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謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

57.恋人(仮)

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 情報を引き出した後、ミリアはダロスに向かって言った。

「さて、次はこの施設を案内してもらいましょうか?」

 ダロスはいかにも不服そうな顔で不貞腐れている。俺が再び威圧しようとしたら、ミリアが制止した。

「その前に拘束させてもらうわね。アイテムストレージは使えないから、亜空間にしまってあるのを使うか」

 ミリアは手を前に突き出すと、肘から先が消えた。そして、タンスの中を探るように腕を動かした後、手を戻すと肘から先が現れ、テニスボール程の大きさの魔導器を持っていた。これがミリアの固有スキルか、不思議な能力だな……。

 ミリアは取り出した魔導器を使用すると、触手の様に動く帯が魔導器から伸びて、ダロスの両手に絡みつき後ろ手に拘束した。ダロスは施設の案内を渋々することになった。

 まずは施設の制御室に行った。大きなモニターが複数あり、施設の各所がモニターに映っている。ミリアがダロスに命じる。

「魔導機兵を転送するのを中止しなさい」

「……分からん」

 俺はダロスをじっと見る。どうやら嘘はついていないように感じる。ガルフも同様にダロスをじっと見つめている。

「本当に知らないみたいだぜ」

 ミリアは軽くため息をつく。

「仕方ない、自分でするか」

 ミリアは制御室にある端末を操作しだす。しばらくしてミリアは俺達に言う。

「魔導機兵の転送は止めたわ。後はここから脱出する為の転移ゲートを開通できるかどうかと、時間の加速を止めることができるか調べるね」

「頼む。その間に俺達は居住施設と食料庫を見てくる」

 ガルフがミリアにそう言った後、俺達はミリアを残して制御室を出た。ダロスに案内させ食料庫に行くと、大きな冷凍庫と冷蔵庫が完備してあり大量の食糧があった。隣接して厨房と食堂も設置してあった。

 施設のスタッフが泊まる為の部屋は、二人部屋が3部屋あり、それぞれにシャワーとトイレが設置されていた。

 一通りこの施設を見て回った俺達は制御室に戻る。ミリアはまだ端末を操作して何かの作業をしているようだ。

「ここから転移ゲートをレジーナに新しく開通させるのは無理みたいね。敵の本拠地に転移は出来そうだけどする?」

 ミリアの問いかけにガルフは「やめとく」と首を横に振った。

「まあ……そうだよね。とりあえず敵の本拠地から強いやつが転移してきたら面倒だから、転移してこれないようにしておいたよ」

「時間の流れの加速を止めるには、ロックを解除しないといけない。時間の流れがレジーナと同じになれば、社長の事だから1~2時間くらいでにここに転移ゲートを開通してきてくれるはず」

「スマホを使って解析しているけど、ロックを解除するには2週間はかかりそう」

「ダロスは捕虜にして社長に情報を引き出してもらおう」

 ミリアは再び魔導器を亜空間から取り出すとダロスに使用した。ダロスは全身を帯状のものに覆われて、亜空間に収納されてしまった。ミリアの説明では冬眠状態になっているとのことだ。

「お腹もすいているだろうから、食事にしましょうか」

 食料庫から適当に食料を取り出し食堂で食べながら、ガルフがこの施設の事をミリアに説明している。泊まる部屋の事を聞いたところでミリアが言う。

「部屋が3つか……。一つはガルフで一つは私ね。残りはアサカとイツキでいいね」

「俺が女の子と同室なのはまずいのでは?」

「問題ないでしょ。恋人なんだし」

「……。アサカはそれでいいの?」

 アサカは何とも思っていない、といった様子でサラリと答えた。

「別にいいけど?」

 アサカはミリアに近づき、コソコソと何かやり取りしている。

「ありがとう! ミリア」

「どうせ2週間はここで暮らさないといけないんだから、しっかりイツキを堕としなさい」

「うん、頑張るよ!」



 食事も終わり部屋に行こうとすると、ミリアが声を掛けてきた。

「アサカもイツキも服がボロボロだから適当に着替えを出してあげるね」

 亜空間から袋を二つ取り出しアサカと俺に手渡した。中にはいろんな服が入っているようだ。

 俺とアサカは「ありがとう」と言って、二人で部屋に向かった。

 部屋に二人で入り、二つあるベッドのうちの一つに腰掛けて黙って考え事をしていると、アサカが心配そうに俺に話しかけてきた。

「イツキ、私と同じ部屋じゃ嫌かな? ミリアに言って替えてもらう?」

「嫌じゃないよ。アサカは綺麗だし、男の俺としては嬉しい……はずなんだけど」

「私が綺麗!?」

 目を見開き驚いた表情をするが、目は輝いているように見える。

「うん、アサカは綺麗だと思うよ。ただ、俺はすごく悪いことをしているみたいで、なんか後ろめたくて……」

 アサカはそれを聞いて少し考えている。そして俺の隣に肩が触れる程近づいて座り、上目で話しだした。

「私、キスしたの初めてだったんだ。MP回復の為とはいえ、会ったばかりの人に2回もキスされちゃった。しかも2回目はえっちな感じのキスだったし」

「うっ、ごめん……」

「謝らないで。でも、責任取って私の恋人になってね」

「……」

「私にあんなキスしておいて、恋人にしてくれないの?」

「……俺、もしかしたら付き合っている人がいるかもしれない。思い出せないけど、もしそうだったらアサカと付き合うと浮気になってしまう」

「なら、思い出すまでの間の恋人 仮)でいいから」

「アサカ……」

「私はイツキの事が好き。イツキは私の事、好きなの? それとも嫌い?」

「それは好きだけど……」

「じゃあ、決まりだね。よろしくね!」

 上手く言いくるめられたような気がする。アサカは俺に抱き付き甘えた声で言う。

「早速だけどキスして。あの濃厚なキス」

 俺はどうするか迷った。しかし、胸を押し付けて俺の腕に抱き着き、キスを迫る美少女の誘惑を拒否できずに、そっと唇を重ねた。

 アサカの両腕が俺の背中に周り、きつく抱きしめてきたので俺はアサカを押し倒して抱きしめる。合わせている唇もより密着させ、お互いにを口の中を絡ませて撫で合った。

 唇が離れるとアサカは上気して目は潤んでおり、息を荒くして呟いた。

「気持ちよすぎてダメになりそう……」

 もちろん俺も気持ち良かったが、泥沼にはまって足が抜けなくなり、沈み込んでいくような不安な気持ちになってしまった。

 俺はアサカから離れて言う。

「シャワー浴びてくるよ」

「そんな……。会ったその日にセッ……」

 アサカがその言葉を言い終わる前に、遮る様にして俺は言う。

「ち、違うよ! シャワー浴びて頭を冷やしてくるね」

「あ……そうだよね。うん」

 俺はシャワーを浴び、ミリアに貰った服に着替えて寝ることにした。俺がベッドに横になると今度はアサカがシャワーを浴びに行った。

 アサカは出て来ると横になっている俺に声を掛ける。

「イツキ起きてる?」

「うん」

「私、イツキとその……するのが嫌なわけじゃないからね」

 なにを? と誤魔化すのも白々しいと思い俺は黙ってしまった。少し黙っているとアサカが「おやすみ」と言ってきたので俺も「おやすみ」と返事をした。

 何だろうこの感じ……。以前にもあったような気がする。心の奥がズキズキを痛み、何かを思い出せそうで思い出せないまま眠りについたのであった。



 眠っている樹を眺めるアサカ。考え事をしている。

(恋人がいるのはスマホを見せてもらってから分かってるよ。しかも二人も)

(イツキが自分のスマホをよく確認したら思い出してしまうかも……。ミリアに何とかしてもらおう)

 アサカはミリアにメッセージを送信する。しばらくして返事が来る。

「イツキのスマホをハッキングして恋人が表示されない様にしておいたよ」

(ありがとう、ミリア)

 ニンマリと笑うアサカ。一人小声で呟く。

「後は私が頑張ってイツキを堕とす……!」
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