上 下
86 / 119
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

87.何でここに

しおりを挟む
 転移先は荒地だった。雑草がまばらに生えている殺風景な場所だ。ところどころにクレーター状の窪みや、亀裂などがある。久奈達が戦闘した後なのか? いや……、彼女たちが戦闘したならこの程度では済まないか……。

 男が三人立っている。シェイドとリヒトとダロスだな。シェイドは無駄に大きな声で俺に向かって怒鳴る。

「イツキ! 今日こそはお前を地獄に叩き落してやるぜ!」

 リヒトが無駄に格好を付けながら言う。

「ここは、我がパンドラの魔導機兵の性能試験を行う所です。ここなら私の力を存分に発揮できます。覚悟して下さい」

 ダロスが無駄に巨大な斧を肩に担いで柄を握っている。下卑た笑みを受かべ叫ぶ。

「イツキ! ここで決着をつけてやる!」

 いつものように飽きもせず戯言をのたまう三人。まったくもって下らない。俺は怒りに任せて三人に思い切りプレッシャーを叩きつけた。

「お前らと遊んでやる気はない!! さっさと久奈と結月とアサカを返せ!!」

 それだけで三人は膝から崩れ落ち、呼吸を荒げている。

 俺は魔刃の刀を一振りして斬撃を飛ばし、三人の男達が立っている所のすぐ前の地面を切り裂き抉り取った。土煙が上がりパラパラと砂や石の破片などが降ってくる。

「久奈と結月とアサカはどこだ?」

 男に遠慮してやることも無いので、思いっきり威圧して睨みつけてやった。三人はガクガク震えながら声も無く同じ方向を指差す。

 その方向に視線をやると、いくつかの建物が連なって建っている。

 セフィリアをチラリと見ると俺の事を真顔で見つめて、何かを呟いている。何か気に障っただろうか? でも怒られると時間がもったいないので知らん顔をして、その建物の方へ全速力で飛んだ。

(なんて圧倒的な……、まるで火山が爆発したかのような激しい威圧感だった。魂力9万を超えているというの本当だったのね。私よりも……強い男、か)



 俺が建物の並んでいるところまで着くと、セフィリアは俺の速度について来ることが出来なかったようだ。どうしよう、置いて行くのも悪いよな。早く助けに行きたいのになぁ……、少し悩んでいると、セフィリアが到着した。息を切らしているな、飛ぶのは苦手なのかな? 

「いきなり異常な速度で飛んで行かないでよ!」

 やっぱり怒られたので、俺は素知らぬ顔でスタスタと歩き出す。 

「また今度、暇なときに速く飛ぶコツを教えてあげるよ」

「そんなことを言ってるんじゃないわよ! あっ、コラ、待ちなさい!!」

 この子は本当にいつも怒っているよな。せっかく人並外れて美人なのにもったいない。何か言うとまた怒られて時間が掛かりそうなので、俺は辺りを見回しながら建物の並んでいる敷地に入り進んでいく。

 敷地内は配線や太い配管が通路脇に設置されており建物同士をつないでいる。魔導機兵の製造工場だろうか? ちょっとした町のようだな。整備された通路を少し歩くと「歓迎! 樹君!!」の文字と矢印の描いてある看板がいくつか置いてある。

 ふざけてるな……。癪に障るが、俺は素直にその看板の矢印に従って歩いて行くと、競技場の様な大きい建物に着いた。天井は開放されているようなので、飛んで空から建物に入ることにした。

 空からその建物の中をを眺めると、競技場というより闘技場か。天下一な武道の大会とかが出来そうにも見える。多数の客席は無人だ。

 客席に囲まれた中央部に設置されている舞台の上には、ピルロークが一人で立っている。単に俺と戦いたいとでもいうのか? 面倒な奴だな……。俺とセフィリアはその舞台の上に降り立った。

「やあ、早かったね」

 親し気に声を掛けてくるピルローク。俺のイライラも限界が近い。

「久奈と結月とアサカを返せ!」

「君の本当の強さを見せてくれたら、返してあげるよ。君の可愛い恋人達三人は、あの転移ゲートから行ける空間内でくつろいでもらっている」

 ピルロークが指さす方を見ると、客席の一角に転移ゲートがある。

「無事なんだろうな?」

「もちろん無事だ。彼女達は怪我一つしていないよ。でも君が助けだせなかったら、どうなるだろうねぇ」

 俺は具現化した刀に、魔刃のオーラを込めながら問う。

「俺があんたをぶちのめせば満足なのか?」

「正確にはぶちのめすのは私ではないんだがね」

 のらりくらりとしたピルロークの態度に苛立った俺は、刀の切っ先をピルロークの方に向けてプレッシャーを叩きつけた。

「今すぐ返せ! さもなければ斬る!!」

 俺の全力の威圧に、ピルロークは表情を引きつらせて半歩後ずさりした。

「クッ、この私ですら思わず怯んでしまうほどの凄まじい覇気だな。まあ、そう怒らないでくれ。君と戦いたいというゲストを一人招待しているんだよ」

 ピルロークがそう言い終わると転移ゲートが出現し、そこから俺のよく知っている人物が現れた。俺は息を呑んで、言葉を漏らす。

「何で……、ルイさんが……、ここに……?」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...