檳榔売りのアトリ

あべちか

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シーツの上で身をもぞもぞとよじりながら、アトリは息を乱していた。
ほとんど無意識に陰茎に手を伸ばすが、なんども自分でこすり上げすぎて、触れるだけで痛いような気さえして手をはなしてしまう。

それでも肉体の内側から沸き起こってくるもどかしさと、いままで感じたことのない淫靡な感覚にどうしていいかわらずに、ホークの名前を呼ぶ。

「アトリ」

ホークにはアトリの苦しさが手に取るように分かった。
かわいいアトリのそこは勃起しているのか腫れあがっているのかわからないほどの、つつましいふっくらとした姿だったが、それでも先ほど出した朝露のような射精からすぐに固くなっている。皮がむけて棗のように赤い先がちろちろと見えていて、ホークは思わず口に含んだ。

「きゃっ、ううう、あん!やっ、やあ!」

アトリは突然の刺激にびくびくと震える。
口の中でかわいがってやるたびに、アトリのそこは健気に反応を返す。けれども、媚薬のせいでこすりすぎたせいか、多少の痛みさえ感じ始めているようだった。

ほとんど初めて外気にふれるのではないかと思えるほど、初々しい先端に舌をつけると、声はより一層高くなる。ぐすぐすと泣きながら、アトリは太ももでホークの顔をむにむにと挟む。

その太ももの肌の柔らかさにホークは信じられない思いだったが、目の前の小ぶりな尻たぶを掴むとそこはさらに柔らかかった。

咥内で歯と舌でかわいがってやっている陰茎への刺激では、アトリはもう辛い。だがあの量の媚薬はまだアトリを解放してはくれないだろう。自分では解決できない体の奥の疼き。

それを思うと、ホークはごく自然に陰茎からそのしたのふっくらとした袋をなめ上げ、焼き立てのパンのような柔らかさの丘の奥に息づいている蕾に舌を這わせた。

「・・・っ!あ、あ、!」

「アトリ、俺を信じろ。大丈夫だから」

生まれて初めての感覚に震えるアトリ。
なだめるように話すホークをうるんだ瞳で見つめると、信じると決めたのかぎゅっと目をつむって枕を握り締めた。

「あ、アトリ、こわくないよ・・・ッ」

ぷるぷると震えるアトリがかわいらしかった。
これから何が自分の体に起こるのか、不安が全くないわけはないだろう。しかしアトリは裸体をホークに差し出して、怖くないと伝えた。ホークはそのことが嬉しくてたまらなかった。

「ごめんな、アトリ。すぐ気持ちよくしてやるからな」

「・・・え、きもちよくなるの?……っ、はあっん」

アトリをなだめている間に取り出した香油で指を濡らし、後ろのすぼまりにつぷ、と指を這わす。
つぷつぷと入り口を前後してみると、アトリのそこは震えながらも大胆に指を食い締めてくる。

「アトリ、いい子だな。力をぬいてるんだぞ」

「ほーく」

アトリに覆いかぶさって、ちゅ、と額に目じりにキスを落とす。とろん、と瞳がうるんだところに、ぐぬっと指を奥へ進める。

「・・・・・・・・・ッ、あ、入ってるうっ、アトリのおしりにッ」

「アトリ、大丈夫だ。集中するんだ、俺の指を感じてごらん。これは?」

「あ、あ、出ていくっ」

「そうだ、アトリはすごいな。なんて優秀な檳榔売りなんだろうな。これは?」

「入ってくるっ、あっ、あうう、ぐりぐりしてるっ」

「ぐりぐりもわかるのか、すごいじゃないか」

「ほんと?アトリ、えらい?おばかさんじゃないの?」

「ああ、本当だ。アトリはとっても優秀だ」

「えへへ」

アトリはだんだん怖くなくなってきたようで、ホークに笑いかける余裕ができた。
じっとホークを見上げた後、アトリからホークにふに、ふに、と柔らかいキスをする。

「アトリ・・・・」

ホークは自分のものが鉛のように重くなるのを感じた。
けれど怖がらせないように、ゆっくりとアトリの中のその場所を目指す。はあ、はあ、というお互いの息遣いが寝台に満ちる。

その一点を指の腹で探し当てたとき、アトリの体がびくっと震えた。

「やっ、あなに?!」

「アトリ、大丈夫。大丈夫だ。ここがアトリの気持ちいところだ。アトリのおちんちんはもう腫れてしまって痛いから、こっちで気持ちよくなろうな」

すりすりとそこを確かめるように指を前後させた後、ぐっと力強く押す。そうするとアトリはぎゅうっとホークに縋りついてくる。

「あ、ああ、っは、あ、んっ」

「アトリ」

ホークは我慢できずに自分のものを取り出す。アトリの柔らかいお尻にこすりつけながら、指はゆっくりとアトリのうしろをほぐしていく。

「あっ、ああっ、ホーク、ゆび、ふえたっ、ああう、ぐりぐり、おっきくなるうっ」

さっき指がどうなってるか言わせたせいか、アトリは律儀に後ろで感じることを口にした。指を増やしてそこをこすってやると、点のように感じていた快感が面に広がってより深く感じてしまったらしい。

震えるだけではなく、こしがよじれ始める。
もう3本もはいっているころには、すっかり後ろは快感をひろっていて、艶めかしくよじれる体に合わせて指をあつく締め付けたり緩めたりするようになっていた。

アトリの肉茎もせつないほどぴん、と立ち上がって震えていた。それを見るとホークのものも一層血が集まってくる。

「ホーク、ああっ、ん、ホークっ」

「アトリ?」

アトリがしがみつきながら呼びかけてくるので、ホークは少し手を休めた。ゆっくりと抜くと、アトリの後ろはいかないでというように食い締めてきた。

「あ・・・」

指が出ていく感触にさえアトリは感じていた。

「・・・・っ、アトリ?!」

ホークは驚いた。息を整えたかと思ったアトリが、今まで自分の首に縋りついてきた指先を、ホークの腰のものへと伸ばしてきたからだ。

うるんだ瞳でホークを見上げながら、アトリの指が竿を掴み、一生懸命にこするような動きをする。

「っく、アトリ、いい、手を離せ」

「でも、でもアトリのおちんちんがこうなった時辛かったのに、ホークのもおっきくて硬くなってて・・・。アトリもホークのこと助けたいよ・・・」

「アトリ・・・」

「あ、アトリね、ホークのお口に入れてもらったの、あったかくて気持ちよかったから、ホークのもアトリのお口にいれる?」

純粋に見上げてくるアトリ。
しかしその提案の中身はみだら過ぎて、ホークは目の前がくらくらしてしまいそうだった。

「アトリ・・・」

ホークは頭を悩ませながら、アトリの肩を掴む。そのすべらかな肌触りに喉がうなる。はあ、はあ、と息が上がっているアトリは媚薬の成分がまだまだ残っているはずで、体のうずきはつらいはずだった。

そっと押し倒すと、膝裏をすくって足を開かせ、十分にほぐれた奥のすぼまりから、とろとろと
香油が垂れている。

「じゃあ、二人で気持ちよくなろう。ここを使うんだ、いいか?アトリ?」

ホークの先がアトリの蕾にぴと、と充てられる。
アトリはうるんだ目でホークを見上げながら、うんとうなづいた。

「さっきの気持ちいいところ、ホークのおっきいのでぐにぐにするの?」

アトリは自分の言葉で、想像して感じてしまっていた。その証拠に可愛い陰茎がぴくぴくと震える。

「そうだ。アトリの気持ちいところと、俺の気持ちいところを一緒にこすってあげるんだ。そうしたら二人とも気持ちいいだろ?」

「ほんと?ホークも、気持ちいの?」

「本当だ。アトリ・・・・お前はやさしいな」

「ホーク・・・んっ、あ、あ、あ・・・ッ!」

腰をゆっくりと進めていくと、アトリの蕾は健気に広がって、素直に飲み込んでいった。その狭さときつさに、たまらないほどの締め付けがホークを襲い、おもわずぐっと顔を顰める。

アトリはぎゅっと目をつむりながら、頭の横でシーツを掴んで身をよじる。

「ぐっ、アトリっ」

ホークは腰を振ってしまいたくなるのを必死でこらえていた。今はアトリを気持ちよくしてやるのが先だからだ。後ろに感じるものの大きさに、受け入れるので一生懸命のアトリ。媚薬のせいでぴんと上を向いてしまっている可愛い陰茎を、後ろからの刺激で解放してやらなければいけない。

ずず、と腰を進めた先で、陰茎の雁首がアトリのその場所をずり、とかすめる。息を荒くしながらアトリを見ると、アトリは目を見開いて震えていた。

「はあっっ!ああっ!」

自分の身に何が起こっているのかわからないと言った表情で、アトリは口をあけて涙をこぼしながら喘いでいる。

「アトリ・・・」

なだめてやろうと、少し上体をかがめたときだった。

「・・・・あああああっ!だめ!」

アトリの花茎からぴゅっと白い蜜が飛び出す。

「はあっ、ん、ああ、でちゃっ・・た・・・っ」

額にかかる髪をかき上げてキスをする。そうするとより深く奥に入り込むが、射精の後の緩んだ体はびくびくと震えながら受け入れた。

「あん、はいって、くる」

「アトリ、えらいな。後ろだけで射精できた」

「んっ、アトリ、えらい?」

「ああ、えらい。とってもきれいだ」

ホークはアトリがまだまだみだらな熱に浮かされていることを、はっきりと感じた。なぜならアトリの奥まで納め切ったホークのものを、しゃぶりつくすように熱く締め付けてくるからだ。

もじもじとアトリが足や腰を動かし始める。

「ホーク、あのね、あのね」

あまりに可愛らしくて、ホークはアトリへのキスが止まらなかった。

「んっ、あっ、おっきくなって・・・っ」

「動いていいか?アトリ」

「うんっ、うんっ、動いてぇ」

「・・・っ」

一番奥にまでおさめると、お互いの肌がぴったりと触れ合う。アトリの柔らかい肌が陰嚢にあたり、こみ上げてくるものがある。

腰をひくと、アトリが甘い悲鳴を上げる。

「・・・・んっうう、ああん!」

アトリのそこをかすめると、アトリは一番きつくぎゅっと締め付ける。
それを感じるとホークは腰を引くのをやめ、またゆっくり壁をなぞるように突き入れる。

「・・・・・・・・・・ッ!」

アトリは入れられる方が好きなようで、言葉さえ出なかった。

一度、二度、三度とゆっくり、じれったいほどに繰り返すうちに、だんだんと腰を打ち付ける速度が無意識に早くなる。早くなると同時に、大胆な動きになってくる腰からは、重く甘い快感が登ってくる。

ぱちゅぱちゅと結合部と互いの肌とがぶつかる音が寝台に響くようになる。
アトリの陰茎はまたすっかり立ち上がっていて、腰のうごきにあわせてぴこぴこと揺れる。

しかしそんな営みのおかしみさえ、二人には関係がなかった。
互いの一番敏感なところをこすり合わせるという行為に夢中になっていたからだ。

今自分たちがどんな姿をしているのかなど、なんの興味もわかなかった。

「あっ、あっあっあっ」

「アトリ、アトリっ」

「ホークっうっ、んっ、あっ」

自然と互いの唇を合わせる。ホークがアトリの口の中に舌を入れると、アトリも必死でホークに応える。その間も絶えず腰は合わさり続ける。

枕の横でシーツを掴んでいたアトリの手を、ホークの大きな手が捕らえる。

打ち付けるように大きな動きになった腰に、アトリはまたより一層身をよじる。

「ああっ、あっ」

「・・・っ、、」

声が高く、よじる体の動きが激しくなってくる。
湧き上がる快感に我慢ができず、アトリもホークも、互いを深く飲み込もうと深い動きになる。

アトリの声につられて、ホークももう限界だった。
体躯の小さなアトリのことはすっかり頭から抜け落ち、ただただこの目の前の小鳥に自分の欲望をぶつけてしまいたかった。

「ああっ、でる、でちゃうっ」

「はあっ、アトリ、イクと言うんだっ」

「ホークっ、、いくっ、いっちゃうっ、ああああ!ああん!~~~~~あッッッ」

「っく」

びくっ、びくっと今までで一番強く体がはねる。
アトリの背中に腕を回し、抱きしめるようにしてホークもアトリの中に吐き出す。

ふう、ふうと肩で息をするアトリ。

「アトリ、頑張ったな」

こめかみにキスを落とすと、アトリは瞳を閉じながらふわりとわらったようだった。

ホークの腕は、アトリをいとおし気に抱きしめる。
背中に這わせた指先が、皮膚が固くなっている場所をなぞる。

「・・・・・・・・・・ひどい、傷だ」

ホークはアトリのことを、このままずっと抱きしめていたかった。


************************



「それで、何だ話とは」

月が照らす海の上で、西施は人と会っていた。
西施の持つ船に横づけされた小ぶりな船は、アトリのものとよく似ている。浮き木と呼ばれるものが船体のわきから出ている。

「檳榔売りがどこにいるのか知りたくはない?」

「なに?」

「あの島の檳榔売りがヤンバルにいるの。あなたたちの島にとってはとんでもない裏切りでしょう?」

男の仲間たちが気色ばむ。

「あいつら・・・ッ!檳榔売りを逃がしたのか!」

「だから殺すべきだったんだ!あいつらの命乞いなんて、耳を貸すべきじゃなかった!」

わめき始める仲間たちを、男は一喝して黙らせる。

「黙れ!」

「あらあら」

「それで、貴様に何の得がある。レスターヴァ人を手放しで信じるほど愚かではないぞ」

やはりここでも国の名前をもちだされて、西施は少しだけ瞳をそびやかした。

一瞬アトリのことが頭をよぎった。

「アトリ・・・・」

小さくつぶやく西施に、男は警戒を強める。

「言え!」

「船を貸してあげる」

「なんだと?」

「こんな小さな船じゃなくて、積み荷をたくさん積める良い船よ。私のみたいにね。交渉するには人手が必要でしょう?」

「・・・何が目的だ」

「そうね、ヤンバルに奴隷を返してもらいたいんでしょ、あなたたちは。それに約束を破った隣の島の連中に落とし前もつけさせたい。私はそのお手伝いをしてもいいわ。そう、あなたたちが私の荷物も一緒にヤンバルに要求してくれたらね」

「お前の荷物?」

「阿片よ。新しい通行証とかのせいでとられちゃったの」

島の漁師たちはにらみつけるように西施を見る。


「・・・・クズめ」


「私はね、自由に飛びたいの。そのためだったらなんだって売るわ」


生ぬるい夜風が吹き抜ける。

西施たちの船の間をすり抜けて、その風はヤンバルに向かって吹いていた。
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