箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~

ゆさま

文字の大きさ
上 下
45 / 119
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

46.部屋に来た       挿絵有

しおりを挟む
 翌日、俺は自室で久奈と結月が家に来るのを、そわそわしながら待っていた。約束の時間は8時だから、そろそろ来るはずだけど……。
 部屋の中をうろうろしていると、インターホンが鳴ったので、急いで玄関に行きドアを開けた。

 久奈と結月がそこには立っていた。二人とも今日も抜群に可愛い。



「おはよー樹。私が来るの、待ち遠しかったでしょ?」

 久奈は笑顔で問うので俺は、コクコクと頷く。結月も「おはよ。私も早く樹に会いたかった」と微笑んでいる。

 女子の声がしたので何事かと思ったのか、母親が玄関まで出てくる。二人の女子の姿を確認すると、母親はニタァと不気味に笑う。

「友達が来るって聞いてたけど、こんなに素敵なお嬢さん二人だったなんて」

「初めまして鳴海久奈です!」
「初めまして桜花結月です!」

 二人はピシッと姿勢を正して母親に挨拶する。俺はなんとなく恥ずかしい。

「二人とも上がって。俺の部屋に行こ?」
「「おじゃましまーす」」
 
 二人は元気にそう言うと家に上がり、俺に続いて階段をトントンと上がって、俺の部屋に入った。

 部屋に女の子が来たと軽く感激していると、久奈は「ここが樹の部屋かー」と部屋を見回して、結月は「樹の匂いがする」と呟いた。

 俺はちょっと焦りながら二人に聞く。

「えっ、なんか臭い?」

 結月は首を横に振って「違うよ。なんかドキドキする」と、俺に擦り寄って腕にくっつく。久奈も俺の腕に抱きついてきた。

 8月3日夏休みの真っ只中。まだ午前中だが、外の気温は既に30度を超える暑さだろう。エアコンを効かせたこの部屋にいても、二人の体温を感じて俺の体温も上がってしまう。

 ドアをノックする音が聞こえガチャリとドアが開く。二人はパッと俺から離れて、何事も無かったような顔をしている。

 母親がトレイにお茶の入ったグラスを3個乗せて部屋に入ってくる。またもニヤニヤしながら二人に声を掛ける。

「私は仕事に行ってくるから、樹の事はお願いね」

 二人が「「はい」」と元気よく返事をすると、母親はニヤニヤしたまま仕事に出かけて行った。

 俺は折り畳み式の小さなテーブルを出してグラスの乗ったトレイをその上に置く。そしてベッドに座った。すると久奈と結月が、俺の横に来てくっついて言う。

「箱庭の生活で、樹とベタベタくっつくのが癖になってたから、離れるのが辛かったよ」
「ホントにそうだよね。寝起きに樹が抱きしめてくれないと、元気出ないよ」

 二人に挟まれて抱きしめられ、俺はサンドイッチの具材状態だ。二人の豊かな膨らみを押し付けられていると、俺も膨らんでしまう。このままではまずいので「15時まで何する?」と二人に聞いた。

「そうだなー、えっちな本とか探そうか」

 久奈が楽しそうな声色で答える。……なんでそうなる? そっと久奈の顔色を窺うと小悪魔的な笑顔を浮かべており、目が合った俺はギクリとしてしまった。

 しかし、こんな事もあろうかとすでに隠してあるのだ。昨日の夜、アレな本とDVDを隠しておいたクローゼットをチラリと見た。久奈と結月は視線が泳いでいる俺の目をじっと見る。

「えーっと、あの辺かな」

 久奈がクローゼットを指差し、結月がクローゼットを開け、奥に隠しておいた箱を見つけ取り出す。10秒で見つかってしまった、なぜだ!?

 俺がうろたえるのも知らん顔で、二人は箱を開ける。

 久奈は部屋にあるノートパソコンの電源を入れDVDをセットする。AVが無情にも再生されてしまった。それを見ながら久奈は声を上げる。

「凄いねこれ、口で……。樹もこういう事して欲しいの? いやらしー」

 結月は箱に入っていた本をめくりながら「私は樹がして欲しいなら、何でもしてあげるけどね」と平静を保ったまま言う。それを聞いた久奈も「私だって、樹のして欲しいことなら何でもしたい!」と力強く言った。

 えっ、何でもしてくれるの? と一瞬テンションが上がるが、息を吐いて自分を落ち着かせてから、二人の肩にそっと手を置く。
 
「二人ともありがとう。でも俺の性癖が暴露されると恥ずかしいから、本とDVDは隠しておいて……」

「「えーー」」

 二人は不満げな声を上げた。俺は苦笑いしながら拝むように両手を合わせてお願いすると、渋々本とDVDを箱に入れ、クローゼットの中に片付けてくれた。

「部屋にいるとムラムラしちゃうから、箱庭で体を動かしてこようか?」

 久奈と結月は目を輝かせて、俺に跳びついてきた。

「「ログハウスでえっちするの?」」

 二人は声をそろえて俺に聞く。どうやら、えっちな気分になってしまったらしい。

「15時になって足腰が立たないと困るから今日はやめておこう」

「「ぶー」」

 二人は膨れっ面で抗議してくるので、一人ずつギュっと抱きしめてキスをした。不満はあるだろうけど、ひとまずは「しょうがないなー」と言って納得してくれた。

 このまま何もしないでいたら、また二人がえっちな気分になっても困るので、宿題を消化することにした。久奈と結月はアイテムストレージから課題を取り出して三人で取り掛かった。



 * * *


 ゆるく頑張っていると、12時を回ったのでそろそろ昼食にするか。

「二人とも、お昼は素麺でもいい? 俺、茹でてくるよ」

「素麺食べたい!」
「樹が作ってくれるの? 食べる!」

 久奈と結月の返事を聞いて、俺は一階に下りて台所に行き準備を始めた。流し台の下から大きな鍋を取り出して、水を入れてコンロに火をかけて沸騰するまで待つ。

 自宅に久奈と結月が来て、昼食の準備をするとか、少し前までは想像もできなかったよなぁ。
 ぼんやりそんなことを考えていると、鍋の水が沸いてきたので、素麺を湯に入れて時計を見る。
 一分半ほどでざるにあげ、流水で粗熱を取った後、氷水でしめる。めんつゆと薬味も一緒にテーブルの上に準備して完成だ。

 俺は階段の下から二階にいる二人に向かって「できたよー」と声を掛ける。

 階段を下りてきた結月はテーブルの上を見ると、嬉しそうに「わー、樹の手料理だ♡」と声を上げる。

 これを手料理と言われると、ちょっと恥ずかしいので「素麺を茹でただけだけよ」と返した。

 すると、久奈は「茹でるのも料理のうちだよ」と力強く俺に説いた。

「「「いただきまーす」」」

 三人揃って手をあわせた後、素麺をすする。美少女二人がご機嫌で素麺を食べる様子を見て、俺は何とも言えない喜びを感じたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】 (大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話) 雷に打たれた俺は異世界に転移した。 目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。 ──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ? ──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。 細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。 俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...