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ファンタジーな異世界に召喚されたら銀髪美少女が迫ってくるんだが?

98.レベル測定

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 街を囲っている外壁には、トンネル状の入り口がある。

 トンネル内には数名の騎士が立ってはいたが、特に止められることも無く素通り出来た。トンネルを抜けるとファンタジーな街並みが広がっていた。

 ガロードが運転する車は片側3車線の大通りを走っている。

「ここは港町ニルムダール。王都ほどではないけど賑わっている街よ」

 リセリアが街の名前を教えてくれた。俺は車内から外の様子をあちこち見回した。人通りが多く、車も多く走っている。何よりこの雰囲気はマンガやアニメでおなじみのファンタジーな世界の……。

「本物の街だ」

 俺は思わず声を漏らしてしまった。

「はは、イツキは街を見るのが初めてなのか? 賑やかだろ」

 ガロードに軽く笑われてしまった。俺は「うん」と頷いておいた。ファンタジーな世界の街に実際に訪れるのは初めてだからな。 

「さっきのモンスターを討伐したことを報告する為に、冒険者ギルドに寄って行くよ」

 冒険者ギルドまであるのか……。俺もギルドカード的なものを作って貰えるのだろうか? 

 ガロードは駐車場に車を停めて「着いたぞ」と言うと車から降りた。ガロードに続いて、俺達は冒険者ギルドなる建物に入って行った。

 3階建ての建物の中は、正面にカウンターがあり受付嬢が座っている。これまた定番な風景なので、俺は嫌でもテンションが上がってしまう。ガロードがカウンターの女性に声を掛けモンスターの討伐完了を告げている。

「ガロードさん、レベル132のモンスターの反応が消滅しているのは確認しています。よく倒せましたね。モンスター討伐報酬が城から支給されています」

 受付嬢はトレイに乗せた紙幣の束をガロードに差し出す。紙幣か……、金貨、銀貨を期待していたが、重いしかさばるから仕方ないか。

「実はここにいるイツキが倒したんだ」

 ガロードはそう言うと、俺に紙幣を全部手渡そうとする。

「レベル132なんてのは、騎士団長が出張ってくるほどの厄災級のモンスターだ。正直、俺達では勝ち目は薄かった。イツキ達が現れなかったら俺達はきっと死んでいた。だから、この金はイツキが受け取ってくれ」

 この世界のお金の価値は全く分からないが、話の流れからするとかなりの大金なのではないだろうか? 俺は受け取りつつ聞いてみた。

「このお金って、どれくらいの価値があるんだろ?」 

「50万ルギー。この街で一年は遊んで暮らせる金額だ」

「え、そんな大金貰ってもいいの?」

「それはイツキの稼ぎだよ。それに私たちはこの辺では結構名のある冒険者で、お金には困っていないの。だから遠慮なく受け取ってね」

 リセリアは微笑みながら俺を諭す。断ってもなんか悪い気がするのでここは貰う事にする。

「分かった。ありがたく貰っておくよ」

 俺がお金を受け取るのを確認してからガロードが言う。

「イツキ、セフィリア、レベル測定してみないか?」

「面白そうだな、やってみる」

 やっぱり水晶玉とかに手を当てたりするのだろうか?

 受付のお姉さんは、カウンターの下から道具を取り出してリセリアに手渡した。

 ピストル型で、グリップの上部に小型のモニター、というか電卓の表示部分みたいなのが付いている。

「これがレベル測定器。計測したい人物に向けトリガーを引くとるとここに表示されるんだよ」

 リセリアは、表示部を指差し俺に言うと、ガロードが付け足して言う。

「この街の外壁の上から、これよりも遠くまで計測できる物を使って、常に街周辺のモンスターのレベルを計測しているんだ」

 なるほど、それで危険なモンスターが街に近づいている事が分かったのか。

 リセリアはレベル測定器を俺に向けて「じゃあ、測るよ」と言うので、俺は写真を撮るときのように固まる。

 リセリアはカチ、とトリガーを引いた。リセリアは目を見開いて、俺の顔と測定器の表示部を繰り返し交互に見ている。

「……イツキ、レベル204」

 リセリアは続いてレベル測定器をセフィリアに向けてトリガーを引く。

「セフィリア、レベル188」

「200を超えてるだって!? 故障か?」

 リセリアは声を上げるガロードにレベル測定器を向けてトリガーを引く。

「ガロードはレベル114。故障じゃないみたいね……。王宮騎士団最強の聖竜騎士団長レハタナ様でもレベル180くらいじゃなかった? それよりもレベルが高いなんて……」

 ガロードとリセリアは何やら驚いているが、どうやら俺はこの世界でもこそこ強いみたいだな。ここでアシストさんが助言してくれた。
 
「システムによる魂力の計測結果とガロードとリセリアの会話から、魂力に係数0.002を掛けるとこの世界の強さの指標であるレベルになると考えられます」

 魂力もレベルも同じなんだね。それにしても、あの人やっぱり騎士団で最強だったのか。とりあえず逃げておいて正解だったな。魂力は俺の方が高くても、実戦では剣技や魔法の技量、それに経験が勝敗を決めるはずだから。

 固有スキルの概念がこの世界にあるかは知らないけど、剣を構えたレハタナさんはとても強そうに感じた。次に会う時は揉めないように気を付けないとな。

 俺が考えこんでいると、ガロードとリセリアがさっきのモンスターとの戦いっぷりを振り返りつつ、俺を褒めちぎるので何ともこそばゆい。俺が苦笑いで受け流していると、カウンターの奥にある扉から、強面のスキンヘッドのおじさんが出てきた。あれはもしやギルドマスターでは!? そのおじさんは、ガロードに近づいて声を掛けた。

「ガロード、来ていたのか、ちょうどいい」

「漁業キルドから冒険者ギルドに討伐の依頼が入った。ニルムダール近海に強力な魔魚が出現した。レベルは124だ」

「またレベルが100を超えてるのかよ!? そんなの本来は騎士団の管轄だろ! 何で、次から次へと……」

 強面スキンヘッドおじさんと言葉を交わすと、先程まで朗らかだったガロードの表情は苦々しいものに変わる。俺は「何か問題が起きたの?」とガロードに問う。

「海に強い魔魚が発生すると、漁にも出られないし、交易船も滞ってしまう。早く討伐しなければいけないんだが……」

「今は騎士団に討伐を依頼しても、城はゴタゴタしてるからすぐに対応できないと返答されるらしい。城からは高額な報酬が支給されるが、レベル100を超えてる奴を討伐できる冒険者は極端に限られている」

 城がゴタゴタしてるのは俺のせいか? 迷惑をかけているのは後ろめたいな。

「その魔魚とやらを俺が倒そうか?」

 強面スキンヘッドは俺を見て鼻で笑う。

「なんだ見ない顔だな、新人冒険者か? お前が倒せるような相手じゃないぜ?」

 ガロードは強面スキンヘッドに語気を強めて言葉を返す。

「ギルマス、そんな言い方は無いだろ。イツキはレベル200超えてるし、レベル132のグレートリザードも倒したんだぞ」

「何だと!? なら魔魚を討伐してきてくれ」

 やはりギルマスだったのか。それにしても華麗なる手のひら返しだ。

 まぁ、騎士団が対応できない原因の一部は、俺のせいでもあるから倒して来るか。

 レベル124って事は、魂力6万程度だろうか? 油断しなければ、まぁ負けないだろう。

 俺達は冒険者ギルドを後にして、港へと向かうことにした。
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