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- 5章 -
-学園七不思議-
しおりを挟む「今日…に、撫子の君……ぞ」
「まじ?あの人……にして…」
「さぁ。でも……だから…じゃん?」
「まぁ、確かに…」
業間休み、トイレから出てきた安積の耳にそんな会話が飛び込んできた。
『撫子の君…って誰?』
まだ学園に来て日の浅い安積には撫子の君が誰なのか知るよしもなく、聞く間もなく噂話をしていた生徒達は教室へと消えていった。
疑問を抱えたまま授業を終えると早速聞いてみようと立ち上がるが、頼みの綱であった班乃は忙しそうにクラスの提出物を集めている。
邪魔をする訳にはいかないと教室を出ると、丁度隣の教室から出て来た鈴橋と鉢合わせ目を輝かせた。
「がっくんっ!ナイスタイミングっ!」
会うや否や、指ぱっちんして近づいて来る安積に心底嫌そうな顔をした鈴橋は逃げるように背を向けた。
「ちょぉーい! 無視は良くないよ無視はぁっ!?ちょっと待ってよがっくんっ!」
絶対逃すまいと即座に追いかけ見事捕獲に成功するが、振り返った顔に刻まれた深い深い眉間のしわに一瞬たじろく。
…が見なかった事にし、気を取り直して先程の会話を聞いてみた。
「あぁ…撫子の君」
「知ってるの!?」
「知ってると言うか…知らないと言うか…」
『知ってるけど知らない?』
一体どういう事だろうか?
顎に手を当て言葉を探しているような鈴橋の言葉を待っていると、ひょっこりと教室から姿を表した植野と目があう。手を上げると嬉しそうな笑みを浮かべ2人の元へと駆け寄ってくる。
「どうしたの、2人して?」
「がっくんがさ、知ってるけど知らないんだって」
「なにそれ通訳求むっ!!w」
今一要領の得ない返答に思わず苦笑した植野は鈴橋から事の経緯を聞くと、知ってるけど知らないという言葉に “ あー… ” と納得の声を上げる。
「確かに、知ってるけど知らないなぁ」
「綾までそれ?? どういう事?」
「撫子の君は、生徒でも教師でもない人で、よく美術準備室に出没する。いつもスケブを立てかけて、ずっと外を眺めてる変な人だよ」
「で、生徒誰一人もその人の声を聞いた事も顔を見た事もない。その人の事で分かる事と言ったら後ろ姿だけ。それがまた変わってて…」
「…変わってる?」
今の短い説明だけで、なにやらミステリーな匂い…ゴクリと生唾はを飲み込んだ安積は続く言葉を促した。
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