやり取りを不思議そうな眼で眺める視線が溢れていた。
「…っ」
怒りか、もしくは恥ずかしさからか。頬を紅潮させた鈴橋はキッと植野を睨むと逃げるように校庭へと飛び出していった。
「ちょっ、ちょっと待ってよがっくん!!」
落とした鞄を拾い鈴橋を追って校庭へと飛び出すと、少し前方に班乃と安積の姿を捉えた。走り去った鈴橋を不思議そうに眺めている2人へすれ違いざまに手を上げ挨拶を送る。
「綾っ!? どうしたそんな慌ててっ!?」
「また痴話喧嘩ですかぁー?」
「本当、俺の女房怒りんぼでさぁ-―」
笑いながら足も止めずに通りすがる植野の様子に、安積は状況が掴めず呆然とした視線を送った。
「女房?」
「ジョークですよ。さて、今日の帰りは2人ですね」
「そう、なの? なんか良く分からないけど…じゃぁさっ、帰り公園寄ってこうよ!もうちょっと芝居練習したいぅ!」
「えぇ、構いませんよ」
「まじ? あんがとー♪」
こうして、植野と鈴橋の痴話喧嘩校内名物度を徐々に上げながら、慌ただしく帰路につくのだった。
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