Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
37 / 1,142
- 6章 -

- それぞれの大切な人 -

しおりを挟む


なんやかんやで始まったおままごと。お嫁さんと言うのは憧れときめく立ち位置のようで、すでに近所のお兄ちゃんと本当の兄ちゃんは蚊帳の外状態であった。

そんな蚊帳の外から妹の旦那、安積に終始睨みをきかせている実兄。その隣にいる植野は実に居たたまれない…

自他共に認めるインテリ鈴橋のステータスに、自他共に認めるシスコンも今日で追加されたに違いない。

さてこの状況どうしよう。触らぬ神に祟りなし。

4人が夫婦生活(仮)に夢中になっている今、むやみに鈴橋を刺激するよりもあえて蚊帳の外にいた方が安全ではないのだろうか?一応、鈴橋もまだ理性をきかせているようだし。


「はいあなた、あーん♪」

「お父さん、ネクタイ曲がってますわよ」


そんな植野等を他所に、楽しそうに繰り広げられているのは実にラブラブな夫婦生活である。


「しっかし、見てると面白いな」

「…なにが?」

「や、呼び方がさ。『あなた』とか『お父さん』とか。お家で各々なんだなぁーって」

「………」

「家はなんだったんだろうなぁ」

「……さぁ」

「俺だったら、お嫁さんには名前で読んでほしいなw」

「…ハート付きで、とか言うなよ。気持ち悪い」

「わかってんねぇー!なんならがっくんも俺の事、ハートつけて呼んでも良いんだよっ!?」

「断る」

「冷たい( ノД`)…」


しかし言葉こそは冷たいが、その声には覇気がない。

実を言うと、植野は物心つく前から母子家庭で育っている。それについて寂しいと思った事はない。母も自分を大切にしてくれているし、自分も母はとても大切な存在だ。荒れていた時期もあったが、それでも見捨てず一生懸命育ててくれた事に凄く感謝している。

母ともう一人、その時に凄くお世話になった人がふいに脳裏に浮かび、植野は1人ひっそりと苦笑した。

『そういえば最近会ってないや。元気にしてるかなぁ?後で会いに行こー』

そしてそんな植野の家庭事情を知っている鈴橋は、植野の何気ない一言にとても困惑していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...