嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま

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お買い物  挿絵有

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 俺とベネットは、ショッピングモールという大型商業施設に来ている。



 広大な敷地に建造された三階建ての建物で、広い建物の内部には複数の店舗があり、明るく清潔感に溢れている。

 いつも大勢の人でにぎわっており、買い物客の年齢層も幅広い。家族連れやカップルはもちろんのこと、老夫婦や女性グループもいる。

 こういった施設の建設には、とある一人の男が絡んでいるとされる。

 その男は40年ほど前、俺が生まれる少し前に突如として現れ、この世界を改革していったとされる。
 彼の活躍は、伝説として語り継がれており、この国に住むものなら誰もが知っている。いうなれば英雄だ。

 言い伝えによると、冒険者に登録した当初は、剣の持ち方も分からなければ、魔法の使い方も分からなかったらしい。

 ところが彼は強力な特殊能力を持っており、ありえない程の急成長を遂げ、異例の速さでSランク冒険者に駆け上がったという。最終的にはSランクモンスターすら、ソロで倒したと伝えられている。

 また、この世界に無い文化や知識を急激に広めていったという。トランプやリバーシといった娯楽用の小物や、ショッピングモールや遊園地などの大型施設もそうだ。特に美味しい料理には強い執着があったようで、未知の料理を次々と創作したとも伝えられている。

 さらには戦争で混乱した国々を纏め上げ、今の統一国家を作り上げ王となった、まさに伝説の人物だ。人々は畏敬の念をもって「イセカイ王」と彼の事を呼んでいる。

 現在も王として君臨し続けているのだが、そんな超凄い人にもいろいろ噂があって、美しい妻を何人も娶っているだとか、何歳になるのかは分からないが、今も若々しい姿をしているだとか、人々はまことしやかに話していたりする。



 と、そんなことをベネットに話しながら歩いていると、今日の目当てのフロアについた

 女性向けの衣類を扱う店舗が多くある、オッサン一人ではなかなかに入りにくいゾーンだ。

 取り合えず目についた店に入る。すると、若い女性の店員さんが近寄ってきて俺に声を掛けた。

「いらっしゃいませ。本日は何をお探しでしょうか?」

「この子の服を買いに来たんだ。かわいいのを選んでやってくれ」

 俺はそう言って後ろにいたベネットを前に押し出す。

「かしこまりました」

「ベネット、俺はそこら辺をブラブラしているから、店員さんに色々選んでもらってくれ」

「えー、ウィルに確認して欲しいよー」

 ぷくっと頬を膨らまして抗議するベネット。なにコレ? 凄くかわいいんですけど。仕方ないので試着室の前で待つことにした。しばらく待っていると、着替えを終えたベネットが出てきた。

 ベネットは両手を軽く開いて自分の格好を見せるようにクルリと回った後、スカートの一部を持ち上げて「どう?」と微笑みを向ける。

 その服は白を基調としたワンピースで、フリルがふんだんにあしらわれており、かわいらしいものだった。



 短めのスカートから覗く太ももが、オジサンの性癖に強烈に突き刺さる。俺がベネットのかわいい姿をガン見していると、彼女は俺に歩み寄ってきて「なんか言ってくれないと寂しいなー」と上目遣いで俺を見る。

「ああ、悪い。似合ってるよ。あまりのかわいさに見惚れてた」

 正直に感想を言うと、ベネットの顔はパァッと花が咲いたような笑顔になって、俺に抱きついてきた。柔らかい感触が押し付けられる。

「あれ? ウィルのここが元気になってる。またくれるの?」

「や、ああ。また今夜な」

 その後も何着か服を買い、下着や靴も一通り購入した。



 必要な物も買えたので、ショッピングモールを後にして拠点にしている宿に向かっている。俺の両手には買い物袋があり、その中には買ったばかりのベネットの服が入っている。

「なんで元の黒い装束に着替えたんだ? かわいい服のままで良かったのに」

「それは……」

 言いごもるベネット。俺が疑問に思っていると、騎士たちが次々と現れ俺たちを包囲した。

 円を組んで囲う騎士たちを、何事かと見ていると隊長っぽい騎士が前に出てきた。

「Bランク冒険者のウィルだな? お前がSランクモンスターのブラッディマッシュを不法に飼育しているとの密告があった」

 あの女パーティーの赤髪リーダー格が騎士団に密告しやがったのか。くそ、やっぱりあの時殺しておくべきだったか。後悔しても仕方ない。この場をどう切り抜けるか……?

 俺が考えを巡らせていると、一人の騎士が声を上げる。

「鑑定魔法、結果が出ました。そこの女がブラッディマッシュです。まだ成体ではありませんが、現時点でAランクモンスター相当の強さです!!」

 その報告を受けて、騎士たちが騒めき、隊長騎士の表情も緊張感が増した。

 幸いなことに、この場に騎士団長はいない。ベネットが本気を出せば勝てるだろう。かといって騎士を皆殺しにするわけにもいかない。

 チラリとベネットを見ると、彼女は両手を上げて隊長騎士に近寄っていく。

「大人しく投降するよ。それでいいんでしょ? そのかわりウィルには手を出さないでね」

「おい! ベネット!」

 俺の呼びかけにベネットは「大丈夫だから心配しないで」と微笑む。観念したというわけでは無さそうだが、何か考えがあるんだろうか……?
 隊長騎士は厳しい表情のまま手錠を取り出す。

「よし、連行しろ」

 ベネットは後ろ手に魔力を封印する魔道具の手錠をはめられ、そのまま連れていかれた。
 俺はその場から動くことも出来ず、ただ呆然と騎士団が去って行くのを眺めていた。
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