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謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

74.固有武器

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 さて、今日も三人の美少女の待つ箱庭に行くとするか。

 転移ゲートを抜けると、箱庭のログハウスの前で三人が何か話をしている。

「二人に私とイツキの愛の結晶を見せてあげる!」

「イツキ、イシュタルを出して!」

「うん? えーっと……」

 俺がもたもたしていると、アサカは痺れを切らして声が少しづつ大きくなる。

「早くイシュタル出してよー!」

 するとアサカの目の前に浅葱色の槍が現れた。

「あれ? 呼んだら出てきた」

 アイテムストレージを使わなくても直接召喚できるのか、便利だな。

「ふふん、どう? この美しい槍。イツキと私の魔力で作った槍イシュタルだよ」

 槍を握り高く掲げてドヤ顔のアサカに対して久奈はやれやれといった様子だ。

「アマテラス、おいで」

 久奈の呼びかけに応じて朱色の刀が現れた。久奈は朱色の刀を掴むとアサカに見せる。

「ホントだ、呼んだら出てきた。これが私と樹の魔力で作った刀アマテラスだよ。綺麗でしょ?」

 結月も静かに「ツキカゲ、来て」と呟く。すると瑠璃色の刀が現れた。結月はその刀を手にする。

「多分、私と作ったこのツキカゲが初めてだよね?」

 俺は「うん」と頷いた。二人が呼び出した刀を見たアサカは涙目になりプルプルと震えながら久奈と結月に聞く。

「じゃあ、二人ともイツキと魔力を混ぜてする超気持ちいい事も……?」

「もちろん」

「当然」

 久奈と結月は口々に答えた。

「そんな……。私以外とも作っていたなんて。イツキの浮気者ー!」

 久奈は首を振りながらアサカに言う。

「浮気者じゃないよ三股男だよ」

 結月も二人に便乗してわざとらしく悲しい顔を作る。

「樹は私達三人を弄んでいるのね」

 久奈と結月とアサカが俺を囲むように詰め寄り責めてくるが、大体事実なだけに言い返せないのが辛いところだ。何とも気まずいな、どうやって切り抜けるか……と考えていると、転移ゲートが出現しルイさんが現れた。ふぅ、助かった。

「凄まじい光景だな。魂力10万相当の魔力密度の物体が3つもか。今からレジーナを征服しに行くつもりなのか?」

「そんな事するわけないですよ。そもそもたった四人で星一つを征服するなんてできるわけ無いじゃないですか」

「できるわけ無いと一概に言い切れないよ、君達が本気になったら止められる者はいないだろうからな。私も含めて」

「はは……またそんな事言って。で、今日はどうしたんですか?」

「ああ、菓子を持ってきたから、茶でも飲みながら話そうか」

 俺達はログハウスに入って行った。



 いつもどうりリビングのソファーに座り、お菓子を食べながらお茶を飲みつつルイさんの話を聞く。

「せっかくの夏休みなんだし、バカンスでもどうかなと思ってね。私がシエラスの古代遺跡ツアーにつれて行ってあげようか?」

「なんか、マチュピチュ観光ツアーみたいな感じで言ってるけど、シエラスの古代遺跡ってヤバいガーディアンやらモンスターなんかが沢山いるんじゃ……?」

「フッ、樹は聡いな。以前、私と当時の戦力1位と2位で探索を試みたが、あまりに強力なモンスターが大量に巣食っていたために諦めたところがある。しかしここには支配者クラスの固有スキル持ちが四人もいる」

「あれ? 支配者クラス四人って久奈、結月、アサカとあと一人はルイさんですか?」

「いや、樹だよ。支配者クラスの固有スキルを使いこなせるのだから、実質支配者クラスの強さの固有スキルだ」

「でも、俺はみんなよりも弱いですよ」

「それは樹が固有スキルを完全に使いこなしていないからだろうな」

「そう……なのかな」

「とにかく、これだけの戦力があればその遺跡を隅々まで探索できるはず。モンスターも沢山いるから実戦経験にもなるし魂力も上げられるよ」

「私は行くよ。イツキは強制参加ね。ヒナとユズキは無理しなくていいよ」

 アサカ……なんで俺は強制参加なんだよ? 

「樹が行くなら私も行くに決まってるでしょ! 樹を放っておくとすぐに他の女の子と仲良くなってくるし」

 久奈も行く気満々の様子だ。流石にこれ以上他の女の子と仲良くはならないよ。

「樹が危険かもしれない所に行くなら当然私も付いて行く。どんな凶悪なモンスターが出ても私が必ず樹を守る」

 結月も行く気だね。結月に守ってもらえるなら心強い、ではなくて俺がしっかり守るからね。

「決まりだな、明日の朝出発しよう。遺跡までは転移ゲートで行けるからここに集合だ」

 明日ってまたかなり急だな。

「ルイさんって社長なのにずいぶん自由ですよね」

「私がいつも暇でブラブラしているように見えているのか? 心外だな。ただ会社の運営はほぼ全て副社長に任せているので多少は自分の好きなように行動が出来るのも事実だが」

 ……好きなように行動が出来るのは事実なんだ。

 要件が済むとルイさんは転移して帰って行った。



 さて俺達は月影、天照、イシュタルの威力でも試すか。訓練用フィールドに転移して順番に呼び出して握り魔力を込めて振るってみると、その方向の見渡す限りの広範囲が吹き飛んでしまうほどの威力だった。

 こんな物危なくて気軽に振り回せないな……。いざという時の切り札だな。

 それともう一つ検証してみた。  

 俺は月影、天照、イシュタルのいずれも呼べば目の前に現れるし、手にもって振るうことが出来た。しかし結月は月影しか呼び出せず、天照、イシュタルには触れようとしても見えない壁に阻まれて手に持つ事ができない。久奈もアサカも同様に自身の魔力で作った物しか扱えなかった。

 誰でも使えるわけじゃない……つまり固有武器か! 日本の創作物で固有武器と言えば大体最強の武器だよね。何とも心が躍るな。

「やはり樹は青系の色が良く似合うね。だから主に使うのは月影がいいよね」

 ……結月、そういう事を言うと大変なことになるよ、俺が。

「そんなことないでしょ? イツキは槍も上手なんだからこのイシュタルこそ似合うよね!」

 ほらね、やっぱり。

「二人とも分かってないなぁ。樹はなんだかんだ言ってもこの天照を使いたいに決まってるでしょ!」

 当然久奈も参戦する。こんなに可愛い女の子が三人も俺をめぐって言い合ってる。俺って幸せ者だよなぁ。微笑みを浮かべつつ遠くを見つめる。

「イツキ! 黙ってニヤニヤしてないで何とか言ってよ!」

 膨れっ面で迫ってくるアサカに「アサカ大好きだよ」と抱きしめると膨らませている頬がしぼんで大人しくなった。すると今度は久奈の頬が膨れる。

「あーまたそうやって抱きしめて誤魔化す!」

 俺は久奈を抱き寄せて「久奈、今日もすごく可愛いよ」と耳元で囁いた。すると「えへへ、そうかな?」と表情を緩ませた。結月の方をチラリと見るとなにか言いたげだな。

「樹、誤魔化されてあげるから私にもギュってして」俺は「もちろんだよ」と応え結月をギュっと抱きしめた。

「なんかさ……樹って私達の扱いに慣れてきてるよね?」

 久奈がボソッと呟く。

「それだけ深い仲になってるって事だと思うよ」

「「「……」」」

 久奈はジト目、結月は苦笑い、アサカはニコニコ笑顔で俺に抱き付いてきた。何とか切り抜けたかな?さて、お腹も空いてきたことだしログハウスに戻って昼食にしますか。
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