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復讐してやる 挿絵有
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朝の光で目が覚めた。俺はベッドから起き上がり、背伸びをする。人の気配を感じ「ベネット、おはーよさん」と声を掛けそちらを見た。
ところがそこに立っていたのは、煌めくオーラがあふれ出る、信じられないほどの美女だった。あの美少女パーティー四人の、誰よりも綺麗でナイスなスタイルだった。
「だ、誰!?」
「ベネットだよ」
「はぁ!?」
「襲撃してきた女を喰ったでしょ? だから女にも擬態できるようになったんだよ」
「ほぅ……」
「ウィルはさぁ、女が好きだよね? いつもウィルの考えていることを、菌糸で探ってたから知ってるよ。ウィルには私の事をもっと好きになって欲しいから、女の姿になったんだよ」
「そ、そうか……」
俺が呆けて口を開けていると、ベネットは続ける。
「ウィルの記憶にある、好みのタイプの女の容姿を分析して再現してみたんだけど、どうかな?」
「どうって、そら、お前……」
女の子の綺麗な声に変っている。俺が動揺し声を出せないでいると、ベネットは腕を上げ手のひらを俺の頬にあてた。
「フフッ、ウィルがドキドキしてるのが分かる」
「お前、今も俺の頭の中を探ってるな?」
「うん。ウィルがドキドキしてるのを感じたら、なんだか私も体の芯が熱くなってきちゃった」
頬を赤らめてそう言うベネット。このままでは、おかしくなってしまいそうだ。
「飯行くぞ、飯!」
俺はベネットから逃れるように離れて、食堂に向かった。
食堂では女将さんや従業員、それに冒険者たちが複数いた。
しまった、ベネットが女に変わっていたら怪しまれる。と思ったが、女将さんに特に変わった様子もなく、普通に挨拶を交わした。周りを見ても誰も気にしていないようだ。俺が不思議に思っていると、ベネットが俺の肩を指でつつく。
「昨日私の姿を見た人の、認識を書き換えているから大丈夫!」
認識を書き換える? 何でもありだなこいつ。まぁ今更だ。俺は考えるのをやめて席に着き、ニコニコと微笑む美少女と朝食を済ませた。
街を歩いていると、今日はやけに視線を感じる。正確には俺にではなく、ベネットにだが。
ベネットは、昨日の女が着ていた黒い装束を着ている。せっかく美人に擬態しているのだから、服を買ってやりたいところだが金がない。今日は割のいいクエストをこなしたいところだ。
冒険者ギルドに到着し、受付に行って手ごろなクエス卜は無いか尋ねると、受付嬢は依頼書の一枚を取り出して見せてくれた。
家畜を襲うブラックウルフの討伐クエストか……。群れで行動する魔獣なので、ソロでは面倒な相手だが、ベネットがいれば余裕だろう。俺はそのクエストを受け、クエストを発注した村に向かうことにした。
街を出て、誰もいない山道を二人並んで歩く。ベネットは何故か楽しそうに微笑んでいる。
しばらく歩いていると「そこの二人、待ちなさい!」と後ろから女の声で呼び止められた。振り返ると三人の美少女がいた。例のパーティーだな。あの感じだと、金を返しに来たってわけじゃなさそうだが……。
「ああ、お前たちか。金は用意できたのか?」
俺の問いかけは当然のようにスルーし、赤い髪のリーダー格が鋭い目つきで俺を睨む。
「シンシアをどうしたの!?」
「シンシア? 誰だそれ?」
「とぼけないで! 昨夜あなたの部屋に言ったでしょ!?」
「ああ、あの茶髪の……。ってか、俺、お前たちの名前知らないんだけど」
「くっ、そんなことはどうでもいいわよ! シンシアをどうしたの!?」
「どうって、俺を殺しに来たから、返り討ちにした」
赤髪リーダー格は目を見張る。
「まさか、殺したんじゃ……?」
「だから、殺されそうになったから、返り討ちにした」
赤い髪のリーダー格は、ものすごい形相で俺を睨む。
「許せない!」
何が許せないだ。俺から金を奪って殺そうとしたくせに。睨みつけてやりたいのはこっちだよ。まったく。
「そんな事よりも、早く金返せよ」
俺の言葉はスルーし、赤髪サイドテールの子が前に出て俺を指差す。
「今日はあのブラッディマッシュを連れていないじゃない。逃げられたの? あれさえいなければ、私たちがあんたごときに負けたりしない!」
威勢がいいねぇ、ブラッディマッシュならここにいるけどな。俺は美女の姿をしたブラッディマッシュをチラリと見て肩をすくめる。
赤髪サイドテールが剣を抜き、声を上げる。
「お姉ちゃん、私にシンシアの敵を討たせて!」
「ラーナ、私とヘレンでアシストする! 油断しないで!」
赤髪リーダー格と紫髪が魔法を発動。身体強化魔法を受けて、赤髪サイドテールの体がオレンジ色の光に包まれる。
「ブレイブ・カンティアス!」
おーおー、技名なんぞ叫んで。若いねぇ。
赤髪サイドテールが力強く地面を蹴って突進し、斬りかかってきた。
横薙ぎを後ろに引いて躱すと、勢いそのままに一回転しつつ下段から切り上げる。俺はそれを、再度後ろに跳んで回避する。
赤髪サイドテールは鬼気迫る表情で、逃がさないとばかりに連撃を浴びせてくるが、そのすべてを俺は最小の動きで避けていく。
どうよ、おじさんも結構やるだろ? などと考えていると、ベネットが念話で「しゃがんで!」と警告する。咄嵯に身を屈めると頭上を勢いよく石弾が通り過ぎて行った。
紫髪のストーンバレットか。あっぶな。ベネットに「助かった」と視線を送った後、赤髪サイドテールに向いた。
赤髪サイドテールは、鋭い目つきで剣を構え直す。俺は間合いを保ちつつ話しかけた。
「お前らさぁ、俺から金奪って殺そうとして、罪悪感とか無いわけ?」
「無いわね。あんたみたいなキモくてエロいオッサンなんかが大金持ってても、酒飲んで娼館に通うだけでしょ!? 私たちが有効に使ってあげるんだから、感謝して欲しいくらいだわ!!」
いろいろと突っ込みたいところもあるが、多分無駄だろう。根っこの部分で価値観にズレがある。
これ以上話しても意味は無いだろう。そもそも殺す気で攻撃してくる奴に、手加減してやる必要なんてないはずだ。
「そっちがやる気なんだ、殺されても文句は無いよな?」
「出来るものならやって見なさい! 武器も持たずに、さっきから避けてばかりじゃない!」
「ベネット、こいつも喰っていいぞ」
ベネットから素早く菌糸が伸びて、赤髪サイドテールは一瞬で喰われて消え失せた。
装備品のみが残り、髪の毛の一本も残らないその様子を見て、俺はいたたまれなくなり目を背けた。
「返り討ちとはいえ、やっぱり若者の未来を奪うのは、気分が良くないな……」
つい、ため息が出てしまう。
「まさか……、その女、ブラッディマッシュなの?」
驚愕し、膝をつく赤髪リーダー格。
「そうだ、今は人間に擬態している。俺もむやみに殺したいわけじゃないんだ。退け」
「おのれー! ラーナまで! ブチ殺してやる!!」
紫髪は発狂したかのように大声で叫び、魔力を練り上げ魔法を構築している。赤髪リーダー格は「待ちなさい!」と制止するが、あの様子では聞こえてないな。
「あいつも喰っていいぞ」
俺が紫髪を指差すと、菌糸が伸びて紫髪を包み込む。菌糸が解かれた後には、やはり装備品だけが残され、紫髪の姿は消えていた。
「お前一人になっちまったな。どうする、まだやるか?」
歯を食いしばり涙を流す赤髪リーダー格。
「よくも私の大切な仲間を……。必ず復讐してやる。覚えていなさい」
静かにそう言うと、転移の宝珠を使ってその場を去って行った。
復讐って言われてもなぁ……。そもそも、最初に金を奪われてボコられたのは俺だよ? さらに殺しに来たから返り討ちにしただけだろ? なんでこんな気分にならにゃならんのだ?
考えていても仕方ないので、さっさとクエストを終わらせてくるか。ブラックウルフの群れなんぞ、ベネットの餌以外の何物でもない。どうせ楽勝でしょ……。
その後、クエストを無事終了し街に戻っても、気分は重く、ため息が止まらなかった。
ところがそこに立っていたのは、煌めくオーラがあふれ出る、信じられないほどの美女だった。あの美少女パーティー四人の、誰よりも綺麗でナイスなスタイルだった。
「だ、誰!?」
「ベネットだよ」
「はぁ!?」
「襲撃してきた女を喰ったでしょ? だから女にも擬態できるようになったんだよ」
「ほぅ……」
「ウィルはさぁ、女が好きだよね? いつもウィルの考えていることを、菌糸で探ってたから知ってるよ。ウィルには私の事をもっと好きになって欲しいから、女の姿になったんだよ」
「そ、そうか……」
俺が呆けて口を開けていると、ベネットは続ける。
「ウィルの記憶にある、好みのタイプの女の容姿を分析して再現してみたんだけど、どうかな?」
「どうって、そら、お前……」
女の子の綺麗な声に変っている。俺が動揺し声を出せないでいると、ベネットは腕を上げ手のひらを俺の頬にあてた。
「フフッ、ウィルがドキドキしてるのが分かる」
「お前、今も俺の頭の中を探ってるな?」
「うん。ウィルがドキドキしてるのを感じたら、なんだか私も体の芯が熱くなってきちゃった」
頬を赤らめてそう言うベネット。このままでは、おかしくなってしまいそうだ。
「飯行くぞ、飯!」
俺はベネットから逃れるように離れて、食堂に向かった。
食堂では女将さんや従業員、それに冒険者たちが複数いた。
しまった、ベネットが女に変わっていたら怪しまれる。と思ったが、女将さんに特に変わった様子もなく、普通に挨拶を交わした。周りを見ても誰も気にしていないようだ。俺が不思議に思っていると、ベネットが俺の肩を指でつつく。
「昨日私の姿を見た人の、認識を書き換えているから大丈夫!」
認識を書き換える? 何でもありだなこいつ。まぁ今更だ。俺は考えるのをやめて席に着き、ニコニコと微笑む美少女と朝食を済ませた。
街を歩いていると、今日はやけに視線を感じる。正確には俺にではなく、ベネットにだが。
ベネットは、昨日の女が着ていた黒い装束を着ている。せっかく美人に擬態しているのだから、服を買ってやりたいところだが金がない。今日は割のいいクエストをこなしたいところだ。
冒険者ギルドに到着し、受付に行って手ごろなクエス卜は無いか尋ねると、受付嬢は依頼書の一枚を取り出して見せてくれた。
家畜を襲うブラックウルフの討伐クエストか……。群れで行動する魔獣なので、ソロでは面倒な相手だが、ベネットがいれば余裕だろう。俺はそのクエストを受け、クエストを発注した村に向かうことにした。
街を出て、誰もいない山道を二人並んで歩く。ベネットは何故か楽しそうに微笑んでいる。
しばらく歩いていると「そこの二人、待ちなさい!」と後ろから女の声で呼び止められた。振り返ると三人の美少女がいた。例のパーティーだな。あの感じだと、金を返しに来たってわけじゃなさそうだが……。
「ああ、お前たちか。金は用意できたのか?」
俺の問いかけは当然のようにスルーし、赤い髪のリーダー格が鋭い目つきで俺を睨む。
「シンシアをどうしたの!?」
「シンシア? 誰だそれ?」
「とぼけないで! 昨夜あなたの部屋に言ったでしょ!?」
「ああ、あの茶髪の……。ってか、俺、お前たちの名前知らないんだけど」
「くっ、そんなことはどうでもいいわよ! シンシアをどうしたの!?」
「どうって、俺を殺しに来たから、返り討ちにした」
赤髪リーダー格は目を見張る。
「まさか、殺したんじゃ……?」
「だから、殺されそうになったから、返り討ちにした」
赤い髪のリーダー格は、ものすごい形相で俺を睨む。
「許せない!」
何が許せないだ。俺から金を奪って殺そうとしたくせに。睨みつけてやりたいのはこっちだよ。まったく。
「そんな事よりも、早く金返せよ」
俺の言葉はスルーし、赤髪サイドテールの子が前に出て俺を指差す。
「今日はあのブラッディマッシュを連れていないじゃない。逃げられたの? あれさえいなければ、私たちがあんたごときに負けたりしない!」
威勢がいいねぇ、ブラッディマッシュならここにいるけどな。俺は美女の姿をしたブラッディマッシュをチラリと見て肩をすくめる。
赤髪サイドテールが剣を抜き、声を上げる。
「お姉ちゃん、私にシンシアの敵を討たせて!」
「ラーナ、私とヘレンでアシストする! 油断しないで!」
赤髪リーダー格と紫髪が魔法を発動。身体強化魔法を受けて、赤髪サイドテールの体がオレンジ色の光に包まれる。
「ブレイブ・カンティアス!」
おーおー、技名なんぞ叫んで。若いねぇ。
赤髪サイドテールが力強く地面を蹴って突進し、斬りかかってきた。
横薙ぎを後ろに引いて躱すと、勢いそのままに一回転しつつ下段から切り上げる。俺はそれを、再度後ろに跳んで回避する。
赤髪サイドテールは鬼気迫る表情で、逃がさないとばかりに連撃を浴びせてくるが、そのすべてを俺は最小の動きで避けていく。
どうよ、おじさんも結構やるだろ? などと考えていると、ベネットが念話で「しゃがんで!」と警告する。咄嵯に身を屈めると頭上を勢いよく石弾が通り過ぎて行った。
紫髪のストーンバレットか。あっぶな。ベネットに「助かった」と視線を送った後、赤髪サイドテールに向いた。
赤髪サイドテールは、鋭い目つきで剣を構え直す。俺は間合いを保ちつつ話しかけた。
「お前らさぁ、俺から金奪って殺そうとして、罪悪感とか無いわけ?」
「無いわね。あんたみたいなキモくてエロいオッサンなんかが大金持ってても、酒飲んで娼館に通うだけでしょ!? 私たちが有効に使ってあげるんだから、感謝して欲しいくらいだわ!!」
いろいろと突っ込みたいところもあるが、多分無駄だろう。根っこの部分で価値観にズレがある。
これ以上話しても意味は無いだろう。そもそも殺す気で攻撃してくる奴に、手加減してやる必要なんてないはずだ。
「そっちがやる気なんだ、殺されても文句は無いよな?」
「出来るものならやって見なさい! 武器も持たずに、さっきから避けてばかりじゃない!」
「ベネット、こいつも喰っていいぞ」
ベネットから素早く菌糸が伸びて、赤髪サイドテールは一瞬で喰われて消え失せた。
装備品のみが残り、髪の毛の一本も残らないその様子を見て、俺はいたたまれなくなり目を背けた。
「返り討ちとはいえ、やっぱり若者の未来を奪うのは、気分が良くないな……」
つい、ため息が出てしまう。
「まさか……、その女、ブラッディマッシュなの?」
驚愕し、膝をつく赤髪リーダー格。
「そうだ、今は人間に擬態している。俺もむやみに殺したいわけじゃないんだ。退け」
「おのれー! ラーナまで! ブチ殺してやる!!」
紫髪は発狂したかのように大声で叫び、魔力を練り上げ魔法を構築している。赤髪リーダー格は「待ちなさい!」と制止するが、あの様子では聞こえてないな。
「あいつも喰っていいぞ」
俺が紫髪を指差すと、菌糸が伸びて紫髪を包み込む。菌糸が解かれた後には、やはり装備品だけが残され、紫髪の姿は消えていた。
「お前一人になっちまったな。どうする、まだやるか?」
歯を食いしばり涙を流す赤髪リーダー格。
「よくも私の大切な仲間を……。必ず復讐してやる。覚えていなさい」
静かにそう言うと、転移の宝珠を使ってその場を去って行った。
復讐って言われてもなぁ……。そもそも、最初に金を奪われてボコられたのは俺だよ? さらに殺しに来たから返り討ちにしただけだろ? なんでこんな気分にならにゃならんのだ?
考えていても仕方ないので、さっさとクエストを終わらせてくるか。ブラックウルフの群れなんぞ、ベネットの餌以外の何物でもない。どうせ楽勝でしょ……。
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