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- 5章 -
-学園七不思議-
しおりを挟む…か? …さか? あさ…
「安積っ!」
「っ!?」
「急にボケッとして…どうしかしたか?」
「大丈夫? 聖ちゃん?」
「…あっ、あぁ、うん!大丈夫っ!ごめんごめんっ、なんでもないよっ!!」
頭を過った古い記憶。
あの人も、綺麗な青い瞳をしていた。
今、凄く会いたい人。
今、凄く謝りたい人。
今、凄くお礼をしたい人。
その為にこの学園に転校してきた。
「いきなりボッとして、話かけても返答ないからびっくりしたよ」
「どうした?具合でも悪いのか?」
「や、本当大丈夫っ!ごめんね、心配かけて! でも、凄く会ってみたいなぁ!撫子の君」
「嫌でもそのうち会えると思いますよー」
「っ会長!?」
いきなり現れいきなり会話に乱入してきた班乃に驚いた植野は一歩後退り胸に手を当てる。涼しそうに笑う班乃が少し憎たらしい…。
「かっ、会長も何気神出鬼没だよねっ!?」
「そうですか?学君は気付いてましたけど?」
「まぁ、向かい進行方向ですから」
今だに早い鼓動を押さえながら気付いてたなら教えてよと苦情をもらしたが、気付かないのが悪いと冷たく一蹴された。
「本当に、会えるかな?」
そんな夫婦漫才を華麗に無視した安積は、班乃へと真剣な視線を向け問いかける。
「会えない方が奇跡ですって。それに…っと、それより綾雪」
話を急に植野へと向け、至って楽しそうに言い放った。
「僕らは次の授業は教室なんで良いですけど、綾雪は次移動教室ですよね?」
「え?」
「予鈴、もう直ぐ鳴りますよ?」
班乃のセリフの語尾に被さるようにしてチャイムが鳴り響いた。
「やばっ、がっくん急ご…」
早く行かなければと鈴橋へ手を伸ばし振り向いた時にはすでに、先程まで彼がいたその場所は無人になっており伸ばした手が空しく空を舞った。
「では、失礼しますねー」
「えっと、頑張ってっ!!」
一人残され暫し呆然とその場に立ちすくんで居たが、教室から向けられる班乃の満面の笑顔になんとか泣き笑いを返した。今から走って多分間に合わない。教師に怒られる準備をしながら、それでも早足で移動教室へと向かうのだった。
そんな植野をしっかりと教室内から見送った班乃は、今度は疑うような表情で、安積へと視線を向けた。
それに…
先ほど言いかけた言葉。
言った方が良いのか明にはまだ分からないが…
きっと安積はあの人に会える。あの人が懐かしそうに語った人物。それはきっと安積に違いないだろう。
あの人は寂しそうに笑いながら幸せでいるならそれで良いと言って居たけど。
絶対会いたがっているはずだから。
会いたがっている同士がこんなに近くにいるのだ。会えない筈がない。
生きて居るのだから。
首から下げた鎖の下部分。
服に隠れた飾りがついているであろう箇所を軽く押さえた班乃は、小さくため息をついた。
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