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- 6章 -
- それぞれの大切な人 -
しおりを挟む丁度その時、お絵かきに夢中になっていた女児がようやく鈴橋達の存在に気がつき、笑顔を咲かせ元気良く立ち上がった。
「がっちゃんだぁっ!! がっちゃん、たっちゃん、あっちゃん!!」
「!?」
多分皆のあだ名なのだろう。その呼び名を聞いた瞬間、安積の中を様々なものが高速で駆け巡る。
「安積?どうかしました?」
「…呼吸を止めて一秒貴方真剣な目をしたからぁ、ぴーぴぴぷぺぽがっちゃんも…あっちゃんかっこいい!」
「なんだそのミックス楽曲」
「せーちゃんがどっかに旅立った…w」
「安積、戻ってきてください」
そんな会話をよそに駆け寄ってきた女児は、そのままの勢いで鈴橋に飛び付いた。幼稚園児と言えども全力でぶつかって来られたら結構な衝撃。不意討ち的に飛び付かれ少しよろめくが、運良く後ろにいた植野に受け止められた。
「おっ!今日も元気だねっ!!」
「うんっ!今日も遊びに来てくれたのっ!?」
「えぇ、今日は何して遊びます?」
「おままごとっ!!」
鈴橋達が来た事がそうとう嬉しいのだろう。間髪いれずキパッと言い切った女児だったが、安積に気がつくとシュッと笑顔を引っ込め、鈴橋と植野に隠れるように顔だけのぞかせた。
紗千に学級担任にと続けて満足できる挨拶をする事が出来なかった安積は、今度こそはちゃんと成功させるっ、と密かに心に違い女児の前に膝を折る。
しっかりと目線をあわせ優しく笑いかければ、幾分か女児の表情も柔いだ。
「こんにちは、はじめまして!聖だよ。宜しくね?」
ぽんぽんと頭に手を置くと不安げな表情は一変、新しい何かを発見した時のようなそれにかわった。
「初めましてっ!ねぇねぇ、せいちゃんって外人さんなのっ?」
「え?」
「だって頭黄色いよ?」
「あ…」
言われて安積は自分の金髪の髪を撫でた。一応目論見があり染めてはいるのだけれど、別に異国の人を意識してというわけではない。しかし、それはそれで使えそうだ。
「そうだよっ!俺は…」
「嘘つけ純日本人」
「先生にめっちゃ怒られてたじゃんっw」
「黒染めして放置したから先っぽだけ黒いんだって、苦しい言い訳もしてましたねぇ」
「…外野はちょっと黙ってようか?」
「ふざけるのは頭か性格かどっちかにしろよ」
「Σ´д`」
そんなやり取りをしていると、膝をついたままの安積の後ろから突如体当たり気味で紗千が抱きついた。鈴橋同様油断していたせいでグニャリと前傾姿勢になり、咄嗟に手をつきこらえると転倒を阻止出来たことに安堵の息を吐く。
意外と容赦なく体当たりをしてくる子供を体感すれば、鈴橋が意外と体力があると言っていたのもうなずける。
ひっそりそんな事を思っていると、背中に乗った体温が恐ろしい事を言いはなった。
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