上 下
22 / 119
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

22.久奈vs結月

しおりを挟む
 三人で遅めの昼食を食べている。俺は気まずいので大人しくしていた。久奈が結月に話しかける。

「昼から私もPvPしてみたい。結月、勝負しよ?」
 
 俺と結月がこっそりえっちしようとしてた事をやっぱり怒っているのかな? とドキッとする。結月は恐る恐る久奈に尋ねる。

「久奈……、怒ってるの?」

「怒ってないよー。PvP楽しそうだから、やってみたいと思って」

「そっか、じゃあやってみよ」

 久奈は笑顔を見せたので、結月も笑顔で応えた。久奈は怒っていないようなので、俺も話に混ざる。

「久奈と結月が暴れると地形が変わるから、フィールドにいこう」

 久奈は半眼で俺に視線を送り軽く抗議する。

「樹は私達の事をなんだと思ってるの?」

 俺は前々から言おうと準備しておいたセリフを言ってみた。

「美人で可愛い、俺の大事な人」

 久奈は呆れた様子で言う。

「樹も言うようになったよね」

 結月は俺を窘めるように言う。

「どこかのモテ男みたいなこと言わないの」

「……」

 くっ、頬を赤らめてデレてくれると思ったのに不発だった……。




 というわけで、北の山岳地帯フィールドの2番目の広間。この近辺のモンスターと戦える人は俺たち以外にはまだいないらしく人が全くいない。ここなら大破壊を起こしても問題ないはず。

 久奈と結月が向かい合い、礼をする。

「じゃいくよー」

 久奈は予備動作もなく炎の矢を高速で放つ。しかし、結月は難なく避ける。あれ俺なら避けられないな。

「どんどんいくよー」

 色とりどりの魔法が四方八方から結月に襲い掛かる。それらをひらりひらりと躱し、結月は久奈に鋭く斬りかかるが、久奈は軽々と避けたように見えた。

 結月は不思議に思ったのか「刀の軌道が滑った?」と呟いた。

 久奈は胸を張って、得意げに語る。

「風の魔法を体の周りに覆ってガードしているんだよ。魔刃を使わないと多分切れないよ」

 結月の雰囲気が変わる。あ、本気出したな。「甘く見ないでね」と言い終わると同時に結月が消え、次の瞬間ギィィィンと衝撃音が響く。

 俺が気付いた時には、久奈の正面には氷の壁が出来ており、氷の壁に結月の刀がめり込んでいた。

「驚いた。風の壁を切っちゃうなんて。とっさに氷の壁を出して正解だったね」

 久奈はふわりと後ろに跳んで結月から離れる。氷の壁がピキピキと音を立て、結月の刀を包んでいく。

「驚いたのはこっちだよ。まさか本気でも切れないなんて。しかも氷に飲まれて刀が動かせない。しょうがない……魔刃を使うよ」

 結月の刀に青色のオーラが宿る。氷を粉々に砕き仕切り直しだ。その様子を見た久奈が笑みを浮かべながら言う。

「じゃあ、私も本気で行くからね!」

 今まで本気じゃなかったのかよ……。え? 久奈が宙に浮いてる!

「へへっ、風の魔法の応用で飛べるんだよ」

「なるほど、魔刃を使わなければ、刃は届かない。それでは絶対に勝てないね」

 久奈は空から氷の矢を雨のように降らせる。氷の矢が着弾した場所はたちどころに凍り付く。結月は青いオーラを纏った刀で氷の矢を叩き落しつつ、久奈に斬撃を飛ばす。あまりに高速な戦いに、ただ見ているだけの俺も必死だ。

 久奈は縦横無尽に飛び回り、結月の放つ魔刃の斬撃を危なげなく躱しながら、氷の矢を連射し続ける。次々と地面に着弾して、氷が高さを増していき次第に柱の様になっていく。
 
 結月の周りが氷の柱だらけになったところで、今度は炎の矢を連射する。炎の矢が氷の柱を砕き無数の氷塊となって結月に落下する。
 
 高速で絶え間なく放たれる炎の矢に対処しつつ、崩れ落ちてくる氷塊にも対処しなければいけない。

 結月は渋い顔で「厄介な……」と呟き、刀を強く握り締めた。刀に宿る青いオーラが増大し、渾身の一振りで周りの氷柱と氷塊をすべて吹き飛ばした。

 しかし、一息つく間もなく巨大な火球が地面をえぐりながら結月に襲い掛かる。結月が大技を使うのを見越して、久奈は強力な魔法を放っていた。

「結月、私の全MPをぶつけるからね」

 久奈の全てのMPを使って放った巨大な火球。これは流石に結月でも避けきれないかな……と俺は思った。だが結月はその巨大な火球すら、青いオーラを伴う斬撃で両断してしまった。

「今のは、ギリギリだった……MPも無くなった」

 結月は苦悶の表情を浮かべるものの一気に久奈に近づき一閃、久奈は吹っ飛んだ。同時に結月も何かの衝撃を受けて倒れた。
 
 久奈は試合序盤の受け攻めで、アイテムストレージからミスリルロッドを出し上空に魔法で待機させておいた。結月が勝負を決めに来たところを狙って叩きつけていのた。

 二人の試合が終了して、音声アシストが聞こえる。

「DRAW」

 俺は倒れている二人に近づき「大丈夫?」と声を掛け、手を差し出して起こした。二人のステータスを確認すると、MPは0だけどHPは全回復してるな。よかった。それにしてもどこかの戦闘民族みたいな強さだな。

「やっぱり結月は強いね!」

「久奈もすごく強かったよ」

 久奈と結月はお互いを讃え合う。二人の美少女の本気バトルを見て、俺は自分が一番弱いことを再確認し心で泣いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

処理中です...