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私がはじめて
しおりを挟む 俺とノエルがきつく抱き合いキスをしていると、何人かのドスの効いた声が重なって聞こえた。
「いつまでそうしてるつもり?」
俺は慌ててノエルから離れて周囲を見回すと、マユ、クレア、フィリス、アイリの四人が不機嫌そうな顔で俺を見ている。
アイリは目を吊り上げて責めるような口調だ。
「カイト、恋人が吹き飛ばされたのに放っておいて、その子を口説くなんてひどい! それだけじゃなくて長々とキスしてるし!」
「はい……、ごめんなさい」
クレアは目に涙をためてぼやく。
「カイト様はその人に夢中なんですね……」
「これは……その、クレアも今まで以上に可愛がるから!」
フィリスは柳眉を逆立て肩を震わせている。
「カイトの為と思って、わざわざこんなところまで付いて来たのに……、私はもう用済みかな?」
「いやいや! そんなわけないでしょ! フィリスの事も大好きだから!!」
マユは口元にうっすらと笑みを湛えつつ、凍える程の冷たい視線で俺を見つめている。
「ノエルに『なら』俺の命をあげてもいいって、どういう意味なのか説明して欲しいなぁ……?」
「えっ、やっ、それは、言葉のあやというか、何というか……。もちろんマユの為にだって命はかけられるよ!」
なんとも気まずい空気の中、ノエルは俺に抱き着いて甘えた声色で言い放つ。
「カイトは私さえいればいいよね? だってずっと一緒だったもん」
ヤバい、可愛い。でもそれじゃだめだ。
「ノエルも俺の夢を知ってるでしょ? たくさんの可愛い女の子に囲まれて楽しく暮らしたいんだよ」
「いい顔して言ってるけど、それ、クズ男の発言だよ。まぁいいわ。その子たちも一緒にいるのを許してあげる。でもカイトの一番は私だよね?」
それを聞いたマユはノエルに食って掛かる。
「フッ、あなたが一番? 笑わせないで! 私がカイトにとって初めての女だし」
すると今度はアイリがマユに食いついた。
「はぁ? カイトがこの世界に来て初めて好きになった女は私だけど?」
さらにクレアが顔を真っ赤にして続く。
「カイト様の裸を最初に見たのは私です!」
フィリスも負けじと口論に参加した。
「別に初めてだからって良いわけじゃ無いでしょ? 私だってカイトを好きな気持ちは負けないわ」
ノエルは腕を組んで四人を見下す。
「ふん、あなた達が何回カイトと体を重ねたかなんて問題じゃないわ。私なんてカイトがこの世界に転生した時に魂レベルで繋がっているんだから!」
アイリはそれでも負けずに言い返す。
「何言ってるか分かんないわよ? 大体、まだ体は繋がって無いんでしょ!?」
「そんなのはこれから何回でもヤればいいだけよ。あなた達と違って、私とカイトの絆だけは特別なの!」
誰が俺の一番なのかって五人の美少女たちが言い争っている。なんかとってもこそばゆい。思わずニヤついてしまうが、俺的にはみんなで仲良くしたいんだよね。
「誰が一番大事なんて決められないよ。だからみんなで仲良く楽しくしたいなー」
ノエルは軽く息を吐き頷く。
「まぁ、カイトがそう言うなら仕方ない」
「ありがと、ノエル。こんなところで話していないで、まずはダンジョンから出ようか」
マユ、クレア、フィリス、アイリは膨れっ面をしたり、眉をひくつかせたりと不満そうではあるが、ダンジョンから出るという部分は賛成のようで、この階層の入口に向かって歩き出した。
50階層に戻る階段を上っていると、視界がぐにゃりと曲がって気が付くと地上にいた。
おおっ、親切だな! 帰りは楽で良かった……。
神域から離れて、適当な空き地を見つけてアイテムボックスから自宅を取り出した。
レイナが屋敷を覆う結界に、認識阻害の効果を持たせてくれたおかげで、他人はこの屋敷を認識できないので安心だ。
屋敷に入り、リビングのソファーにドサリと体を預け、レイナが入れてくれたお茶を飲む。
はぁ、癒されるな。
マユがローテーブル上のクッキーを取りながら俺とノエルを見る。まだちょっと機嫌が悪そうだな……。
「それにしても、カイトとノエルが魂レベルつながってるってどういう意味なの?」
マユの問いにノエルは得意げに語りだした。
「私がカイトのスキルの一つだった、てのは前にカイトが説明したから知ってるわよね?」
マユ達四人は分かったような、分からないような顔でコクリと頷く。
「カイトがこの世界に転生してきた際に、女神によって私の魂はカイトの魂にインストールされたのよ。物知りさんというスキルとしてね」
マユは不思議そうに首を傾げる。
「そもそもノエルって何者なの?」
「私もカイトと同じ転生者。22年前に別の世界で病死してこの世界に転生したのよ」
ノエルは自身の過去を話し始めた。
* * *
前の世界では、私は病弱でずっと入院していた。自分の命をつなぐために多くの人の助けが必要なことを申し訳なく思っていた。
ある時、どこかも分からない場所で目が覚め、謎の美女に告げられた。
「あなたは死んでしまいました。でもがっかりしないで下さい! あなたはなんと異世界に転生する権利を得たのですー! 何か望みはありませんか?」
やけに明るく振る舞う絶世の美女。自身を女神だという彼女に望みを問われて、なんとも胡散臭いとは思いながらも、健康で強い体と多くの人を助ける力が欲しいと願った。
その結果、女神に人類最強の勇者として私の体が再構築され、勇者として多くの人を助けるために魔王と戦う使命を与えられた。
そしてこの世界で目覚めた私は、勇者としてモンスターの軍勢と必死に戦って、2年かけて魔王を追い詰め直接対峙することになった。
私と魔王の実力は拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていたけど、最期は私の聖剣が魔王の心臓を貫いた。
ところが死の間際の魔王から、自分も転生者であり自分たちは女神の娯楽の駒に過ぎないことを教えられた。
あの女神を野放しにしていたら、また多くの人々が苦しむ。そう考えた私は女神討伐を考えた。
神殿に伝わる伝承から天界への門の存在を知って、一人でティバンの森のダンジョン51階層にある天界への門を通り抜け、天界で女神に戦いを挑んだ。
女神との戦いは熾烈を極めた。私のすべてをぶつけて挑んだけど、一歩及ばず敗北し肉体と魂魄に分離されて記憶を封印されてしまった。
その20年後、ありとあらゆる事象が記録されている神の英知そのものである”ラプラスの記録”へのアクセス権を与えられカイトの魂にインストールされた。
カイトのスキル”物知りさん”としてラプラスの記録を見ながらカイトに助言をしていたけど、あるとき自分の存在に疑問を持ち自分のことを調べてみた。
それがきっかけで記憶が戻った私は、ラプラスの記録を使って自分の肉体を探しありかを見つけ出し、復活の手段も調べた。
さらに、破竹の勢いで強くなっていくカイトを殺せば、ラングザードの能力で私のレベルが大きく上がって女神を殺せるだろうと考えた。
罪のないカイトを殺すのはもちろん気が進まない。でもこの世界の大勢の人々の命と暮らしを守るためなら、おバカでスケベなカイト一人の犠牲は仕方ない――
* * *
「そう思っていたんだけど、カイトのモテモテスキルの強さは、私の精神力を凌駕していたみたい。スキルの力だと分かっているのに、カイトの事が愛しくてたまらなくなっちゃった」
愛しくてたまらないとか、ちょっと照れるな。
「だからカイトのこと殺すなんて無理。カイトを殺さなくても、みんなで力を合わせれば、女神も倒せるかもしれないし」
「どうしても女神を倒すの?」
「そうね、今となってはもうどうでもいいかも。この世界は魔王のいたころと比べると平和になっているから」
ノエルは「それよりも!」と、俺にきつく抱き着いて囁く。
「今夜は私と二人きりで過ごしてくれるわよね。なんたって、今まであなた達がイチャつく様子を、カイトの中でずっと見せつけられていたんだもの」
「うん、分かった。みんなもいい?」
俺は両手を合わせて頭を下げて頼み込むと、渋々と言った様子ではあるがみんな頷いてくれた。
Sランク級の美少女達が、俺の思うがままになるとは、本当に素晴らしい能力だ。
あの女神さまが、クソ女神系だったのは意外だが、素敵なスキルを授けてくれた事には深く感謝をしたのだった。
「いつまでそうしてるつもり?」
俺は慌ててノエルから離れて周囲を見回すと、マユ、クレア、フィリス、アイリの四人が不機嫌そうな顔で俺を見ている。
アイリは目を吊り上げて責めるような口調だ。
「カイト、恋人が吹き飛ばされたのに放っておいて、その子を口説くなんてひどい! それだけじゃなくて長々とキスしてるし!」
「はい……、ごめんなさい」
クレアは目に涙をためてぼやく。
「カイト様はその人に夢中なんですね……」
「これは……その、クレアも今まで以上に可愛がるから!」
フィリスは柳眉を逆立て肩を震わせている。
「カイトの為と思って、わざわざこんなところまで付いて来たのに……、私はもう用済みかな?」
「いやいや! そんなわけないでしょ! フィリスの事も大好きだから!!」
マユは口元にうっすらと笑みを湛えつつ、凍える程の冷たい視線で俺を見つめている。
「ノエルに『なら』俺の命をあげてもいいって、どういう意味なのか説明して欲しいなぁ……?」
「えっ、やっ、それは、言葉のあやというか、何というか……。もちろんマユの為にだって命はかけられるよ!」
なんとも気まずい空気の中、ノエルは俺に抱き着いて甘えた声色で言い放つ。
「カイトは私さえいればいいよね? だってずっと一緒だったもん」
ヤバい、可愛い。でもそれじゃだめだ。
「ノエルも俺の夢を知ってるでしょ? たくさんの可愛い女の子に囲まれて楽しく暮らしたいんだよ」
「いい顔して言ってるけど、それ、クズ男の発言だよ。まぁいいわ。その子たちも一緒にいるのを許してあげる。でもカイトの一番は私だよね?」
それを聞いたマユはノエルに食って掛かる。
「フッ、あなたが一番? 笑わせないで! 私がカイトにとって初めての女だし」
すると今度はアイリがマユに食いついた。
「はぁ? カイトがこの世界に来て初めて好きになった女は私だけど?」
さらにクレアが顔を真っ赤にして続く。
「カイト様の裸を最初に見たのは私です!」
フィリスも負けじと口論に参加した。
「別に初めてだからって良いわけじゃ無いでしょ? 私だってカイトを好きな気持ちは負けないわ」
ノエルは腕を組んで四人を見下す。
「ふん、あなた達が何回カイトと体を重ねたかなんて問題じゃないわ。私なんてカイトがこの世界に転生した時に魂レベルで繋がっているんだから!」
アイリはそれでも負けずに言い返す。
「何言ってるか分かんないわよ? 大体、まだ体は繋がって無いんでしょ!?」
「そんなのはこれから何回でもヤればいいだけよ。あなた達と違って、私とカイトの絆だけは特別なの!」
誰が俺の一番なのかって五人の美少女たちが言い争っている。なんかとってもこそばゆい。思わずニヤついてしまうが、俺的にはみんなで仲良くしたいんだよね。
「誰が一番大事なんて決められないよ。だからみんなで仲良く楽しくしたいなー」
ノエルは軽く息を吐き頷く。
「まぁ、カイトがそう言うなら仕方ない」
「ありがと、ノエル。こんなところで話していないで、まずはダンジョンから出ようか」
マユ、クレア、フィリス、アイリは膨れっ面をしたり、眉をひくつかせたりと不満そうではあるが、ダンジョンから出るという部分は賛成のようで、この階層の入口に向かって歩き出した。
50階層に戻る階段を上っていると、視界がぐにゃりと曲がって気が付くと地上にいた。
おおっ、親切だな! 帰りは楽で良かった……。
神域から離れて、適当な空き地を見つけてアイテムボックスから自宅を取り出した。
レイナが屋敷を覆う結界に、認識阻害の効果を持たせてくれたおかげで、他人はこの屋敷を認識できないので安心だ。
屋敷に入り、リビングのソファーにドサリと体を預け、レイナが入れてくれたお茶を飲む。
はぁ、癒されるな。
マユがローテーブル上のクッキーを取りながら俺とノエルを見る。まだちょっと機嫌が悪そうだな……。
「それにしても、カイトとノエルが魂レベルつながってるってどういう意味なの?」
マユの問いにノエルは得意げに語りだした。
「私がカイトのスキルの一つだった、てのは前にカイトが説明したから知ってるわよね?」
マユ達四人は分かったような、分からないような顔でコクリと頷く。
「カイトがこの世界に転生してきた際に、女神によって私の魂はカイトの魂にインストールされたのよ。物知りさんというスキルとしてね」
マユは不思議そうに首を傾げる。
「そもそもノエルって何者なの?」
「私もカイトと同じ転生者。22年前に別の世界で病死してこの世界に転生したのよ」
ノエルは自身の過去を話し始めた。
* * *
前の世界では、私は病弱でずっと入院していた。自分の命をつなぐために多くの人の助けが必要なことを申し訳なく思っていた。
ある時、どこかも分からない場所で目が覚め、謎の美女に告げられた。
「あなたは死んでしまいました。でもがっかりしないで下さい! あなたはなんと異世界に転生する権利を得たのですー! 何か望みはありませんか?」
やけに明るく振る舞う絶世の美女。自身を女神だという彼女に望みを問われて、なんとも胡散臭いとは思いながらも、健康で強い体と多くの人を助ける力が欲しいと願った。
その結果、女神に人類最強の勇者として私の体が再構築され、勇者として多くの人を助けるために魔王と戦う使命を与えられた。
そしてこの世界で目覚めた私は、勇者としてモンスターの軍勢と必死に戦って、2年かけて魔王を追い詰め直接対峙することになった。
私と魔王の実力は拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていたけど、最期は私の聖剣が魔王の心臓を貫いた。
ところが死の間際の魔王から、自分も転生者であり自分たちは女神の娯楽の駒に過ぎないことを教えられた。
あの女神を野放しにしていたら、また多くの人々が苦しむ。そう考えた私は女神討伐を考えた。
神殿に伝わる伝承から天界への門の存在を知って、一人でティバンの森のダンジョン51階層にある天界への門を通り抜け、天界で女神に戦いを挑んだ。
女神との戦いは熾烈を極めた。私のすべてをぶつけて挑んだけど、一歩及ばず敗北し肉体と魂魄に分離されて記憶を封印されてしまった。
その20年後、ありとあらゆる事象が記録されている神の英知そのものである”ラプラスの記録”へのアクセス権を与えられカイトの魂にインストールされた。
カイトのスキル”物知りさん”としてラプラスの記録を見ながらカイトに助言をしていたけど、あるとき自分の存在に疑問を持ち自分のことを調べてみた。
それがきっかけで記憶が戻った私は、ラプラスの記録を使って自分の肉体を探しありかを見つけ出し、復活の手段も調べた。
さらに、破竹の勢いで強くなっていくカイトを殺せば、ラングザードの能力で私のレベルが大きく上がって女神を殺せるだろうと考えた。
罪のないカイトを殺すのはもちろん気が進まない。でもこの世界の大勢の人々の命と暮らしを守るためなら、おバカでスケベなカイト一人の犠牲は仕方ない――
* * *
「そう思っていたんだけど、カイトのモテモテスキルの強さは、私の精神力を凌駕していたみたい。スキルの力だと分かっているのに、カイトの事が愛しくてたまらなくなっちゃった」
愛しくてたまらないとか、ちょっと照れるな。
「だからカイトのこと殺すなんて無理。カイトを殺さなくても、みんなで力を合わせれば、女神も倒せるかもしれないし」
「どうしても女神を倒すの?」
「そうね、今となってはもうどうでもいいかも。この世界は魔王のいたころと比べると平和になっているから」
ノエルは「それよりも!」と、俺にきつく抱き着いて囁く。
「今夜は私と二人きりで過ごしてくれるわよね。なんたって、今まであなた達がイチャつく様子を、カイトの中でずっと見せつけられていたんだもの」
「うん、分かった。みんなもいい?」
俺は両手を合わせて頭を下げて頼み込むと、渋々と言った様子ではあるがみんな頷いてくれた。
Sランク級の美少女達が、俺の思うがままになるとは、本当に素晴らしい能力だ。
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