上 下
87 / 119
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

88.恋人になれ

しおりを挟む
「何で……、ルイさんが……、ここに……?」

 俺は無意識に刀を握る手に力を入れ構えた。ルイさんは俺の様子を見ると、鼻で笑い指摘する。
 
「フッ、何でと言いつつ既に私を敵とみなしているじゃないか」

 確かに俺はルイさんが現れた瞬間に、敵だと確信してしまった。

「セフィリアの額に取り付けられていた魔導器……。あれは以前、結月と体を入れ替える体験をしたときに使った魔導器に似ていた。脳への入出力信号を操作する技術を流用したんですよね?」

「今まで誰も攻略できなかったはずのルエガート遺跡で見つかった、あの魔導器の技術を流用した物を、ピルロークが持っているのは妙だなと思っていた。でも、ルイさんとピルロークが繋がっていたのなら納得できる」

「ご明察だ。君は本当に聡いな」

「何でルイさんが、こんな事をするんですか!? わざわざセフィリアを誘拐させて、俺達が助けに行くように仕向けて、あの三人を攫ってまで……」

「君は強くなりすぎたんだ。いや、君がと言うより、君を慕うあの三人が、と言うべきか。君達四人がその気になれば地球もレジーナも壊滅させられる」

「俺はそんなことはしない!」

「だが、君も一人の人間だ。気分次第で世界のあり方を変えることが出来る程の力を有する個人は、脅威以外の何物でもない。あの三人は君に心酔している。どんな事でも君に従うだろうし、君の為なら何でもするだろうからな」

「だから俺を殺すとでも言うんですか?」

「いたし方あるまい」

「クッ……!」

 ルイさんは俺を睨みつけているわけでは無い。だが凍てつくほどの冷たい視線を俺に向けて淡々と口を動かしている。

「あの三人は記憶を改ざんして、私が大切に使うから心配しなくていいよ。君よりも素敵な男性と結ばれるようにもしてやろう」

「ふざけるな! そんな事、絶対にさせない!」

「絶対にさせない、か……。君なら彼女達を幸せにできるとでも?」

「君は元々久奈の事が好きだったんだろう? にもかかわらず次から次へと別の女の子に手を出して、久奈からすればたまったものではないよな? 君は久奈の事を何だと思っている?」

「久奈は俺の大事な人だ! 俺は、久奈の事を心の底から愛している!」

「なら結月はどうだ。彼女は美しく、剣術の才能に恵まれ、努力家だ。君よりもふさわしい男性が他にいるとは思わないか? 」

「そんなこと知るか! 結月は誰にも渡さない! 俺とずっと一緒にいるんだ!」

「……アサカはそもそも私の部下であり、家族のようなものだ。返してもらおうか?」

「今のアサカは俺のものだ! 俺が家族になるんだ!」

「ふん、我儘なガキだな。まあいい、君を消せばすべてが丸く収まる」

 黙って俺とルイさんとのやり取りを聞いていたセフィリアが口を開いた。

「社長! なぜイツキを殺す必要があるのですか? イツキが世界を脅かすような人物には到底見えません! むしろ私には……」

「セフィリアも樹の固有スキルに当てられてしまったんだな……」

 俺の固有スキルに当てられる? ルイさんが妙な事を口にするので、俺は思わず問いかける。

「何のことを言っているんですか?」

「君の固有スキルの能力の一つに、女性を魅了する能力がある、という意味だ。考えてもみろ、君の恋人はいずれも極めて優秀で、その上美しい。そんな女性達が三人も君のことを心から愛すなど、おかしいとは思わないのか?」

「あの三人が俺の事を好きなのは、俺の固有スキルのせいだって言いたいんですか? そんなバカな!」

「信じたくないか? そうだろうな。セフィリアも樹を処理した後に正気に戻してあげるよ」

 凍えるような目つきのまま言い放つルイさんに、セフィリアはアイテムストレージから大剣を取り出し突き付ける。

「社長……、私はイツキに付きます」

 あまりに意外なセフィリアの発言に、俺は「セフィリア……?」と呼びかけ視線を送る。

「今までは社長が私の全てでした。尊敬していたし、憧れていました。でも、こんなやり方でイツキを殺すのは納得できません!」

 まさかあのセフィリアがルイさんと敵対してまで、俺に付いてくれるとは思わなかった。

「セフィリア、ありがとう。でもルイさんとは俺が戦う。ピルロークを押さえていてくれ」

「分かった。……でも、あまり長くは持たないかも」

「なら俺の恋人になれ」

「はぁぁぁ!? こんな時に何言ってるの!?」

 セフィリアは顔を赤くしてうろたえる。

「俺の恋人になれば、俺の固有スキルの能力でバフが掛かる。この場を切り抜けたら解除する」

「あっ、ああ、そうなのね。分かったわ」

 セフィリアを恋人に設定すると念じる。アシストを通さなくても意志だけで可能なはずだ。

「セフィリア、どうだ?」

「温かくて力強い魔力が私の中に流れてくる……。これなら、やれるかもしれない」

「よし! ピルロークは任せた!」

 ピルロークはセフィリアに丸投げして、俺はルイさんに集中するか。

 訳の分からない理由で、大人しく殺されてやるつもりは無い。俺は刀を構え、ルイさんと対峙した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...