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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?
31.疾風さん
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俺の固有スキルの解説と心の内の暴露が一通り終わったところで、ルイさんは話を変える。
「せっかくだから、樹君と結月さんも空を飛べるようにしておいて。まずは、訓練場に行って適当に風魔法を習得してきて、適当に使っていれば風魔法のコツが分かってくるだろう」
「訓練場で魔法の形や消費MPや発動の言葉を設定しているのは、魂力が弱く魔法を制御できないのをシステムでアシストする為だ。今の君達の魂力ならイメージだけで制御できるはず」
「もちろん、久奈さんのように固有スキルで大幅な強化がされるわけではない。それでも空を自在に飛ぶくらいなら練習すれば出来るようになるはずだ」
「飛べるようになったらご褒美をあげるから、頑張って」
そういうわけで、俺達は訓練所に行くことにした。訓練場とは名ばかりで、中の様子は銀行のATMコーナーとほとんど変わらない。俺と結月は訓練場の端末へ風魔法を習得しに行く。久奈はもう覚えているので、訓練場の中に設置してある椅子に座って一人で待っていた。
俺が風魔法を習得して久奈のところに行くと、久奈がちょっとイケメンな男に絡まれていた。
「一緒にフィールドに行こうよ」
どうやらナンパされているようだ。俺が近づくと久奈はその男に「ごめんなさい」と頭を下げて俺の方に駆け寄ってきた。男の矛先が俺に向かう。
「君はその子の友人なのか?」
「……」
俺が黙っていると、久奈は俺の腕を抱いて男に答える。
「私の恋人だよ」
「そんな弱そうな男が、君みたいな可愛い子の恋人?」
男は俺を見下して軽く鼻で笑い、得意げに語りだした。
「俺は疾風のカズヤ。超強力な固有スキルが目覚めて、さっき東のフィールドの2番目の中ボスを倒して来たんだ! 俺と一緒にいこうよ!」
二つ名をドヤ顔で名乗ってしまう奴など、絶対に面倒臭いに決まっているので早々に帰ろうとする。
「そうなんですか。凄いですね。知りませんでした。では失礼します」
結月も風魔法を習得して俺達と合流する。久奈が俺とくっついているのを見て、俺の空いている方の腕に抱きつく。すると男は、目を見開いて驚いている。
「なっ、まさかこの美人も?」
「……」
俺は無視してさっさと歩きだし訓練場から出る。当然その男もついてきて、俺を呼び止めた。
「まて! そんな可愛い子二人と二股しているとは許せん! 俺と勝負しろ!」
ハァ……やっぱりこうなった。即座に俺は「ヤダ」と答える。
この男がどれほど強力な固有スキルを持っているかは知らないが、全く負ける気がしない。でも、さっさと帰って飛ぶ練習がしたいんだよ。と思っていたら結月が耳打ちする。
「一捻りした方が早いかもよ? しつこそうだし」
しょうがないので勝負を受けることにする。俺は、ふぅと息を漏らしながら疾風さんに言う。
「分かった、相手するよ。ここでするの?」
「フッ、俺が本気で戦うと辺りに被害が出る。東のフィールドの2番目の広場で勝負だ」
「ハイハイ」
渋々、疾風さんに付いていく。そういえば東のフィールドって行ったことないな。どんなところだろ? 東の転移ゲートの広場には3個の転移ゲートが浮かんでいる。男に付いて転移ゲートに入る。
転移ゲートを抜けるとそこは屋外ではなくゲームでよく見る城の大広間のようなところだった。高い天井にシャンデリア、大理石の柱に、細かい装飾のある豪華な壁面。
岩だらけの北のフィールドよりこっちの方が面白そうだな。でもゲームを進行するなって言われてるからこっちを攻略するわけにもいかないか。
疾風さんから決闘の申し込みを受ける。向かい合って礼をして構える。
疾風さんは剣を構えて、俺に自分の固有スキルの解説を始めた。ハァ、興味ないな……。
「俺の固有スキルはスピードが大きく上昇する。同時に反応速度も上がる!」
言い終わると、勢いよく切り込んできた。疾風さんが振り下ろした剣を、俺は刀で受けいなす。疾風さんは必死の形相で剣を振り回し、時折剣スキルも使用し攻撃をしてくる。
確かに速いが、結月よりずっと遅い。何よりこいつは剣を適当に振っているだけで剣術じゃない。
時々使ってくる剣スキルによる剣技は基本に忠実で正確だ。だが読みやすく対処しやすいと結月が以前言っていたが、その通りだと思った。
そもそも、魂力の大きさが違いすぎて勝負にならない事は最初から分かっていたけどね。
疾風さんが剣を思い切り振り上げたときに、がら空きになったお腹にそっと刀を当てる。そっと当てたはずなのに、疾風さんは派手に吹っ飛んで行ってしまった。
「WINNER 柳津樹!」
かなり手加減したのに一発で終了か。今の俺の魂力は1万以上、疾風さんは固有スキルを獲得したばかりの様子だったから千を超えたあたりだと思う。魂力の差による強さの差は絶大だな。
これ以上面倒ごとに巻き込まれないように、そそくさと逃げるように立ち去る。
帰り道、結月が嬉しそうに俺に言う。
「私が教えた事、ちゃんと身についているみたいだね」
「あいつが弱すぎたんだよ」
「それでも樹はちゃんと強くなってる。見たらわかるよ。……ご褒美だよ」
抱き着いてきて結月の唇が俺の唇にそっと触れる。
「じゃあ、私も樹にご褒美」
久奈も抱き着いてきて俺の唇に自分の唇を触れさせる。
面倒ごとに巻き込まれてうんざりだと思っていたが、美少女二人からのご褒美で癒された。
「せっかくだから、樹君と結月さんも空を飛べるようにしておいて。まずは、訓練場に行って適当に風魔法を習得してきて、適当に使っていれば風魔法のコツが分かってくるだろう」
「訓練場で魔法の形や消費MPや発動の言葉を設定しているのは、魂力が弱く魔法を制御できないのをシステムでアシストする為だ。今の君達の魂力ならイメージだけで制御できるはず」
「もちろん、久奈さんのように固有スキルで大幅な強化がされるわけではない。それでも空を自在に飛ぶくらいなら練習すれば出来るようになるはずだ」
「飛べるようになったらご褒美をあげるから、頑張って」
そういうわけで、俺達は訓練所に行くことにした。訓練場とは名ばかりで、中の様子は銀行のATMコーナーとほとんど変わらない。俺と結月は訓練場の端末へ風魔法を習得しに行く。久奈はもう覚えているので、訓練場の中に設置してある椅子に座って一人で待っていた。
俺が風魔法を習得して久奈のところに行くと、久奈がちょっとイケメンな男に絡まれていた。
「一緒にフィールドに行こうよ」
どうやらナンパされているようだ。俺が近づくと久奈はその男に「ごめんなさい」と頭を下げて俺の方に駆け寄ってきた。男の矛先が俺に向かう。
「君はその子の友人なのか?」
「……」
俺が黙っていると、久奈は俺の腕を抱いて男に答える。
「私の恋人だよ」
「そんな弱そうな男が、君みたいな可愛い子の恋人?」
男は俺を見下して軽く鼻で笑い、得意げに語りだした。
「俺は疾風のカズヤ。超強力な固有スキルが目覚めて、さっき東のフィールドの2番目の中ボスを倒して来たんだ! 俺と一緒にいこうよ!」
二つ名をドヤ顔で名乗ってしまう奴など、絶対に面倒臭いに決まっているので早々に帰ろうとする。
「そうなんですか。凄いですね。知りませんでした。では失礼します」
結月も風魔法を習得して俺達と合流する。久奈が俺とくっついているのを見て、俺の空いている方の腕に抱きつく。すると男は、目を見開いて驚いている。
「なっ、まさかこの美人も?」
「……」
俺は無視してさっさと歩きだし訓練場から出る。当然その男もついてきて、俺を呼び止めた。
「まて! そんな可愛い子二人と二股しているとは許せん! 俺と勝負しろ!」
ハァ……やっぱりこうなった。即座に俺は「ヤダ」と答える。
この男がどれほど強力な固有スキルを持っているかは知らないが、全く負ける気がしない。でも、さっさと帰って飛ぶ練習がしたいんだよ。と思っていたら結月が耳打ちする。
「一捻りした方が早いかもよ? しつこそうだし」
しょうがないので勝負を受けることにする。俺は、ふぅと息を漏らしながら疾風さんに言う。
「分かった、相手するよ。ここでするの?」
「フッ、俺が本気で戦うと辺りに被害が出る。東のフィールドの2番目の広場で勝負だ」
「ハイハイ」
渋々、疾風さんに付いていく。そういえば東のフィールドって行ったことないな。どんなところだろ? 東の転移ゲートの広場には3個の転移ゲートが浮かんでいる。男に付いて転移ゲートに入る。
転移ゲートを抜けるとそこは屋外ではなくゲームでよく見る城の大広間のようなところだった。高い天井にシャンデリア、大理石の柱に、細かい装飾のある豪華な壁面。
岩だらけの北のフィールドよりこっちの方が面白そうだな。でもゲームを進行するなって言われてるからこっちを攻略するわけにもいかないか。
疾風さんから決闘の申し込みを受ける。向かい合って礼をして構える。
疾風さんは剣を構えて、俺に自分の固有スキルの解説を始めた。ハァ、興味ないな……。
「俺の固有スキルはスピードが大きく上昇する。同時に反応速度も上がる!」
言い終わると、勢いよく切り込んできた。疾風さんが振り下ろした剣を、俺は刀で受けいなす。疾風さんは必死の形相で剣を振り回し、時折剣スキルも使用し攻撃をしてくる。
確かに速いが、結月よりずっと遅い。何よりこいつは剣を適当に振っているだけで剣術じゃない。
時々使ってくる剣スキルによる剣技は基本に忠実で正確だ。だが読みやすく対処しやすいと結月が以前言っていたが、その通りだと思った。
そもそも、魂力の大きさが違いすぎて勝負にならない事は最初から分かっていたけどね。
疾風さんが剣を思い切り振り上げたときに、がら空きになったお腹にそっと刀を当てる。そっと当てたはずなのに、疾風さんは派手に吹っ飛んで行ってしまった。
「WINNER 柳津樹!」
かなり手加減したのに一発で終了か。今の俺の魂力は1万以上、疾風さんは固有スキルを獲得したばかりの様子だったから千を超えたあたりだと思う。魂力の差による強さの差は絶大だな。
これ以上面倒ごとに巻き込まれないように、そそくさと逃げるように立ち去る。
帰り道、結月が嬉しそうに俺に言う。
「私が教えた事、ちゃんと身についているみたいだね」
「あいつが弱すぎたんだよ」
「それでも樹はちゃんと強くなってる。見たらわかるよ。……ご褒美だよ」
抱き着いてきて結月の唇が俺の唇にそっと触れる。
「じゃあ、私も樹にご褒美」
久奈も抱き着いてきて俺の唇に自分の唇を触れさせる。
面倒ごとに巻き込まれてうんざりだと思っていたが、美少女二人からのご褒美で癒された。
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