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- 6章 -
- それぞれの大切な人 -
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穏やかな口調で笑うその人物に一礼し、背を向け教室へと向かおうとした足はなにかを思い出したようにピタリと止まる。
それは、安積が来てからずっと聞いてみようかと思っていた事だった。
「すいません、もう1つ聞いても良いですか?」
「ぅん? 構わないよ?」
「ありがとうございます。この間、僕のクラスに “ 聖 ” って名前の転入生が来たんですけど」
「うん」
「知ってたんですか?」
「まぁね」
「あの子が、貴方が探してる子ですか?」
「…そうだね。でも俺には会わない方が良いんだよ」
「会いたがっているのに?」
「……」
なにも言い返さないということは、その人物自身決めかね悩んでいるのかもしれない。自分が聞き得た情報は全てではなく、そこから予想される事柄は第三者である自分が口出しするべきでもないものだ。
「ただ僕は、後悔だけはしない道を選んでほしいと思ってます。今この瞬間にだって、相手がどうなるかなんて分からないのですから…」
「そう、だよね。ありがとう」
「いえ…出過ぎた事を言いました。では僕はこれで失礼します」
「うん、またね」
軽く一礼をし、美術準備室を出ると班乃は後ろを振り返った。
誰も居ない。
少なくとも自分には何も見えない。
だが、あの人にはこの何もない空間に、自分を心配している “ 彼女 ” の姿が見えているらしい。そんな根拠もない話など信じる質ではなかったが、以前信じる他ない出来事が起きた。
それからその人物は、“ 彼女 ” と自分との架け橋となっている。
「頼りなくてごめんな、楓…」
なにもない空気に無理やり作った笑みを向け届いているかすら分からない謝罪を口にすると、今度こそ班乃は教室へ向かうのだった。
それは、安積が来てからずっと聞いてみようかと思っていた事だった。
「すいません、もう1つ聞いても良いですか?」
「ぅん? 構わないよ?」
「ありがとうございます。この間、僕のクラスに “ 聖 ” って名前の転入生が来たんですけど」
「うん」
「知ってたんですか?」
「まぁね」
「あの子が、貴方が探してる子ですか?」
「…そうだね。でも俺には会わない方が良いんだよ」
「会いたがっているのに?」
「……」
なにも言い返さないということは、その人物自身決めかね悩んでいるのかもしれない。自分が聞き得た情報は全てではなく、そこから予想される事柄は第三者である自分が口出しするべきでもないものだ。
「ただ僕は、後悔だけはしない道を選んでほしいと思ってます。今この瞬間にだって、相手がどうなるかなんて分からないのですから…」
「そう、だよね。ありがとう」
「いえ…出過ぎた事を言いました。では僕はこれで失礼します」
「うん、またね」
軽く一礼をし、美術準備室を出ると班乃は後ろを振り返った。
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少なくとも自分には何も見えない。
だが、あの人にはこの何もない空間に、自分を心配している “ 彼女 ” の姿が見えているらしい。そんな根拠もない話など信じる質ではなかったが、以前信じる他ない出来事が起きた。
それからその人物は、“ 彼女 ” と自分との架け橋となっている。
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